福岡県こどもまんなかポータルサイト

子育てはみんなでシェアしよう!地域とこどもたちをつなぐ温かな居場所

具体的な活動内容

いろりこども食堂では、毎週水曜日の昼間と金曜日の夜に手作りの温かい食事を提供しています。「食べるだけでなく、ここで新しい経験をしてほしい」という代表の辻さんの思いから、月1回の竹細工やポン菓子づくりといった体験型イベントが行われています。

また、取材日は、以前この地域でこども食堂を営んでいた方が、手作りのおでんを差し入れてくれました。小学生や高校生も参加し、炊き立てのご飯を80個近い海苔巻きおにぎりにして提供。「みんなで一緒に作ったから、一層おいしいね!」という声も聞かれ、和やかな雰囲気に包まれました。こうした活動を通じて、多くの地域住民との対話が生まれる場となっています。

さらに、直方市で特定非営利活動法人mixjamが主催する、商店街での仕事体験プロジェクトでは、こどもたちが商品を準備し、販売を通じて経済活動を体験することができます。取材した当日、小学4年生の男の子が、次の日曜日に予定されているせんべいの販売に向けて、「どんな味付けが一番おいしいかな?」と、何度もせんべいの味付けの試作を重ねる姿が印象的でした。辻さんは「自分のお店を持つというのは、こどもたちにとって大きな挑戦です」と話します。

活動の背景

辻さんは、「いろりこども食堂は、古民家の再生から始まりました。最初は『居場所を作る』という小さな目標でしたが、今では地域の課題解決に向けた大きな活動になっています」と語ります。

活動を始めたきっかけは、保育士としての経験から得た「こどもたちが学びながら安心して過ごせる場所が必要だ」という思いでした。「学校や家庭以外にも、ホッとできる『第三の居場所』があれば、こどもたちの未来がもっと豊かになる」と話します。そして、いろりこども食堂を通じて、その思いを実現したいと考えています。

参加者の声

(保護者)
「ここに来ると、こどもが本当に楽しそうにしています。安心して預けられる場所があるというのは、親としてありがたいです。特に、食事が美味しくて、親子ともに癒されます」

(小学4年生 男の子)
「今度の日曜日に、商店街でせんべいを販売する予定です。今日はその練習で、どんな味付けがいいか考えながら作りました。おいしいって言ってもらえるように、頑張りたいです!」

(高校1年生ボランティア)
「地域のこどもたちと関わる中で、自分自身も学ぶことがたくさんありました。いろりこども食堂は、私にとっても大切な場所です。ここでの経験を通じて、将来はこどもたちの役に立つ仕事がしたいと思うようになりました」

これからのこと

辻さんは、これまで続けてきた「こどもの居場所」の取り組みを起点に、すべてのこどもたちが自分らしく安心して育つ環境を作るための仕組みをさらに充実させていきます。

例えば、フリースクール・おやこひろば・訪問支援・アウトリーチとしてのプレーパーク、そして、コーディネーターの養成など、多岐にわたる活動で、こどもたちが学び成長できる機会を提供したいと考えています。

「こどもまんなか社会」に向けて

辻さんは、「すべてのこどもたちが、安心して生きていける社会になったらいいなというのは、私がずっと思い続けていることです。経済的な困難や病気・障がいの有無がこどもたちの人生の妨げにならないような、こどもたちを真ん中に据えた社会を実現するために、大人全体が一丸となって支え合う必要があると感じています。『子育てはみんなでシェアする』という意識が広がり、得意な人がその力を発揮してこどもを支える仕組みができれば、より良い社会になると信じています」と話してくれました。

 

こどもの居場所いろり

ホームページ
https://mixjam-inclusive.com/

インスタグラム
https://www.instagram.com/mixjam.irori/

(取材日:2024年12月13日)

こども食堂と学習支援の2本柱で支える地域の居場所づくり

具体的な活動内容

土曜クラブのこども食堂は、こども(高校生まで)無料・おとな300円で、メインメニュー(カレー、ハヤシライス、スパゲッティ等が週替わり)と9種類の副菜を提供しています。 様々な企業や団体、個人の方から提供されるお野菜は金曜日にいただきに回り、土曜日の朝にスタッフが届いた食材をみながら、その場で9種類の副菜メニューを決めていきます。食材の提供などはもちろんのこと、70代後半から80代がメインという地域ボランティアのみなさんの熱意があって、成り立っている食堂です。

