取り組みの概要
2024年度も、夏休みにこどもたちが親の職場を訪問し仕事を参観しました。その成果発表の場として、作文・写真の公募が行われ、作文部門には788通の応募がありました。第一次審査では、教員を目指す中村学園大学教育学部の学生が作文を読み、分析して、24組の親子を最終審査の発表者に選びました。最終審査では、中村学園大学の学生が司会進行を担当。緊張の中、各学年3名ずつがステージに登壇し、ひとり3分のプレゼンテーションタイムの中で、仕事参観の感想や気づき、自分の将来について発表しました。最終審査で、グランプリ、準グランプリ、第3位が選ばれたほか、審査員特別賞など様々な賞が作文部門24組と写真部門2組の合計26組の親子に贈呈されました。
活動の背景
現代では、働く意思がなく勤労していない若者や若年層の離職が増加しており、その背景には、学校教育や家庭教育だけでは働く意味や大切さを十分に学ぶことができていない状況があるのではないかとの課題認識から、このプロジェクトでは、家庭の基盤を支える親の仕事を間近で見ることを通して、社会や家庭の役割を理解するきっかけを与えることを目指しています。
さらに、参加企業・団体にとっても、こどもたちの訪問を受け入れることで、社内環境の改善や教育CSRの推進に繋がる意義深い取り組みとなっています。
参加者の声
(主催者)
「回を重ねるごとに、仕事の体験や仕事の価値観について語った優秀な作品が寄せられていることに感動するとともに、選考に苦慮するという嬉しい喜びを感じています」
(参加したこどもたち)
「家にいるときのお父さん・お母さんの姿と違う」
「カッコイイ!!」
「こんなに人の役に立つことをしている」
「職場でリーダーシップを発揮しているところに感動した」
「感謝の気持ちが芽生えた。親にありがとうの言葉を伝えたい」
など、こどもならではの気づきや視点が、親子の絆を深めています。
(参加企業・団体)
「こどもが1日来ることで、こども用の名刺を準備し、社長・会長室で名刺交換したり、会議に出席させたり、現場へ連れて行ったりと、さまざまな工夫をしているところが多く、社内の雰囲気も和やかになり、整理整頓も進み、教育CSRとしてとらえています」という声が多く上がっています。
これからのこと
「15年間実施を続けていますが、もっと多くの参加企業や団体が増えてほしいです。佐賀県まで実施企業が増えていますが、九州中、ひいては日本中に、この親子良し、企業・団体良し、社会良しの三方良しのプロジェクトが広がってほしいという希望を持っています」と、みらいプロジェクト実行委員会の会長である学校法人中村学園理事長学園長の中村紘右さんは語ってくれました。
みらいプロジェクト「こどもお仕事参観デー」ホームページ
https://miraiproject.fukuoka.jp/
(取材日:2024年11月23日)
具体的な活動内容
「はやめカッパ食堂」は、毎月第四土曜日の11時30分から13時まで、駛馬地区公民館で開催されています。メインメニューは、カレーです。こどもは無料、大人は200円で提供されています。
料理教室の先生でもある汐待さんを中心にボランティアの皆さんが隠し味にこだわって作った特製カレーをお目当てに、駛馬地区に住むファミリー、こどもたち、公民館のスマホ教室に参加されたシニアの方々が続々と集まってきます。11月23日は、総勢145名が参加していました。
毎回、幅広い年代の方々が集まるので、世代間交流が生まれる大切な場所になっています。
活動の背景
地域の熱い思いから、平成31年にスタートした「はやめカッパ食堂」でしたが、新型コロナ感染拡大やその後の大牟田市の大水害で会場の施設が水に浸かってしまい、休止を余儀なくされました。
しかし、地域の方々の情熱の火は消えることはなく、その後新型コロナの感染拡大が収束に向かい、会場となる施設も目途が立ち、休止から約1年半後の令和4年5月に再スタートすることができました。
食堂の運営は、約20名のボランティアを中心に行われ、食材提供先、資金確保、NPO法人との連携が確立し、現在まで活動が続けられています。
参加者の声
「はやめカッパ食堂」の事務局長である北川さんは、こどもたちがやってくるたびに一人一人の顔をちゃんと見て、声をかけ、名前を呼び、グータッチで交流します。それをずっと続けているからこそ、こどもたちとの信頼関係が生まれており、「人が好き!」という駛馬地区の温かさを感じられる居場所になっています。
北川さんは、「駛馬地区は、高齢者が多い地域。その中でこの食堂は小さなこどもたちから、学生、そして高齢者のつながりを育む大切な世代間交流の場となっています」と語ります。
(参加したこどもの声)
「カレーがおいしかった!」
(ボランティアさんの声)
「来るのが楽しみです。おいしいカレーを作り続けたいです」
これからのこと
「はやめカッパ食堂」の皆さんは、「食堂だけではなく、何かをプラスすることで付加価値を高めたい」と考えており、おなかいっぱいになった後は、アンビシャス広場やスポーツチャンバラなど、こどもたちが安心して遊べる居場所を提供しています。
駛馬地区のボランティアの皆さんは、こどもたちや高齢者を見守る仕組みづくりを確立しようと、熱い思いを持って、これからも地域の方々との「つながり・絆」を築いていきます。
(取材日:2024年11月23日)
具体的な活動内容
「地域コミュニティセンターこころん」は、「おひさま食堂」「おひさまカフェ」をはじめ、サークル活動やよろず相談など、地域の人々に寄り添う取り組みを行っています。
