福岡県こどもまんなかポータルサイト

「実家より実家」のような温かさで、こどもたちの居場所を紡ぐ“じじっか”

具体的な活動内容

多世代が集う「居場所」の提供
金曜日は朝から夜まで、土曜日は午前10時から夜8時まで、日曜日は午前10時から午後2時まで開放されている「じじっか」は、こどもたちが外やゲームで遊んだり、勉強をしたり、小さな子の面倒を見たりと、みんなが自由に過ごせる居場所で、自然な形で多世代交流が生まれています。

食事支援と「ライフローズン」
週末の食事提供に加え、市の「支援対象児童等見守り強化事業」の補助を活用して55世帯に月2回のお弁当配達を行っています。また、働く親が忙しい平日にもこどもたちが食事に困らないよう、「ライフローズン(生活の愛情冷凍食品)」という1食分の冷凍食品を開発しており、温めるだけで栄養バランスの取れた食事ができるこの仕組みは、「週末のご飯の心配をしなくていい」と利用者からも好評です。

「リリボン」による価値創造
寄付で集まった古着を無料で配っていた当初、中村さんは「これって本当にこどもたちのためになっているのか?」と違和感を覚えました。お金を渡すわけでも、買ってあげるわけでもなく、自分の手で得られる仕組みはないか──。

そうして生まれたのが、「リリボン」です。古着や布の端切れを2cm幅に切ってねじり、こどもたちがそれを1メートル編むことで、食材や衣類と交換できる仕組みを構築しました。労働の対価として“自分で手に入れる”体験は、こどもたちに役割と誇りを育みます。
この取り組みは今では、高齢者施設の活動や、障がいのある方の体験プログラムとしても広がりを見せています。

学習支援
ここでは、無料塾や宿題指導、英検対策などを実施しています。土曜日には元塾の先生が宿題を教え、木曜日にはオンライン授業で英語や数学を約1時間教えています。

「プラスアルファ就労」という新しい働き方
基本的な生活費以外の「お金がないからできないこと」を可能にするため、じじっかでの生活の一部を仕事と融合する仕組みづくりを構築しています。

例えば、こどもが野球を習いたいと思っていても、月謝が家計の負担となり諦めざるを得ない家庭に対し、じじっかでの仕事の一部を行ってもらうことで、クラブチームにumau.から直接月謝を支払い、こどもが野球をできる環境を作っています。

こどもたちが「お金がないからといって諦める必要ないんだ」と夢を持ち続けられるような機会を提供しています。

活動の背景

代表の中村みち子さんは、自身も1歳と3歳のこどもを抱えて離婚し、母子家庭として子育てをしてきました。「働いても働いてもお金がなかった」「人と話すのがとにかく嫌だった」「頼ったら負けみたいな気持ちがあった」と振り返る中村さんは、「大家族に憧れて生きてきた」と語ります。

そんな中村さんが「一人じゃ子育てできなかった」「ひとり親よりふたり親より7人親みたいな環境にかなり助けられた」という経験から、2014年に母子家庭グループを結成しました。みんなで花火やバーベキューを楽しんだ時間が、「誰かと一緒ならやれる、自分が変われる」という実感につながったと言います。そして、「実家より実家」のような拠点をつくりたいという思いから活動が広がり、2020年、遂に「じじっか」をオープンさせます。

「自分一人で頑張るのが正義って思っていた当時の自分に、『一人じゃないんだよって言いたい』」と中村さんは語ります。今では、誰かの話を聞き、時には運営と利用者の間に立って調整する「みんなのお母さん」や「相談役」として、じじっかに来るこどもたちが、親以外の多様な価値観に触れられる環境づくりに情熱を注いでいます。

参加者の声

利用者のお母さん/5年前から利用)
「週末のご飯の心配をしなくていい。誰でもウェルカムで、一回関わったら排除しないというこのスタイルが素晴らしい。元々人嫌いだったけど、ここに来て人と接することが増えて、人の気持ちが分かるようになりました。体調も良くなったし、家計の見直しもできて、本当にここに来て余裕ができた。長女からも『ママがじじっかに来ていい方向に変わったね』って言われるようになりました」

(中学2年生の女の子)
「面倒見が良くなったって言われるのがすごく嬉しいです。普段はゲームしたり、勉強したりしていて、『わたしと僕の夢』の先生に英検も教えてもらっています。リリボンを編むのも楽しいです」

これからのこと

現在、家庭に居場所がないこどもが住むことができるシェアハウス※1の開設を進めています。高校生たちも参加するDIYワークショップを通じて、こどもたち自身が未来の居場所を手作りしています。

また、来年度にはじじっかの1階にミシン工房、草木染め工房、パソコン工房の3つの工房を設置し、「プラスアルファ就労」の場をさらに拡充する予定です。リリボンについては、企業のデザイナーと協力して商品化を進めており、活動の持続可能性も追求しています。

※1 未成年の方は親の同意が必要となります。

「こどもまんなか社会」に向けて

中村さんは、「こどもたちが『お金がないから無理』と諦めるのではなく、『どうすればできるか』を一緒に考えられる場所でありたいと思います」と語ります。

希望を持てない環境で育つこどもたちが、自分を責めることなく、親以外の価値観に触れる機会を得ることで、未来は大きく変わると信じています。

一般社団法人umau.