こども食堂のボランティアスタッフは、毎回10名程度。高齢者の女性が多いのですが、時には男性や若者、障がいのある若者、また、以前この食堂に来ていたこどもがお手伝いにきてくれています。 多い時で120食ほどを準備しており、こどもたちやファミリー、高齢者の方も参加し、栄養バランスが良い食事を楽しむとともに、世代を超えた賑やかな地域交流の場になっています。

活動の背景

「こどもの貧困問題に関心を持っていたので、経済的に厳しい家庭のこどもや孤食になっているこどもに食の支援を、また学校外の学習にお金をかけられない家庭のこどもにも学習支援をやっていきたい」と考えて土曜クラブを立ち上げた下川さん。

また、2020年度から、土曜クラブの他に小学生・中学生向けの学習支援「Hoshizoraクラブ」もスタート。基本的には一人ひとりが自主的に学習するスタイルで、小学生は宿題を中心に、中学生はそれぞれの計画に沿って学習する場を提供しています。市民や退職した教員、高校生、高校の時に学習支援に来てくれていた若者が就職して教えにきてくれており、学習だけではなく、多様な人間関係が生まれるこどもたちの居場所にもなっています。

また、第三土曜日は、読み聞かせボランティアの方も参加してくれています。こどもたちの体験を広げるために、創作活動などの体験の場も提供しています。

参加者の声

(代表の下川さん)
「毎週、メインメニューと9種類の副菜の食事を継続していくことは大変ですが、ボランティアスタッフの熱意と提供いただける食材のおかげで成り立っており、『毎週土曜日は栄養のバランスがとれる!』と嬉しい声も多くいただき、自慢のメニューです」

(参加したこども)
「ここに来ると知らない人も優しい声をかけてくれてうれしい!」

「毎週、メニューが楽しみ!」

「優しい味付けで、野菜が食べられるようになった!」

これからのこと

下川さんは「ボランティアスタッフの高齢化で後継者の育成という課題はありますが、子育ては、学校・家庭だけではできない。やっぱり地域が支援していかないといけない。この少子化の時代に一人ひとりのこどもたちを大事に育てていかないと次の社会は担えない。特に八女のような農村部では、持続可能な社会づくりのために人づくりがとても大切なので、できることをやりながら、こどもを支援する文化(共育)を広めていきたい。私たちおとなも、こどもたちと同じように、学校や職場、家庭以外の地域の居場所が大切なんです」と熱く語ってくれました。

  

土曜クラブ(こども食堂&学習支援)Facebookページ
https://www.facebook.com/doyoclub

(取材日:2024年12月7日)

スポーツを通じた多世代交流で家族や子育てをイメージ!「みんなでトライ!ふれあいラグビー」

具体的な活動内容

このイベントの特徴は、チームを一つの家族(Family)に見立てて、年齢の垣根を越えて一緒に体を動かしながら交流することです。6~7名で構成される各チームには、幼児とその保護者、小中高生がバランスよく配置されています。

まずは、みんなで準備運動。屋根付きの広々とした芝生広場で、思いっきり体を動かします。

次に、チーム(Family)名を話し合います。みんな好きなものなど思い思いの個性的な名前を付けて、元気に発表してくれました。

チームの名前が決まったら、いよいよプログラム開始。タグを使ったゲーム、ボール運びやパス練習など、チーム一丸となって運動プログラムに挑戦。みんなで協力しながら、ミッションをクリアしていきます。最初は、人見知りしていた子もいましたが、プログラムを重ねる中で、打ち解け、笑顔でふれあっていました。

イベントの最後には、ルリーロ福岡の選手によるラグビーのデモンストレーションも行われ、その迫力に参加者たちから大きな歓声が沸き上がり、熱気に包まれた、みんなで感動を共有する時間になりました。

活動の背景

現代社会では、こどもたちの異年齢交流の機会が減少傾向にあります。こうした背景から、本イベントは、スポーツ活動を通じて自然な形で世代間交流を促し、こどもたちに、家族や子育てについてイメージできる機会を提供しようと企画しました。

