具体的な取り組み内容
2024年5月、飯塚JCは、「こどもはこのまちの未来だ!宣言」キックオフイベントを開催しました。このイベントには、こども家庭庁をはじめとする多くの関係者が参加し、こども中心の社会づくりを目指した方向性が共有されました。宣言企業・団体等は約50社(2025.3現在)で、それぞれの企業・団体で宣言した内容の実現に向けて取り組みを進めています。
たとえば「ゆめタウン飯塚」では、全国のゆめタウン店舗で初となる子育て世代を支援する「ゆとりレーン」を設置しています。また、タクシー会社と飯塚市との連携による妊婦向け「陣痛タクシー」の取り組みも進行中で利用者も増えています。この他、地元のラーメン屋がこども用の箸を導入するなど、活動は地域全体に広がり、連携体制が強化されています。
活動背景
活動の背景には、「こどもたちの意見が地域の改善につながるという思いがある」と専務理事の小林さんは語ります。自身も小学生2人の母として、子育ての当事者でもあり、子育て世代への配慮や理解が不足しているなど、少子化や地域活性化への課題を感じていました。そんな中、飯塚JCでは、この宣言活動のほか、こどもたちの意見を地域に反映させるための「ビジョナリーシティこども会議」を実施することになります。
例えば、こども会議で寄せられた「バス停が古く、お年寄りが困っている」という声や、「公園でボール遊びができないので、もっと自由に遊べる場所が欲しい」など、こどもたちから寄せられた意見は大人が気付かないことばかりです。その声や提案を企業や自治体に届け、力を合わせ具体的な行動に反映しています。
参加者の声
(小林奈々専務理事)
「こどもたちの声は本当に貴重です。特に、公共施設や交通機関に対する改善要望は、地域全体で取り組むべき課題。例えば、バス会社や行政とも連携して、こうした意見を具体的に反映させる仕組みを作ろうとしています。地域全体が一体となって、こどもたちのための社会を作るという理念や、小さな行動が大きな変化を生むと実感しています」
(栗原一喜常務理事)
「青年会議所の使命は、地域活性化とリーダー育成です。このプロジェクトを通じ、多くのリーダーが育ち、地域に貢献している姿を見るのは嬉しいことです」
宣言企業からは、「少子化の時代、このような取り組みが大事。継続を目指していきたい」という声が上がっています。
(※役職は2024年時点の役職です)
これからのこと
飯塚JCではこの取り組みがモデルケースとして他地域でも展開されていくことを期待しています。今後も飯塚JCが掲げた「TRT・4・VISION(5カ年ビジョン)」の実現に向け、多様なパートナーシップを強化し、様々な活動を通じて地域社会の発展に寄与していきたいと考えています。
「こどもまんなか社会」に向けて
飯塚JCは、「こどもまんなか社会」の実現に向けて、「こどもを育てる仕組み」「地域間の連携」「こどもたちの意見を尊重する文化」を柱に、地域で連携し、こどもを安心して育てられる環境づくりを進めていく方向です。
(一社)飯塚青年会議所ホームページ
http://www.iizuka-jc.com/
(取材日:2024年9月13日/更新日:2025年3月19日)
具体的な活動内容
心をつなぐランドセルの架け橋
イベントでは、こどもたちが展示された中から自分だけの「運命のランドセル」を選ぶ特別な時間や、通学路体験、工作・ゲーム体験などの企画で、こどもたちの思い出づくりを支援します。さらに、学生と地元企業が心を込めて作ったオリジナル化粧箱に、こどもたち自身の手で大切にランドセルを収めて持ち帰ります。会場では同時に新たなランドセルの寄付も受け付けており、昨年は約650個もの温かい善意が集まるなど、循環型の支援の輪が広がっています。
活動の背景
「こどもの未来に希望を持たせることができないだろうか…」7年前、一人の母親から寄せられた、こどもの未来への切実な想いに、NPO法人次世代のチカラFUKUOKAの新村優理事長が深く心を動かされました。こどもたちの未来への可能性を広げ、すべてのこどもたちに平等な学びの機会を提供したいという思いから、活動は始まりました。
その後、九州産業大学造形短期大学部の森下慎也先生との出会いにより、学生のアイディアを盛り込むことで、活動は大きく広がりました。
この取り組みは単なる物の再利用ではなく、こどもたちの可能性を育む、温かな社会のつながりを創造する取り組みに発展しています。
参加者の声
(こどもたちとその家族)
「こんなに綺麗なランドセルをいただけて、本当に感謝しています。こどもが喜ぶ姿を見て、私まで嬉しくなりました」
(寄付者の声)
「大切に使ったランドセルが、新しい持ち主と出会えることが何より嬉しいです」
(プロジェクトリーダー:九州産業大学造形短期大学部 研究生 石田賀琳さん)