(取材日:2025年6月28日)

こどもの“やってみたい”を応援する――地域で育つこどもたちの遊ぶ環境を守る

具体的な活動内容

「子ども支援ネットワーク With Wind」は、「まちじゅうを子どもの遊び場に」という理念のもと、2012年からプレーパーク活動を本格的に開始し、現在も地域に根差した活動を継続しています。
令和6年度も、プレーパークを年間183日実施し、3900人以上のこどもたちが参加しました。

毎週2~3日開催している「子どもプレーパーク」のほかにも、「学校プレーパーク」や「放課後プレーパーク」、「出張プレーパーク」、中高生の居場所「Risus Munakata!(リーゾスむなかた!)」など、多様な拠点を展開し、地域に少しずつ、こどもたちが安心して過ごせる土壌を広げています。

また、福岡県内で外遊びの環境を豊かにしていくため、「福岡プレーパーク連絡協議会」を仲間と共に立ち上げ事務局を担当しています。外遊びの重要性を啓発する活動や、県内各地の団体がつながり、知識や経験を情報共有するネットワークを築いています。「福岡県の60市町村それぞれに、1つずつプレーパークがあったらいいですね」と藤原さんは語っています。

取材当日は、With Windの総会が青空の下、芝生の上で開催されました。輪になって座るのは、これまで関わってきた大人、若者、そしてこどもたち。まず「こどもの声を聞こう!」の時間が設けられ、こどもたちは「こんな遊びがしたい」「もっとこうだったらいいな」と自由に発言し、大人たちは真剣に耳を傾けていました。With Windは、こうしたこどもの声を受け止める場づくりを日常的に大切にしています。

午後からはプレーパークが始まりました。ロープ、水、木材、絵具などを手にしたこどもたちは、興味のままに遊びに夢中になり、ときにムカデに大騒ぎする姿も見られました。途中、土砂降りの雨が降りましたが、こどもたちは足元の水たまりに落ち葉をかぶせて歩道を作ったり、濡れた素材を工夫して使ったりと、雨さえも「遊び」に変えていきました。

「こういう時こそ、わくわくする工夫ができるんです。大人の工夫もこどもたちは見ているんですよ」と、藤原さんは笑顔で語ります。

遊びと暮らしがつながる時間は、夕方まで穏やかに続きました。

活動の背景

代表の藤原浩美さんは、かつて看護師として小児病棟で勤務していました。あるとき、安静が必要にもかかわらず「遊びたい」と笑顔を見せるこどもと出会い、その姿に衝撃を受けたといいます。遊べたことで輝くような表情を見せるこどもたちに、「それが命を支えているのだと感じた」と語ります。病院という制約の中でも、こどもの“遊びたい”という本能は失われておらず、むしろそれが生きる力になっていることを実感した体験が、現在の活動の原点になっています。

その後、自身が母親となり、地域での子育てを通して「もっとつながりたい」「一人で抱えないでほしい」という思いが募り、1990年に仲間とともに子育て支援グループを立ち上げました。親同士が支え合える場づくりを進める中で、安心して自由に思いきり遊べる場所の少なさに課題を感じるようになりました。

こうした気づきから、2008年には「こどもの遊びに寄り添う場」として、プレーパークを本格的にスタートさせました。以来、行政や地域と連携しながら、こどもたちのための居場所を少しずつ広げてきました。藤原さんは、「こどもは“場所”があるだけでは安心できません。そばにいてくれる大人がどう関わるか。信じてくれる大人がいるからこそ、心を開いて遊べるのだと思います」と語っています。

With Windは、こどもが安心して自由に遊び、自ら考えて挑戦できる「余白」を地域の中に守り続け、遊びを通して育まれる「生きる力」を、まち全体で支える仕組みづくりも積極的に働きかけています。

参加者の声

(高校生/総会当日司会進行役)
「6年前からプレーパークに通っています。今はこうして関わる立場になっていて不思議な気持ちです。これからも“やってみたい”を応援できる場所であってほしいと思います」