また、ラグビーというチームスポーツを選んだことで、協力し合う大切さも学べる機会となりました。

参加者の声

(幼児・小学生の声)
「中学生や高校生のお兄ちゃん・お姉ちゃんと遊ぶことが楽しかった」
「ボールを使った遊びが面白かった。普段はできない経験ができた」

(中高生の声)
「小さいこどもたちと触れ合うことが、普段なかなかないから、とても楽しかったです」
「走ったり遊んだりして、すごく楽しかったです。ラグビーの選手もかっこよかったけど、やっぱり小さいこどもと遊んで楽しかったです」
「こういうイベントがもっと増えたらいいなと思いました。地域のためにもなるし、みんなで楽しめるから良いですよね」

(保護者の声)
「なかなかこどもと一緒に過ごす土日って少なくて、今日は一緒に走ったりして、とても楽しかったです。筋肉痛になるかもしれない(笑)」
「一生懸命走るこどもの姿が印象的だった」

これからのこと

福岡県では、次世代の親となる若い世代が将来の家庭や子育てについて考える機会を提供するため、今後も、中高生を対象とした直接的な乳幼児とのふれあい体験の実施を促進します。

(取材日:2024年11月30日)

若者の声から始まる、大牟田の未来づくり

具体的な活動内容

若者の声が地域を変える原動力に

まちづくりの専門家を招いた勉強会を開催するとともに、定例の全体会議では、新規プロジェクトの企画立案を行い、プロジェクトチームを立ち上げ実行しています。
学生主導の「ReLeFes.(リリフェス)チーム」は、異なる学校の生徒が協力して合同文化祭を企画・運営しています。

「oMU+=(マルミュータ)チーム」は、駅前エリアをテーマパークのように楽しめる場所に変えるイベントを実施しています。

イベント会場正面

JR大牟田駅ホーム内でななつぼしをシャボン玉を飛ばしながら見送りました。

「Re-Life (リライフ)チーム」は、空き家のDIY-改修を通じて、街の新しい可能性を探っています。

「みんなのえきまえプロジェクトチーム」は、大牟田駅西口でのポイ捨て問題を解決するため、ポイ捨てしづらい環境づくりを実施しています。

剪定作業後にボランティア袋(ごみ袋)に詰めました。
なんとボランティア袋は50袋ほどに!

若者たちの意見を尊重し、対等な立場で議論を行う場づくりが特徴的で、社会人メンバーの持つさまざまな専門知識と学生のアイデアを出し合いながら企画を形にしていきます。特に学生主導の「ReLeFes.(リリフェス)チーム」では、社会人のメンバーは、アドバイスや実務的なサポートに徹し、最終的な判断は学生たち自身に委ねられています。また、イベントの企画から実施まで、必要な手続きや予算管理なども含めて実践的な学びの場となっています。

活動の背景

活動の背景には「自分たちの街を盛り上げたい」という若者と、「若者の意見をもっと社会に活かしたい」という地域の思いがあります。学校や地域の枠を超え、若者たちが「自分たちの街は自分たちで良くしていきたい」という思いを形にできる場所として機能しています。

参加者の声

(高校生)
「リリフェスでは、人に頼ることや他校の生徒とのつながりの大切さを学びました。今では、もっと地域づくりに関わりたいと感じています」

(高校生)
「最初は不安でしたが、自分の意見を否定されることなく、むしろ『じゃあ、やってみよう!』と背中を押してもらえる場所でした」

(高校生)
「学校も学年も違う人たちと出会え、新しい視点や考え方に触れることができました。この経験は私の将来の選択肢を広げてくれました」

(高校生)
「大人からの一方的な指示ではなく、対等な立場で意見を出し合えることで、自分の考えに自信が持てるようになりました」

(市担当者)
「若者の自由な発想が地域を新しい方向へ導く力になると実感しています。彼らの成長と共に、地域の未来を一緒に築きたいです」

これからのこと

若者たちは「文化会館など、普段、若者が利用しにくい施設をもっと身近に感じてもらえる場所にしたい」と展望を語ります。また、活動の継続性を高めるため、SNSでの情報発信強化や、新たな参加者の募集方法の工夫を進めています。さらに、九州各地の若者団体との連携も視野に入れ、より広い視点でまちづくりを考えていく予定です。