「参加者の方々からの『ありがとう』の言葉が、何よりの励みになりました。去年叶えられなかった北九州での活動も実現でき、感慨深いです」
(協力企業)
「地域のこどもたちの笑顔のために、私たちができることを実行する。それが企業としての誇りです」
これからのこと
現在、活動は、福岡市から飛び出し、久留米市、北九州市へと着実に広がっています。このプロジェクトは、地域の企業や団体との連携を深めながら、単なるランドセルの受け渡しを超えて、地域全体でこどもたちの未来を支える大きな取り組みへと成長しています。
「こどもまんなか社会」に向けて
「こどもたちの声に真摯に耳を傾け、一人の人間として尊重し合える社会。それが私たちの目指す『こどもまんなか社会』です。このイベントを通じて、こどもたちが安心して夢を育める環境づくりを、地域全体で進めていきたい」と森下先生は、語ってくれました。
九州産業大学造形短期大学部ホームページ
https://www.zokei.kyusan-u.ac.jp/
NPO法人次世代のチカラFUKUOKAホームページ
http://jisedainochikara.jp/
(取材日:2025年1月18日)
取り組みの概要
2024年度も、夏休みにこどもたちが親の職場を訪問し仕事を参観しました。その成果発表の場として、作文・写真の公募が行われ、作文部門には788通の応募がありました。第一次審査では、教員を目指す中村学園大学教育学部の学生が作文を読み、分析して、24組の親子を最終審査の発表者に選びました。最終審査では、中村学園大学の学生が司会進行を担当。緊張の中、各学年3名ずつがステージに登壇し、ひとり3分のプレゼンテーションタイムの中で、仕事参観の感想や気づき、自分の将来について発表しました。最終審査で、グランプリ、準グランプリ、第3位が選ばれたほか、審査員特別賞など様々な賞が作文部門24組と写真部門2組の合計26組の親子に贈呈されました。
活動の背景
現代では、働く意思がなく勤労していない若者や若年層の離職が増加しており、その背景には、学校教育や家庭教育だけでは働く意味や大切さを十分に学ぶことができていない状況があるのではないかとの課題認識から、このプロジェクトでは、家庭の基盤を支える親の仕事を間近で見ることを通して、社会や家庭の役割を理解するきっかけを与えることを目指しています。
さらに、参加企業・団体にとっても、こどもたちの訪問を受け入れることで、社内環境の改善や教育CSRの推進に繋がる意義深い取り組みとなっています。
参加者の声
(主催者)
「回を重ねるごとに、仕事の体験や仕事の価値観について語った優秀な作品が寄せられていることに感動するとともに、選考に苦慮するという嬉しい喜びを感じています」
(参加したこどもたち)
「家にいるときのお父さん・お母さんの姿と違う」
「カッコイイ!!」
「こんなに人の役に立つことをしている」
「職場でリーダーシップを発揮しているところに感動した」
「感謝の気持ちが芽生えた。親にありがとうの言葉を伝えたい」
など、こどもならではの気づきや視点が、親子の絆を深めています。
(参加企業・団体)
「こどもが1日来ることで、こども用の名刺を準備し、社長・会長室で名刺交換したり、会議に出席させたり、現場へ連れて行ったりと、さまざまな工夫をしているところが多く、社内の雰囲気も和やかになり、整理整頓も進み、教育CSRとしてとらえています」という声が多く上がっています。
これからのこと
「15年間実施を続けていますが、もっと多くの参加企業や団体が増えてほしいです。佐賀県まで実施企業が増えていますが、九州中、ひいては日本中に、この親子良し、企業・団体良し、社会良しの三方良しのプロジェクトが広がってほしいという希望を持っています」と、みらいプロジェクト実行委員会の会長である学校法人中村学園理事長学園長の中村紘右さんは語ってくれました。
みらいプロジェクト「こどもお仕事参観デー」ホームページ
https://miraiproject.fukuoka.jp/
(取材日:2024年11月23日)
具体的な活動内容
このワークショップ(トレーニング)は、福岡市にある九州産業大学造形短期大学部の教室で開催されました。こどもたちが教室に足を踏み入れると、巨大なドームが目に飛び込んできます。その迫力に目を輝かせながら、体験への期待で胸を躍らせていました。
活動を主催するのは、九州造形短期大学部の森下慎也先生と防災士としても活躍する福津市の古川隆邦さん、そして7名の学生たちです。森下先生は「防災訓練を楽しみながら実施することで避難所での生活に備えることができ、実際に避難した場合の心のゆとりに繋がる」と考え、「遊び」と「防災」を融合させ、こどもたちが自ら解決策を見つけられる力を育てたいとスタートしました。
防災とはなに?防災って楽しく取り組めるんだ!