(大学生/元利用者)
「小学生のときにここで思いっきり遊んだ経験が、今の自分の土台になっています。火や刃物、自然の中での遊びなど、普通なら制限されることも、ここでは信じて任せてもらえた。今は、次の世代のこどもたちを支える側に回りたいと思っています」

(保護者/30代)
「家ではつい“ダメ!”と言いがちだけど、ここでは“どうしたいの?”と聞いてくれる。こどもがのびのびしていて、私も学ばせてもらっています」

(参加した小学生)
「今日は絵の具をいっぱい使ってペタペタしたよ。家では服が汚れたら怒られるけど、ここでは怒られないからうれしい!」

(スタッフ)
「失敗しても大丈夫と思える雰囲気を作るのが、私たちの役割。自分もこどもの頃にこういう場があったらよかったなと思います」

これからのこと

With Windは今後、学校や地域との連携をさらに深めながら、より多くのこどもたちが安心して過ごせる居場所を広げていきます。特に、こどもの遊びに関わる大人を育てる「プレイワーカー」の育成にも力を入れていきます。また、自由にのびのびと自分らしくいられる環境の実現を目指しています。
公園や学校だけでなく、商店街や駅前、家庭の中にも「やってみたい」を受け止める空気が流れている――そんな社会を、少しずつ、けれど確実に目指しています。

「こどもまんなか社会」に向けて

「この社会を、よりよい形でこどもたちに手渡したい。そう思う大人が一人でも増えてほしい」と藤原さんは願っています。「こどもが「やってみたい」と言った時には、すぐに「ダメ」と止めず、「“大丈夫、やってみりぃ”と声をかけてほしい。こどもは、信じてくれる大人がそばにいるからこそ、安心して遊べるし、自分を出せるんだと思います」と語ってくれました。

子ども支援ネットワーク With Wind

(取材日:2025年6月26日)

小さな味覚体験が未来をつくる!園児のための食育事業

具体的な活動内容

JA全農ふくれんの食育活動では、季節ごとに旬の果物を通してこどもたちに様々な体験を提供しています。夏は「なし・ぶどう・いちじく」、秋は「柿・みかん」、冬は「キウイ」を味わい、特別企画として3月には「博多あまおう」を味わう「みつばち感謝の日」を実施しています。

「みつばち感謝の日」では、「いちごの王様あまおうとみつばちビー」という紙芝居を通して、いちごとみつばちの関係を学び、JAや農家の方から贈られた博多あまおうを試食します。令和5年度には、福岡県内48の幼稚園・保育所から約6,300人、令和6年度には約4,000人の園児がこの活動に参加しました。これまでの参加者は延べ約8万人を超え、福岡県のこどもたちにとって大切な食育の機会となっています。

夏・秋・冬に実施している食育プログラム「フルーツキッズレンジャーになろう!」では、こどもたちがフルーツキッズレンジャーになりきり、旬の果物の魅力や栄養について学びます。先生方がオリジナルの紙芝居を読み聞かせし、果物ができるまでの過程や栄養について伝えた後、JAや農家の方から提供された旬の果物を試食します。「フルーツキッズレンジャーになろう!」は、14年以上続き、これまでに延べ12万人以上の園児が参加しました。

活動の背景

JA全農ふくれんがこの活動を始めたきっかけは、現代社会におけるこどもたちの果物離れに課題を感じていたことでした。長年、果物の販売担当を務めている青柳さんは、「果物を一度も食べたことがないこどもが増え、20歳で初めて柿を口にする若者もいます。これは農家側の私たちにとっても深刻な問題です」と語ります。

青柳さんは、核家族化や食の外部化が進む中、こどもたちの味覚形成や食文化継承に危機感を抱いており、「幼少期の味覚体験は将来の食習慣の礎となります。農業従事者の高齢化も進む中、こどもたちに食と農のつながりを知ってほしい」と願っています。 さらに、「特に『みつばち感謝の日』では、いちごと自然環境の大切な関係を学ぶ貴重な機会を提供することができ、福岡県でしか生産していない『あまおう』に愛着を持ってくれることは嬉しいことです」と語ってくれました。

参加者の声

活動後のアンケートでは、年にもよりますが、約94%の園が「大変良い取り組みである」と評価し、約84%が「こどもたちに変化があった」と回答しています。

【いちごに関する変化】
「以前よりいちごが話題にあがるようになった」
「いちごの味についてよく尋ねるようになった」
などの変化が見られ、
「いちごに名前があることを知らなかったが、食べる時『それ、あまおうよね!』と言っていた」
「1歳児も『あまおうはすごい』『はちさんプーン』と言っていた」
など、小さなこどもたちにも強く印象に残りました。

【他の果実に関する変化】
「苦手だったこどもも、お友達と一緒に食べることができた」
「いちじくという果物を知った」
「季節の果物を食べることで季節感を味わえた」
という感想もありました。