「こどもまんなか社会」に向けて

こどもまんなか社会に向けて、高校生たちからメッセージをもらいました。

<大人の皆さんへ>
「私たちを子ども扱いするのではなく、一人の人間として対等に接してほしいです」
「意見をただ『すごいね』で終わらせるのではなく、どう実現できるか一緒に考えてほしいです」

<同じ世代のみなさんへ>
「失敗を恐れず、チャレンジのきっかけを逃さないでほしい」
「自分の思いを言葉にすることで、自分の世界が広がっていく。いろいろな人と意見を交わすことを楽しんで!」

 

大牟田わかもの会議ホームページ
https://omuta-wk.com/


大牟田市ホームページ
https://www.city.omuta.lg.jp/kiji00316921/index.html

(取材日:2024年11月27日)

親の職場を見学!「こどもお仕事参観デー」

取り組みの概要

2024年度も、夏休みにこどもたちが親の職場を訪問し仕事を参観しました。その成果発表の場として、作文・写真の公募が行われ、作文部門には788通の応募がありました。第一次審査では、教員を目指す中村学園大学教育学部の学生が作文を読み、分析して、24組の親子を最終審査の発表者に選びました。最終審査では、中村学園大学の学生が司会進行を担当。緊張の中、各学年3名ずつがステージに登壇し、ひとり3分のプレゼンテーションタイムの中で、仕事参観の感想や気づき、自分の将来について発表しました。最終審査で、グランプリ、準グランプリ、第3位が選ばれたほか、審査員特別賞など様々な賞が作文部門24組と写真部門2組の合計26組の親子に贈呈されました。

活動の背景

現代では、働く意思がなく勤労していない若者や若年層の離職が増加しており、その背景には、学校教育や家庭教育だけでは働く意味や大切さを十分に学ぶことができていない状況があるのではないかとの課題認識から、このプロジェクトでは、家庭の基盤を支える親の仕事を間近で見ることを通して、社会や家庭の役割を理解するきっかけを与えることを目指しています。
さらに、参加企業・団体にとっても、こどもたちの訪問を受け入れることで、社内環境の改善や教育CSRの推進に繋がる意義深い取り組みとなっています。

参加者の声

(主催者)
「回を重ねるごとに、仕事の体験や仕事の価値観について語った優秀な作品が寄せられていることに感動するとともに、選考に苦慮するという嬉しい喜びを感じています」

(参加したこどもたち)
「家にいるときのお父さん・お母さんの姿と違う」
「カッコイイ!!」
「こんなに人の役に立つことをしている」
「職場でリーダーシップを発揮しているところに感動した」
「感謝の気持ちが芽生えた。親にありがとうの言葉を伝えたい」
など、こどもならではの気づきや視点が、親子の絆を深めています。

(参加企業・団体)
「こどもが1日来ることで、こども用の名刺を準備し、社長・会長室で名刺交換したり、会議に出席させたり、現場へ連れて行ったりと、さまざまな工夫をしているところが多く、社内の雰囲気も和やかになり、整理整頓も進み、教育CSRとしてとらえています」という声が多く上がっています。

これからのこと

「15年間実施を続けていますが、もっと多くの参加企業や団体が増えてほしいです。佐賀県まで実施企業が増えていますが、九州中、ひいては日本中に、この親子良し、企業・団体良し、社会良しの三方良しのプロジェクトが広がってほしいという希望を持っています」と、みらいプロジェクト実行委員会の会長である学校法人中村学園理事長学園長の中村紘右さんは語ってくれました。

 

みらいプロジェクト「こどもお仕事参観デー」ホームページ
https://miraiproject.fukuoka.jp/

(取材日:2024年11月23日)

世代間交流で地域の課題を解決するこどもたちの居場所づくり

具体的な活動内容

「はやめカッパ食堂」は、毎月第四土曜日の11時30分から13時まで、駛馬地区公民館で開催されています。メインメニューは、カレーです。こどもは無料、大人は200円で提供されています。