学生による人形劇で「防災ってなに?」そんな問いかけから始まりました。災害時の“困った”をテーマに「なんでだろう?」「どうしたらいいかな?」という疑問を引き出し、古川さんのスライドを使ったクイズを交えた防災の話で理解を深めていきます。
その後、こどもたちは実際にダンボールを使ってモンスター制作に挑戦。「カベモンスター」「コップモンスター」「ツクエイスモンスター」など、問題を解決するモンスターを作ります。ラストは、巨大「プラネタリウムモンスター」の中で、星を輝かせる体験!
初めて出会ったこどもたち同士で考え力を合わせて作った、災害に立ち向かう「ヒーローモンスター」たち。アイディアと創造力が光る時間となりました。
参加者の声
(森下先生/主催者)
「ダンボールを使ったものづくりを通じて、楽しみながら防災を学ぶ姿を見ると、改めてこの活動の重要性を実感しました」
(参加した小学生)
「学校では自由に作ることがあまりないので、とても楽しかった!自分で作った椅子に座れた時、すごくうれしかったです」
(保護者)
「防災を学ぶだけでなく、創造性を引き出す工作の時間があり、こどもたちがいきいきと活動できて良かったです」
(大学生スタッフ)
「短い準備期間で不安もありましたが、こどもたちが笑顔で完成した作品を見せてくれた時、頑張ってよかったと思いました」
これからのこと
本プロジェクトは、次年度以降も継続実施を予定しています。より多くの地域や家庭に「楽しく学べる防災」を届けるため、活動の規模拡大も計画中。防災とアートを掛け合わせた新しい形の取り組みとして、さらなる可能性が期待されます。
「こどもまんなか社会」に向けて
「災害時、避難所での時間をどう過ごすか、手元にある材料でどのように工夫できるのかを考えることも重要です。この取り組みでは、こどもたちが自由にものづくりを楽しみながら防災を学び、困難な状況でも前向きに乗り越えられるスキルを身に付けることを目指しました」と語る森下先生。また、こどもたちが「防災」を「自分ごと」として認識する力と、工作でモノを作る時の「これがいいかな」「あれがいいかな」という思考と創造性を育む機会を大切にしたいと語ってくれました。
九州産業大学造形短期大学部ホームページ
https://www.zokei.kyusan-u.ac.jp/
(取材日:2024年11月23日)
具体的な活動内容
3回目となる今年のテーマは「こども」。生徒たちは実行委員会を中心に、近畿大学の学生と一緒にワークショップを重ね、トイレ設置にもチャレンジしましたが、自分たちの力ではどうしようもできない現実を目の当たりにして実現を断念。『それだったら、こども達が楽しいことをやろう!』と方向転換し、スタンプラリーや工作の企画、そしてステージが見えやすいように会場に板を置くアイディアを実践。当日は、飯塚市の本町・東町商店街を舞台に大々的に開催され、通路が人の頭で見えなくなるほど、数千人の来場者があり、こどもから大人まで賑やかな声がやまない一日になりました。
活動の背景
商店街はかつて宿場町として栄えた歴史的な背景もあり、地域との深いつながりを昔から大切にしてきた文化がありました。この学園祭はその歴史や文化を感じられ、しかも学校内の文化祭に留まらず、地域全体が関わることで、町全体を盛り上げたいという思いから実現した取り組みです。
参加者の声
(学園祭実行委員長の小田銀太さん/右)
「慣れない仕事や、プロジェクトを進める上で特に大学生や教授の先生と話すことも多く、それが大変でした。こどもたちが来てくれたことが一番うれしいです」
(学園祭実行副委員長の川端善太郎さん/左)
「しゃべること、企画することが苦手なので、みんなと協力して実現できたことが本当に良かったです」
(商店街の人の声)
「数十年ぶりに商店街が賑わい、人々が集まる様子を見て新しい可能性を感じた」
「準備段階では多くの困難もあったが、生徒や教員、地域住民が一体となったことで、大きな成果を得られた」
(親子で参加した人の声)
「こどもと大学生のお兄さんやお姉さんが一緒に遊んでくれて、とても喜んでいました」
これからのこと