特に印象的なのは、「果物を食べるだけではなく、育てる過程や生産者さんの存在に気づくことができる」という声です。こどもたちは果物がどのように育ち、誰によって作られているのかを学び、食と農業への感謝の気持ちを育んでいます。

これからのこと

14年間以上続くこの食育活動は、こどもたちが「生きる力」を育み、食と農業の大切さを理解し、故郷を愛する心を持つ人に成長してほしいという願いから始まりました。

「今後も『みつばち感謝の日』と『フルーツキッズレンジャーになろう!』を通じて、果物の魅力と農業の大切さを伝え続けます。こどもたちが福岡の特産品に興味を持ち、地域への愛着を深めることも大切にしています」と青柳さんは語ってくれました。

JA全農ふくれんホームページ

(取材日:2024年11月)

家庭と仕事の両立を支援する「かん養生クリニック」—職員が安心して働ける職場環境づくり

具体的な活動内容

柔軟な働き方の支援

かん養生クリニックでは、こどもの年齢にかかわらず、それぞれの家庭の事情に合わせた柔軟な働き方を支援しています。たとえば、中学生になっても部活動の送り迎えや、思春期のこどもと向き合う時間を持ちたいという声にも応え、短時間勤務ができる制度を整えています。

また、「急にこどもを預けられなくなった」「配偶者が体調を崩した」といった状況にも対応できるよう、子連れ出勤も可能としています。釜院長は、「『仕事が忙しくて休みづらい』という空気をなくして、みんなが気持ちよく休めるようにするためには、職員の家族もクリニックの一員として関われる場をつくることが必要」と考えています。

家族とのつながりを大切に

職場と家庭の距離を近づける取り組みとして、家族連れで参加できる慰労会や忘年会を定期的に開催してきました。今はコロナ禍もあり一時中断していますが、「環境が整えばすぐにでも再開したい」と釜院長は考えています。

また、「職員のお子様(主に学生)が社会経験を積む機会として、法人内施設でのアルバイトも受け入れ、昼食にお弁当を無料提供するなど、家族全体へも配慮してきました。現在は、該当するお子様はいませんが、対象のお子様がいれば、いつでも受け入れたいと考えています」と語ってくれました。

心に寄り添うサポート

出産した職員には、院長のご夫人からベビー服のプレゼントが贈られています。言葉にしづらい感謝や応援の気持ちを、さりげない贈り物という形で届けており、その温かい心遣いが職員の安心感につながっています。

育児休業中の職員への支援

育休中の職員には、職場の様子が分からなくなって不安にならないように、定期的に連絡をとることで、職場とのつながりを保つようにしており、復帰する3か月前くらいには、職場復帰後の希望を確認して、どんな働き方がいいのかを話し合っています。

活動の背景

精神科の外来診療で、釜院長は育児に悩む保護者たちの声に多く接してきました。「診療内科・精神科の外来をやっていると、育児に悩む保護者がたくさん来きます。その多くが、『子育てを完璧にしなきゃいけない』『ちゃんとできない自分がダメだ』と思い込んで、自分を責めている」と釜院長は振り返ります。

こうした子育て世代の悩みに寄り添ってきた釜院長は、「こどもを育てる方法はひとつじゃないし、『できる範囲で、できることをやればいい』と思えた方が、親もこどもも幸せになれる」と考えています。この思いが根源にあり、職員一人ひとりの状況に合わせた、柔軟な職場環境づくりにつながっています。

参加者の声

(産休・育休利用者)
「職場にはもちろんですが、病児保育や保育園など周りの方々にたくさん助けてもらい子育てと仕事を両立できています。こどもが大きくなったので今度は支える側として、復職するまでをサポートし、微力ですが貢献したいと思います」

「職場には妊娠前から復帰後まで丁寧にサポートしていただきました。不妊治療をしていましたが、通院できるように、人員についての相談に乗ってもらったり、出産経験のあるスタッフからアドバイスをもらったりできました。復帰時も家庭事情や、働き方の希望を聞いていただき、働きやすいよう配慮していただいています」

「こどもまんなか社会」に向けて

釜院長は、「『仕事が忙しくて休みづらい』という空気をなくして、気持ちよく休める職場にしたい。そのためには、職員の家族にもクリニックの一員として関わってもらうことが大切だと思っています」と話してくれました。

医療法人かん養生クリニックホームページ

(取材日:2025年2月13日)