料理教室の先生でもある汐待さんを中心にボランティアの皆さんが隠し味にこだわって作った特製カレーをお目当てに、駛馬地区に住むファミリー、こどもたち、公民館のスマホ教室に参加されたシニアの方々が続々と集まってきます。11月23日は、総勢145名が参加していました。

毎回、幅広い年代の方々が集まるので、世代間交流が生まれる大切な場所になっています。

活動の背景

地域の熱い思いから、平成31年にスタートした「はやめカッパ食堂」でしたが、新型コロナ感染拡大やその後の大牟田市の大水害で会場の施設が水に浸かってしまい、休止を余儀なくされました。

しかし、地域の方々の情熱の火は消えることはなく、その後新型コロナの感染拡大が収束に向かい、会場となる施設も目途が立ち、休止から約1年半後の令和4年5月に再スタートすることができました。

食堂の運営は、約20名のボランティアを中心に行われ、食材提供先、資金確保、NPO法人との連携が確立し、現在まで活動が続けられています。

参加者の声

「はやめカッパ食堂」の事務局長である北川さんは、こどもたちがやってくるたびに一人一人の顔をちゃんと見て、声をかけ、名前を呼び、グータッチで交流します。それをずっと続けているからこそ、こどもたちとの信頼関係が生まれており、「人が好き!」という駛馬地区の温かさを感じられる居場所になっています。

北川さんは、「駛馬地区は、高齢者が多い地域。その中でこの食堂は小さなこどもたちから、学生、そして高齢者のつながりを育む大切な世代間交流の場となっています」と語ります。

(参加したこどもの声)
「カレーがおいしかった!」

(ボランティアさんの声)
「来るのが楽しみです。おいしいカレーを作り続けたいです」

これからのこと

「はやめカッパ食堂」の皆さんは、「食堂だけではなく、何かをプラスすることで付加価値を高めたい」と考えており、おなかいっぱいになった後は、アンビシャス広場やスポーツチャンバラなど、こどもたちが安心して遊べる居場所を提供しています。

駛馬地区のボランティアの皆さんは、こどもたちや高齢者を見守る仕組みづくりを確立しようと、熱い思いを持って、これからも地域の方々との「つながり・絆」を築いていきます。

(取材日:2024年11月23日)

みんな嬉しいがわたしの嬉しい。「おひさま食堂」—もうひとつの家族のような温かい居場所

具体的な活動内容

「地域コミュニティセンターこころん」は、「おひさま食堂」「おひさまカフェ」をはじめ、サークル活動やよろず相談など、地域の人々に寄り添う取り組みを行っています。

2017年10月から始まった「おひさま食堂」は、月2回、第二・第四金曜日の夕暮れ時に開かれ、地域福祉協力員として活躍するベテランママたちが、地域の農家や企業、フードバンク福岡から提供された食材を活用し、毎回約150食の温かな食事を用意しています。

取材当日、カラフルな風船を目印に、こどもたちが友だちと、あるいは一人で、また、家族連れや高齢の方が続々と坂道を上ってきました。会場は笑顔と和やかな空気に包まれていきます。

『ちょっとした楽しみを持ち帰ってほしい』―そう願いながら、ボランティア全員で折った新聞紙のおみやげバッグに詰めたのは、食品や小さな贈り物。帰り際には、調理リーダーの松尾さんとじゃんけんを楽しみ、一人一人に声をかけながらそのバッグを手渡しました。

ここには「支援する側・される側」という関係はありません。年間2,000名を超える人々が集っていることこそ、地域との確かなつながりの証といえるでしょう。「困ったことがあったら、おひさま食堂の時に聞いたらいいやん!」とこども同士で話す姿からも、この場が、さりげなく、でも確実に、地域のセーフティネットとしての役割を果たしているのがわかります。

活動の背景

代表の原貴代子さんは、地域の様々な課題に直面する中で、「行政だけで対応するには限界がある」と気づき、制度だけに頼らない助け合い(愛)の必要性を強く感じていました。そこで、「この街に長く暮らし、街のことをよく知っている、人生の大先輩たちと一緒に地域づくりを進めることこそが、高齢者、障がい者、孤立するこどもたちの問題解決につながる」と確信したのです。核家族化が進む今、子育て世代を支える場所として、おじいちゃん、おばあちゃんの知恵や経験を活かした温かい居場所を!この思いが活動の原点となりました。