飯塚高等学校の「街なか学園祭」は、地域と学校が一体となってこどもたちの未来を築くための重要な取り組みとして、今後も継続されていく予定です。嶋田先生は、「商工会議所や商店街、町内会など、地域の支援を受けながら、生徒たちが主体的に学び成長できる環境を整えることで、持続可能な地域社会の形成に寄与したいと考えています。それだけでなく、郷土愛を持った若い人材が育っているのが一番の宝かもしれません」と語ります。
また、「学園祭を通じて生徒たちが地域に貢献する姿勢を身に着けることができたのは大きな成果です。今後も地域の皆さんと協力しながら、さらに発展的な取り組みを進めていきたい」と意気込みを語ってくれました。
学校法人嶋田学園 飯塚高等学校ホームページ
https://iizuka.ed.jp/
(取材日:2024年10月2日)
活動の背景
UR香椎若葉団地では、少子高齢化が進行していく中で、ひとり暮らしの高齢者の増加など、地域のつながりが弱くなってきており、世代間のつながりを再構築していくことが課題となっていました。
こうした状況を受け、2014年に福岡女子大学、UR九州支社が包括協定を締結し、地域住民や自治会と連携できるようになり、大学生が団地に居住して地域での新しい活動を生み出すなど、様々な取り組みを3者で行ってきた延長上に、新しい取り組みとして『わかぼん』が実現しました。
具体的な活動内容
『わかぼん』の空間は、「本とアートでつながる」をテーマに、URと福岡女子大学の国際文理学部環境科学科の若竹雅宏先生とが協力して設計し、集会所の改修を行い、居心地の良い空間を実現しています。住民が快適に過ごせる「わかぼん」が誕生しました。
『わかぼん』には、住民やUR職員から寄贈された1,200冊以上の本が並び、継続的な本の受け入れ体制を作っています。また、イベントでは「団地の祭り」や「七夕飾りつくり」の他、多世代が交流できる機会をつくっており、ふらっと寄りたくなる場づくりを目指しています。
2024年9月28日に開催された「団地秋祭り『わかぼん』2周年記念行事」では、告知ポスター作りや、当日の設営、イベント発表、縁日までのすべてを、住民と大学生の手作りで実現しました。大勢のこどもや大人が『わかぼん』に訪れ、地域全体が活気に包まれました。
このようなイベントや活動を通じて、UR香椎若葉団地は、「住民同士が顔を合わせ、助け合う関係づくりやつながりを強くする」という目標に着実に近づいています。
参加者の声
(高木暢智自治会長)
「最初は集まる場が必要だと感じたのがきっかけでした。今では月に4回ほど開館し、こどもたちが集まり、宿題を持ってきて勉強する姿も見られます。『わかぼん』カフェの運営など、住民の生活を支える活動も積極的に行いたい。これからも、誰でも気軽に訪れ、自由に過ごせる場として発展させていきたいです」
(若竹雅宏先生/公立大学法人福岡女子大学 国際文理学部環境科学科)
「学生たちはフィールドワークを通じて社会とのつながりを学びました。こうした実体験が、彼らの成長にとって非常に有益な学びとなっています。また、地域の方々との対話や協力を通じて、持続可能なコミュニティづくりの難しさや重要性を深く理解することができたようです」
(URの中村直寿さん)
「このプロジェクトでは、住民、自治会、大学との密な連携が鍵でした。単なるインフラ提供ではなく、地域全体で持続可能な運営を目指す取り組みを今後も続けていきます」
(参加した学生)
「住民と協力して空間を設計することで、『わかぼん』がただの場所ではなく、人々がつながる空間になることを実感しました」
(春に就職した元学生主要メンバー)
「このプロジェクトに参加して一番良かったことは、住民や管理者の声を直接聞くことで、現実と理想の違いを理解できたことです。今後も多くの意見を反映しながら、コミュニティづくりに貢献したいと思います」
これからのこと
「今後、UR香椎若葉団地の『わかぼん』は、住民が自然に関わりたくなるような、こどもたちも積極的に参加し成長できる場づくりを目指し、住民主体の運営を進め、地域全体の文化・交流の拠点として、多世代がつながるよう育てていきたい」と自治会長は考えています。
(取材日:2024年9月26日)