子育てと仕事、どちらも諦めない — 託児付「コワーキングスペース&シェアオフィス」

具体的な活動内容

福岡市中央区大名に位置するCREATIVE ROOMは、託児スペース一体型のコワーキングスペースで、仕事と子育てを両立したい人たちが安心して働ける環境を提供しています。フリーランス、育休中の専門職、創業準備中の方など、多様な利用者を受け入れており、「家では集中できないが、こどもを預けて別の場所へ行くのは不安。そんな“はざま”にいる方々が安心して利用できる場所を目指しました」と、スタイルクリエイト株式会社の麻生社長は話します。

保育士が常駐し、同じフロア内でこどもを預けながら作業ができるため、預け先を探す手間や移動時間を省き、安心して作業に集中できる点が利用者から好評です。法人利用やサテライトオフィスとしての契約にも対応しており、創業支援イベント、キャリア相談などのサポート体制も整えています。また、利用者が気軽に交流できる場としても機能しており、孤立しがちな子育て世代の負担軽減に貢献するなど、地域における新たな居場所としての役割も担っています。

活動の背景

創業者である麻生社長は、フリーのウエディングプランナーやアパレルなど、様々な事業を経験する中で、出産後の働きにくさを痛感しました。「高い能力を持ちながらも、それを活かせる仕事に出会えない女性が多い現状を、非常に残念に思っていました。何かできることはないかと考えたんです」この想いが保育事業に参入する原動力となりました。

「私自身がシングルマザーであり、こどもを“どこかに預ける”ことへの不安を強く感じていたので、安心して預けられる場所を作りたいと考えていました」と当時を振り返ります。さらに、コロナ禍を契機に「テレワーク中の夫婦喧嘩が増えた」という声を受け、「家庭内だけでは限界がある。社会とのつながりを保つための“余白”が必要だ」と感じ、CREATIVE ROOMを立ち上げました。

参加者の声

利用する人からは、

「3時間でも集中できれば違う」

「家にいるよりもここで作業ができてリフレッシュできる」

「誰かとちょっと話すだけでほっとする」

というような声が寄せられており、単なるコワーキングスペースに留まらず、子育てとキャリアの両立に困難を感じるすべての人にとっての“居場所”となっています。

これからのこと

スタイルクリエイト株式会社は、今後の展開として、CREATIVE ROOMのような施設を増やす検討や、深刻化する保育士不足に対応するため、再教育や意識改革を含めた保育士教育も計画しています。さらに、小中学生への出前授業やインターンシップの受け入れなど、次世代に保育の魅力を伝える取り組みにも力を入れていく予定です。

麻生社長は、「こどもも親も笑顔で過ごせる環境を整え、『子育てか仕事か』ではなく『子育ても仕事も』という選択ができる社会の実現を目指します。子育てをしながら働くことが当たり前の社会づくりを通して、こどもを中心とした豊かなコミュニティ形成に貢献していきたい」と語ってくれました。

「こどもまんなか社会」に向けて

麻生社長は、「こどもが『大人になりたくない』と言うのは、大人が楽しそうに見えていないからではないか」と考えています。こどもまんなか社会の実現には、「まず大人自身が元気で、自分らしく生きる姿を示すことが大切であり、『親が笑っていなければ、こどもは未来に希望を持てない』『過度な期待やプレッシャーではなく、“楽しそうな未来”を見せたい』」と語り、性別にとらわれない多様な生き方や働き方を尊重する社会が必要だと訴えます。

最後に「私はファミリーファーストという考え方よりも、共存を目指しています。性別に関係なく、誰もが自分らしく輝ける社会が理想です」と話してくれました。

クリエイティブルームホームページ

(取材日:2025年3月12日)

「こどもと一緒に、私らしい時間を」~子育て世代に寄り添う美容室~

具体的な活動内容

13年前に福岡市の城南区に美容室「teatro」を開業後、最初は一般美容室内にキッズスペースを設置していました。しかし、こどもの自然な動きや声に配慮が必要なことから、2年後に隣接スペースを活用し、子連れ専門の美容室「limite」をオープンしました。

工夫されているのは店舗設計です。通常の美容室では難しい、親子の直接的な視線の確保を行い、施術席に座る親が鏡の横から直接こどもの様子を確認でき、こどもも親の顔がしっかりと見える配置を実現しています。また、こどもが自由に動ける十分な広さを確保することで、保護者同士が自然に声を掛け合える、温かい雰囲気の空間になっています。

このほかにも、こども専門の美容室や、キッズスペース付き美容室など、地域ニーズに応じて特色を持たせた店舗を複数展開しています。また、初回来店時のこども1人分のカットを無料にするなど、気軽に試せる工夫も行っています。

 

活動の背景

美容室にこどもを連れて行ける環境の少なさと、親の目が届かない場所にこどもを預けることへの不安を感じる人が多いという現状から、親子で安心して過ごせる場所づくりを目指しています。「自分のことに付き合わせてしまい気が引ける、そんな感覚を持っている親御さんに来てほしい。自分の目でこどもをしっかり見守りながら、自分もきれいになりたい、そんな方に来てもらいたい」という思いで美容室をスタートしています。