参加者の声

(小学生参加者)
「ここに来ると、おばあちゃんたちが優しく話しかけてくれて楽しい!」
「いつも優しくしてくれるから安心します」

(地域の保護者)
「おみやげバッグをこどもがとても楽しみにしていて、本当に助かっています」
「コロナで食事が大変なとき、フードパントリーで助けられました」

(調理リーダー松尾さん)
「元気だからボランティアをしてるんじゃないとよ。ボランティアをするから自分たちが元気になっとるとよ」

(ボランティア参加者)
「ここに来るのを楽しみにしています」

これからのこと

今後、「地域コミュニティセンターこころん」は、こどもたちが安心して過ごす「第三の居場所」づくりにさらに力を入れていきます。B&G財団の助成金を活用し、篠栗町のくすのき公園に新しい施設を建設予定です。地域のボランティアとともに、家庭や学校だけでは得づらい多世代交流の中で、こどもたちが安心して成長できる「頼れる場所」になることを目指しています。

「こどもまんなか社会」に向けて

代表の原さんは、「こどもたちが、現実逃避してゲーム依存になり孤立してしまう問題からの脱却には、おじいちゃんおばあちゃんたちの知恵や昔遊び、物に頼らない生活が大切」と強く語り、人とのつながりの重要性を訴えています。

理事の谷本さんは、「人の子も自分の子もみんなかわいい。自分のこどもが大きくなった時には周りにいるこどもたちと一緒に社会をつくることになるから、自分の子だけ良くていいなんてない。この未来を担うこどもたち全員が幸せでないと意味がない」と強調しています。

そして原さんは、「活動の根底にあるのは、セーフティネット。『いのちの大切さ』です。命を軽んじるような言葉をこどもたちが自ら発言することが本当にないように、少しでも発信していきたい」と話してくれました。

 

NPO法人地域コミュニティセンターこころんホームページ
https://cocoron-sasaguri.org/

(取材日:2024年11月22日)

地域の絆で広がる温かな居場所―西松建設と紡ぐこども食堂物語

具体的な活動内容

「こども食堂みずほまち」は、2016年8月に設立され、福岡県下でも初期から活動している先駆的なこども食堂の一つです。このこども食堂は、西松建設の独身寮の、リビングと厨房を活動の拠点とし、毎月第二土曜日、月に1回、地域のこどもたちや家族に、毎回工夫を凝らした温かい食事と安心して過ごせる居場所を提供しています。
活動は、認定 NPO 法人チャイルドケアセンターと西松建設の社員を含む約20 名のボランティアにより、安定した運営ができています。
ふくおか筑紫フードバンクや地域の農家から届く野菜や米などの新鮮な食材を、ボランティアスタッフが賞味期限ごとに仕分け、西松建設から寄贈された冷蔵・冷凍設備や食材保管設備で適切に管理することで、食品ロス削減にも貢献しています。
取材当日は、料理が得意な地域の方々が朝9 時前から準備を始め、こどもたちのために心を込めた「三色丼」と「お吸い物」「コロッケ」を振る舞いました。
食事のあとは、こどもたちが高校生ボランティアと、ゲーム対戦や工作、塗り絵、絵本の読み聞かせなどを楽しみます。こどもたちのリクエストに応えて思いっきり遊び、世代を超えた交流の中で、こどももおとなも笑顔あふれる時間を過ごしていました。

活動の背景

「こども食堂みずほまち」の代表である大谷さん(認定NPO 法人チャイルドケアセンター代表理事)がこども食堂を始めたきっかけは、教育現場で目の当たりにしたこどもの貧困と孤独でした。「こどもの格差は深刻な社会問題」という強い思いに駆られ決断します。それが20 年前。まだ「こども食堂」という概念がなかった頃、大谷さんは地域の公民館を借りて、週1 回の無料食堂を立ち上げました。当初は小さな規模からのスタートでしたが、地元農家や有志の協力を得て、栄養バランスの取れた温かな食事を提供することができました。

活動を続ける中で、「困難な家庭のこどもだけの場所では意味がない。誰もが気軽に集えるこども食堂を作りたい」と地域全体がこどもたちを見守り、支える共生の場を目指すようになります。
そんな思いを知った、当時、西松建設九州支社副支社長だった松川さんが心を動かされて、会社に掛け合います。そして活動拠点となる寮や冷凍庫、食材保管庫の提供、そして電気代の支援を行い、今のこども食堂が実現しました。

参加者の声

(高校生ボランティア)
「小さな子と遊ぶのが楽しい」

(参加したこども)
「お兄ちゃんと対戦ゲームができて嬉しい」

(保護者)
「こどもも居心地が良いようで、食事した後もずっと遊んでいます。助かっています」

(「こども食堂みずほまち」代表 大谷さん)
「こども食堂には、こどもたちにとって当たり前に保障されるべき豊かなこども時代の姿があります。そして、こども食堂がその豊かなこどもの『居場所』として機能していることを感じています。地域や企業の皆さまのご協力のおかげで、8年間という長い間、活動を続けることができました。本当に感謝しています」

(西松建設の松川さん)
「CSR 活動を大切に、地域のこどもたちの未来を直接支えられることに参加するボランティアも喜んでいます。こどもたちの笑顔が私たちの活動の原動力です」

これからのこと

大谷さんは、「こども食堂は、単に食事を提供する場ではなく、こどもたちが安心して過ごせる『居場所』でありたいと考えています。これからもこどもたちの声をしっかりと取り入れ、彼らが主体的に関われる場づくりを目指していきます。また、西松建設様をはじめ、応援してくださる企業や団体・個人の皆さま、そして地域全体と支え合いながら、持続可能な居場所づくりに取り組んでいきたいと思います」と話してくれました。

 「こどもまんなか社会」に向けて

大谷さんは、「こどもたちが自由に意見を述べられる場をつくり、地域全体でその成長をあたたかく見守り、支え合えるような居場所を守っていきたい」と語っています。

 

認定NPO法人チャイルドケアセンター
ホームページ
http://npo-ccc.net/

インスタグラム
https://www.instagram.com/child.care.center1

(取材日:2024年11月16日)

「のびのび元気塾」〜すべてのこどもの成長を見守る、自然と遊びの力〜

具体的な活動内容

「のびのび元気塾」は、野原、川、森など自然の中で展開される体験活動です。季節に応じたテーマを設定し、こどもたちが自由に遊び、探検や創作活動に取り組みます。

この日は、山歩きの日。小学生の頃から参加している5人の高校生と若者が大学生のボランティアと一緒に展望台を目指しました。肢体の不自由な参加者もいましたが、ボランティア大学生の支援もあり、全員約10キロを歩き通すことができました。

活動の特徴

こどもたちの想像力と挑戦を後押しする元気塾

現代社会では、こどもたちの自然体験の機会が減少しています。「のびのび元気塾」は、こうした課題に応えるため、障がいのあるこどもも、平等に参加できる場を目指しています。雨の日や寒い日こそ、自然環境に適応する力を育むチャンスと捉え、こどもたち自身から湧き出る「やりたい」という意欲を引き出しながら、それぞれのペースで挑戦できる環境を整えています。

参加者の様子や声

「のびのび元気塾」の活動に参加したこどもたちは、多くの成長と変化を見せています。例えば、中学生になるまで、2キロも歩けなかったこどもが、活動を続ける中で最終的に18キロも歩けるようになったり、初めは恥ずかしがっていたこどもが、仲間との交流を通じて少しずつ自信をつけ、自ら進んで活動に参加するようになったりしています。

ある保護者の方は、「うちの子がこんなに変わるなんて信じられませんでした。のびのび元気塾のおかげで、自分の力を信じ、前向きに挑戦する姿を見ることができて、本当に感謝しています」と話しています。

また、この日参加した高校生のひとりは、「10キロ歩くのはきつくないです。紅葉や福岡の街の景色も楽しめました。社会人になっても参加したいです」と語ってくれました。

大学生ボランティアのふたりは、毎週土日に開催しているこどもたちの体験活動にも参加しています。

(理学部のキーちゃん、ボランティア3年目)
「体験活動は本当に大事。兄と姉がいますが小さい子と関わりたくて小学生の活動にも参加しています。次へのバトンを繋いでいきたいです」