最初は一般美容室内のキッズスペースからはじめましたが、「こどもって動き回るし、騒いだり泣いたりする、それを受け入れられるお客さまばかりではなくて、ゆっくりしたい人もいます。その中で、『やっぱりここは分けた方がいいな』と感じ、子連れ専門の美容室を開設しました」と代表の藤野さんは当時を振り返ります。また、女性スタッフの育休取得や復帰支援など、「女性が働き続けられる環境を整えることが大事」という考えのもと、子育てをしながら美容師として活躍できる環境も整えることで、スタッフ自身の子育ての経験を活かしながら、来店する親子に寄り添ったサービスを提供しています。

参加者の声

藤野さんは、初めて来店するお客様からは「こんな美容室があるなんて知らなかった!」「ありがたい!」という声が多く聞かれていると話します。また、子育てが終わった方からは「自分が子育て中のときにこういうお店があればよかった」という感想も寄せられています。

「こどもまんなか社会」に向けて

「親のストレスを少しでも減らせる環境をつくることが大事だと思います。親がこどもを連れて行ける場所が増えれば、もっと子育てしやすい世の中になるんじゃないかなと。最近はどこでも『こどもが騒ぐ』ことに対して厳しい目があるけれど、そこをもう少し寛容にできたらいいですね。こどもって泣くのが仕事だし、大人がそれを許容できる社会になればいいな」と藤野さんは語ってくれました。


teatro&limiteホームページ
https://teatro-f.com/

(取材日:2025年2月19日)

『働く親の味方 ―「ひまわり観光」が実現する、きめ細かな両立支援』— 社員の声を大切にした働きやすい環境づくり

具体的な活動内容

ひまわり観光の両立支援の特長は、「休みたい時に気兼ねなく休める」という企業文化を基盤とした、きめ細かなサポート体制にあります。社員との日常的なコミュニケーションを大切にし、一人ひとりの状況に寄り添う姿勢が両立支援の根底にあります。

たとえば、育児休業を取得する際は、中村社長自らが制度を丁寧に説明し、休業中も同僚との情報交換を促進することで、スムーズな職場復帰をサポートしています。実際に、育休取得者が赤ちゃんを連れて職場に顔を出すなど、自然な形での職場復帰が実現しています。加えて、子育て期の社員には、短時間勤務やパート勤務への転換も可能とし、状況に応じた働き方を支援しています。

また、中学校入学前のこどもを育てる従業員には、看護休暇制度(※)を設けています。あわせて、学校行事やこどもの部活動といった子育てに関わる場面でも、安心して休暇を取得できるよう環境づくりにも力を入れています。

ひまわり観光では、「人は宝」という思いを土台に、家族との時間を大切にできる職場環境の実現を着実に進めています。

※ひまわり観光では、こどもの病気やけがの際に取得できる看護休暇制度を中学校入学前のこどもを育てる従業員を対象に設けています。

活動の背景

「すごく優秀な社員から突然『辞めたい』と言われたんです。理由を聞くと、子育てと仕事の両立が難しいと。なんとか働き続けてもらいたいと思い、制度を整えることにしました」と中村社長は振り返ります。

中村社長自身、以前勤めていた職場で、ハードワークな環境を経験しており、そのような経験を通じて感じたことについて、「その子の成長は、その瞬間にしかないものがあります。その大切な瞬間に関われるよう、極力努力したい」と語ります。

中村社長は二代目社長として、新しい時代に即した働き方を模索する中で、「会社は家族の幸せの土台であるべき」という考えに至りました。そして、育休取得のサポートはもちろん、復帰後も無理なく働ける環境整備など、地域に根差した企業として、この考えを形にしていきたいと考えています。

社員の声

(女性社員)
「育休制度について社長から直接説明を受け、安心して取得を決めることができました。休業中も同僚が連絡をくれて、職場とのつながりを感じられました。復帰後も赤ちゃんを連れて職場に顔を出せる雰囲気が、とても心強かったです」

(育休取得者)
「職場の仲間が連絡をくれたおかげで、会社とつながっている実感が持てました」

(男性社員)
「こどもの部活動の試合で看護休暇を取得しました。以前は言い出しにくい雰囲気でしたが、今は上司や同僚の理解もあり、子育てに関する休暇を取得しやすくなりました」

これからのこと

今後の展望について中村社長は、「休みたい時に気兼ねなく休める職場文化を築きたい」と語ります。特に看護休暇の活用を促進し、性別を問わず子育てと仕事を両立できる環境づくりを進め、地域に根差した企業として、従業員一人ひとりの家庭生活の充実を支援していくとのことです。
 

ひまわり観光ホームページ
https://himawari-bus.com/


(取材日:2025年1月8日)

「親もこどもも笑顔で過ごせるお手伝い」-子育て・家事支援とともに心のケアも

具体的な活動内容

「私たちがやっているのは、ただのベビーシッターではないんです」とドゥーラシッターふくおかを立ち上げた阿部さんは話します。産前産後はもちろん、働くお母さんの支援・小学生のサポートまで、子育て支援と家事支援を組み合わせた総合的な支援を提供しており、例えば料理を作りながら母親の悩みに耳を傾けるなど、様々な支援を同時に行います。

「結局、子育てと家事って切り離せないものなんです。ベビーシッターだけで『はい、赤ちゃん見ました、じゃあさようなら』では、お母さんの負担は減らないですよね」。そうした思いから、家事支援も含めた包括的なアプローチを取り入れています。

近年では、遠方に住むご両親からのプレゼントとして支援を依頼されるケースも増えているといいます。

特に今力を入れているのがドゥーラシッターの養成です。全国から受講生を集めて養成講座を開催し、現場での実践を教える「同行サポート」も取り入れ、支援者の育成に取り組んでいます。

活動の背景

「孤独なママに手を差し伸べたい」という思いで活動を始めた阿部さんの原点には、自身の経験がありました。28歳で夫を亡くし、3人のこどもを抱えながらの仕事と子育ての中、「余裕がなくて、気づいたらこどもに厳しく当たってしまっていた」という経験から、子育て支援の道を選びました。

「今の若いお母さんたちは、悩みを相談する場所が限られているんです。近所付き合いも少なくなっているし、実家に帰っても世代間のギャップに悩んでいる人が多い」と阿部さんは指摘します。

そうした中で阿部さんは、まずファミリーサポートに登録することから活動を始め、2020年、一般社団法人産後ドゥーラが発行する産後ドゥーラの資格を取得するため東京で学び、福岡で活動したのち独立し、個人で事業を立ち上げました。しかし、「一人では何もできない、より多くの支援者が必要だ」と感じ、養成講座を立ち上げるとともに、ドゥーラシッターの実践力を養うための「同行サポート」も始めました。

こうした取り組みの根底には、「お母さんが笑顔じゃないと、こどもも笑顔になれない」という信念があります。阿部さんは、母親に寄り添い、共に成長できる支援者を増やしていくことを目指しています。

参加者の声

(利用者)
「ただベビーシッターをするだけでなく、家事も一緒にやってくれて、さらに悩みまで聞いてもらえる。気持ちが本当に楽になりました」

 (スタッフ)
「お母さんが笑顔になることで、こどもも自然と笑顔になっていく。その変化を見られることが何よりも嬉しいです」

これからのこと

「『一人では何もできない』という気づきから始まった支援の輪を、さらに広げていきたい」と阿部さんは話します。ドゥーラシッターの養成講座と実践的な同行サポートを通じて、母親に寄り添える支援者を育てていくことで、より多くの家庭に笑顔を届けていきたいと考えています。

「こどもまんなか社会」に向けて 

「こどものためにできることをすることと同じように、お母さんを支えることが大事なんです。母親が安心して子育てできる環境をつくることが、結果としてこどもたちの幸せにつながっていく。そんな思いで、これからも活動を続けていきたい」と話してくれました。

ドゥーラシッターふくおかホームページ

https://doulasitter.com/

https://www.instagram.com/doulasitter.fukuoka/

(取材日:2025年2月14日)

「みんなが集まれるコミュニティの場」~こども食堂から地域食堂へ~

具体的な活動内容

毎月第三土曜日の16時から開催される「キッチン小春ちゃん」では、偶数月のフードパントリーと奇数月の会食イベントを展開しています。夏休みなどの長期休暇中には、地域食堂も開催しています。さらに、学びを取り入れた特別企画も実施しており、香春町青少年育成町民会議と共催した「スーパー巻き寿司大会」では、こどもたちと地域の人々が一体となって長い巻き寿司を作り上げ、会場が大いに盛り上がったそうです。



取材当日は、「親子で楽しむマナー講座」と題し、創立メンバーの竹原裕美さんを講師に迎えて特別企画が開催されました。15時30分頃、会場の香春町地域福祉センター香泉荘には、調理スタッフ10名を含む約30名のボランティアが集結し、着々と準備を進めていきました。17時近くになると、親子連れや高齢者など約70名の参加者が来場しました。