(教育学部のさきちゃん、ボランティア4年目)
「小学生と関わりたくて参加しています。初めて障がいのある若者と海へ行った時、どうして歩いてくれないかわからなかった。そこに、じゃんぼ(谷さん)が来て、『靴に石が入ってるんじゃないか』と言われたらその通り。見えていないことがたくさんあるんだと気づかされました」

これからのこと

自然の力で、こどもたちの未来を育てる

「この活動を通じて、こどもたちが自分の力に気づき、明るく前向きに生きていく力を身に付けてほしい」と体験活動協会FEA理事長 谷正之さんは語ります。自分のペースで成長し、未来への自信を持てるよう、自然の中でのびのびと成長する機会を提供し続けることを目指します。

「こどもまんなか社会」に向けて

谷さんは、「自然が最高の先生です。こどもたちは自然の中で、忍耐力、判断力、想像力、協調性といった『人間力』を育みます。障がいのあるこどもたちにも『できない』と決めつけず、それぞれのペースで挑戦できる環境を整え、見守ることが『こどもまんなか社会』では大切。小さな成功の積み重ねが、未来を切り開く自信を育むはずです」と語ってくれました。

 

体験活動協会 FEAホームページ
https://fea.fukuoka.jp/

(取材日:2024年10月3日)

地域と共に未来を築く―学校法人嶋田学園 飯塚高等学校の「街なか学園祭」

具体的な活動内容

3回目となる今年のテーマは「こども」。生徒たちは実行委員会を中心に、近畿大学の学生と一緒にワークショップを重ね、トイレ設置にもチャレンジしましたが、自分たちの力ではどうしようもできない現実を目の当たりにして実現を断念。『それだったら、こども達が楽しいことをやろう!』と方向転換し、スタンプラリーや工作の企画、そしてステージが見えやすいように会場に板を置くアイディアを実践。当日は、飯塚市の本町・東町商店街を舞台に大々的に開催され、通路が人の頭で見えなくなるほど、数千人の来場者があり、こどもから大人まで賑やかな声がやまない一日になりました。

活動の背景

商店街はかつて宿場町として栄えた歴史的な背景もあり、地域との深いつながりを昔から大切にしてきた文化がありました。この学園祭はその歴史や文化を感じられ、しかも学校内の文化祭に留まらず、地域全体が関わることで、町全体を盛り上げたいという思いから実現した取り組みです。

参加者の声

(学園祭実行委員長の小田銀太さん/右)
「慣れない仕事や、プロジェクトを進める上で特に大学生や教授の先生と話すことも多く、それが大変でした。こどもたちが来てくれたことが一番うれしいです」

(学園祭実行副委員長の川端善太郎さん/左)
「しゃべること、企画することが苦手なので、みんなと協力して実現できたことが本当に良かったです」

(商店街の人の声)
「数十年ぶりに商店街が賑わい、人々が集まる様子を見て新しい可能性を感じた」

「準備段階では多くの困難もあったが、生徒や教員、地域住民が一体となったことで、大きな成果を得られた」

(親子で参加した人の声)
「こどもと大学生のお兄さんやお姉さんが一緒に遊んでくれて、とても喜んでいました」

これからのこと

飯塚高等学校の「街なか学園祭」は、地域と学校が一体となってこどもたちの未来を築くための重要な取り組みとして、今後も継続されていく予定です。嶋田先生は、「商工会議所や商店街、町内会など、地域の支援を受けながら、生徒たちが主体的に学び成長できる環境を整えることで、持続可能な地域社会の形成に寄与したいと考えています。それだけでなく、郷土愛を持った若い人材が育っているのが一番の宝かもしれません」と語ります。

また、「学園祭を通じて生徒たちが地域に貢献する姿勢を身に着けることができたのは大きな成果です。今後も地域の皆さんと協力しながら、さらに発展的な取り組みを進めていきたい」と意気込みを語ってくれました。

  

学校法人嶋田学園 飯塚高等学校ホームページ
https://iizuka.ed.jp/

(取材日:2024年10月2日)

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