「親子で楽しむマナー講座」では、カレーライス、豚の角煮、唐揚げ、デザートのケーキを味わいながら、食事の大切さと作法を学びました。竹原講師の「今日は特別な日。みんなで楽しく食事のマナーを学びましょう」という言葉に、こどもたちは目を輝かせて聞き入っていました。会場のあちこちでは、「皿を汚さないように食べるのは難しいね」「ケーキの包み紙、上手にはがせたよ」といった温かな親子の会話が弾みます。小さなこどもたちから大人まで、真剣な表情で挑戦する姿が微笑ましく、印象的でした。参加者は、帰り際、用意されたおみやげを笑顔で受け取り、「また来たい」という声を残して会場を後にしました。

こども食堂の運営は、こどもは無料、大人は任意の寄付制の参加費と、行政からの補助金、企業からの寄付で賄われ、地域に根差した温かな取り組みとして、着実に発展を続けています。

活動の背景

社会福祉協議会に寄せられる子育ての相談の深刻さに心を痛めた中山敏幸さんと元市役所職員の丸田宏幸さんは、「地域全体で子育てを支えたい」という強い思いから、7年前、教育関係者やスクールソーシャルワーカーなど、志を同じくする約10名と共に「キッチン小春ちゃん」を立ち上げました。

世界各国を飛び回った商社マン時代の経験から、地域のつながりの大切さを痛感していた中山代表は、「人口1万人を切る香春町だからこそ、地域の絆が何より大切です。生活環境が異なっても、ここに来るこどもたち全員が楽しく過ごせる場所にしたい」と熱い思いを語ります。

こども食堂として始まったこの取り組みは、今ではこどもから高齢者まで、誰もが気軽に立ち寄れる温かな地域の居場所として、着実に根付いています。

参加者の声

(参加したこども)
「楽しかった!お腹いっぱいになった」

「おみやげがうれしい!」

(保護者)
「友達に誘われて初めて参加しました。こんな豪華な食事でびっくりしました!マナーのお話がためになりました」

「保育園からチラシをもらって、来られる時は結構来ていますね。最初はパントリーでした。こどもも楽しみにしていますし、香泉荘で開催されているから参加しやすいです」

(調理ボランティア)
「月に1~2回参加していますが、楽しいですよ!」

(中山代表)
「地域の方から“なにか手伝いたい。ボランティアをしたいけど、チャンスがないからできない。だから、こういうチャンスがあれば手伝えるから嬉しい”という声をいただきます」

これからのこと

こども食堂としての活動に加え、高齢者も含めた「地域食堂」としての展開を始めています。中山代表は、「こどもだけじゃなくて、大人も集まる場所がなにかできないかな」という地域の声に応え、すでに地域食堂を3回開催。これからは、こどもも大人も気軽に集まれる第3の居場所づくりを目指し、防災をテーマにした企画なども検討しながら、世代を超えた交流の場として、さらなる発展を計画しています。

(取材日:2025年1月15日)

安心して出産に臨むためのサポート – 飯塚市陣痛タクシー事業の取り組み

具体的な活動内容

少子化が進む日本で、特に地方部では出産時の移動手段確保が課題となっています。飯塚市はこの問題に向き合い、「陣痛タクシー事業」を立ち上げました。

「陣痛タクシー事業」は住民に事前に緊急連絡先やかかりつけ医の情報を登録してもらうことから始まります。陣痛タクシーには飯塚市から無償で提供された防水シートや給水マット、消臭スプレーを完備し、万一の事態にも対応できる体制を整えています。ドライバーは妊婦体験を含む専門研修を受講し、妊婦さんの気持ちに寄り添ったきめ細かなサポートを提供できるように実践知識も得ています。

また、新生堂薬局からは陣痛時の妊婦に対する物品の収納バッグも飯塚市へ寄贈されています。協力体制の構築や登録後の連絡体制に苦心しながらも、行政とタクシー会社は連携を強化し、夜間対応も徐々に拡充するなど、着実に前進を続けています。

体験者の声

(ドライバー)
「妊婦の大切な瞬間に寄り添えることにやりがいを感じます」

(利用者)
「事前登録のおかげで安心して利用できました」

(行政担当者)  
「共働き世帯や核家族が増えるなか、妊婦さんからの問い合わせも多く安心して出産・子育てができるまちを目指して子育て支援の充実を図っていきます」

これからのこと

「陣痛タクシー事業」は、地域社会における妊婦支援のモデルケースとして注目されています。飯塚市は協力事業者の拡大を目指し、より利用しやすい環境づくりを計画しています。グリーンベルトタクシーの野上社長は、「安心して出産できる社会を目指し、地域の活性化にもつなげたい」と語り、地域全体で妊婦をサポートする体制の構築に意欲を見せています。

 

飯塚市ホームページ 陣痛タクシー事業

https://www.city.iizuka.lg.jp/boshihoken/jintsutaxi.html

(取材日:2024年10月11日)

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