2017年10月から始まった「おひさま食堂」は、月2回、第二・第四金曜日の夕暮れ時に開かれ、地域福祉協力員として活躍するベテランママたちが、地域の農家や企業、フードバンク福岡から提供された食材を活用し、毎回約150食の温かな食事を用意しています。
取材当日、カラフルな風船を目印に、こどもたちが友だちと、あるいは一人で、また、家族連れや高齢の方が続々と坂道を上ってきました。会場は笑顔と和やかな空気に包まれていきます。
『ちょっとした楽しみを持ち帰ってほしい』―そう願いながら、ボランティア全員で折った新聞紙のおみやげバッグに詰めたのは、食品や小さな贈り物。帰り際には、調理リーダーの松尾さんとじゃんけんを楽しみ、一人一人に声をかけながらそのバッグを手渡しました。
ここには「支援する側・される側」という関係はありません。年間2,000名を超える人々が集っていることこそ、地域との確かなつながりの証といえるでしょう。「困ったことがあったら、おひさま食堂の時に聞いたらいいやん!」とこども同士で話す姿からも、この場が、さりげなく、でも確実に、地域のセーフティネットとしての役割を果たしているのがわかります。
活動の背景
代表の原貴代子さんは、地域の様々な課題に直面する中で、「行政だけで対応するには限界がある」と気づき、制度だけに頼らない助け合い(愛)の必要性を強く感じていました。そこで、「この街に長く暮らし、街のことをよく知っている、人生の大先輩たちと一緒に地域づくりを進めることこそが、高齢者、障がい者、孤立するこどもたちの問題解決につながる」と確信したのです。核家族化が進む今、子育て世代を支える場所として、おじいちゃん、おばあちゃんの知恵や経験を活かした温かい居場所を!この思いが活動の原点となりました。
参加者の声
(小学生参加者)
「ここに来ると、おばあちゃんたちが優しく話しかけてくれて楽しい!」
「いつも優しくしてくれるから安心します」
(地域の保護者)
「おみやげバッグをこどもがとても楽しみにしていて、本当に助かっています」
「コロナで食事が大変なとき、フードパントリーで助けられました」
(調理リーダー松尾さん)
「元気だからボランティアをしてるんじゃないとよ。ボランティアをするから自分たちが元気になっとるとよ」
(ボランティア参加者)
「ここに来るのを楽しみにしています」
これからのこと
今後、「地域コミュニティセンターこころん」は、こどもたちが安心して過ごす「第三の居場所」づくりにさらに力を入れていきます。B&G財団の助成金を活用し、篠栗町のくすのき公園に新しい施設を建設予定です。地域のボランティアとともに、家庭や学校だけでは得づらい多世代交流の中で、こどもたちが安心して成長できる「頼れる場所」になることを目指しています。
「こどもまんなか社会」に向けて
代表の原さんは、「こどもたちが、現実逃避してゲーム依存になり孤立してしまう問題からの脱却には、おじいちゃんおばあちゃんたちの知恵や昔遊び、物に頼らない生活が大切」と強く語り、人とのつながりの重要性を訴えています。
理事の谷本さんは、「人の子も自分の子もみんなかわいい。自分のこどもが大きくなった時には周りにいるこどもたちと一緒に社会をつくることになるから、自分の子だけ良くていいなんてない。この未来を担うこどもたち全員が幸せでないと意味がない」と強調しています。
そして原さんは、「活動の根底にあるのは、セーフティネット。『いのちの大切さ』です。命を軽んじるような言葉をこどもたちが自ら発言することが本当にないように、少しでも発信していきたい」と話してくれました。
NPO法人地域コミュニティセンターこころんホームページ
https://cocoron-sasaguri.org/
(取材日:2024年11月22日)
具体的な活動内容
「こども食堂みずほまち」は、2016年8月に設立され、福岡県下でも初期から活動している先駆的なこども食堂の一つです。このこども食堂は、西松建設の独身寮の、リビングと厨房を活動の拠点とし、毎月第二土曜日、月に1回、地域のこどもたちや家族に、毎回工夫を凝らした温かい食事と安心して過ごせる居場所を提供しています。
活動は、認定 NPO 法人チャイルドケアセンターと西松建設の社員を含む約20 名のボランティアにより、安定した運営ができています。
ふくおか筑紫フードバンクや地域の農家から届く野菜や米などの新鮮な食材を、ボランティアスタッフが賞味期限ごとに仕分け、西松建設から寄贈された冷蔵・冷凍設備や食材保管設備で適切に管理することで、食品ロス削減にも貢献しています。
取材当日は、料理が得意な地域の方々が朝9 時前から準備を始め、こどもたちのために心を込めた「三色丼」と「お吸い物」「コロッケ」を振る舞いました。
食事のあとは、こどもたちが高校生ボランティアと、ゲーム対戦や工作、塗り絵、絵本の読み聞かせなどを楽しみます。こどもたちのリクエストに応えて思いっきり遊び、世代を超えた交流の中で、こどももおとなも笑顔あふれる時間を過ごしていました。
活動の背景
「こども食堂みずほまち」の代表である大谷さん(認定NPO 法人チャイルドケアセンター代表理事)がこども食堂を始めたきっかけは、教育現場で目の当たりにしたこどもの貧困と孤独でした。「こどもの格差は深刻な社会問題」という強い思いに駆られ決断します。それが20 年前。まだ「こども食堂」という概念がなかった頃、大谷さんは地域の公民館を借りて、週1 回の無料食堂を立ち上げました。当初は小さな規模からのスタートでしたが、地元農家や有志の協力を得て、栄養バランスの取れた温かな食事を提供することができました。
活動を続ける中で、「困難な家庭のこどもだけの場所では意味がない。誰もが気軽に集えるこども食堂を作りたい」と地域全体がこどもたちを見守り、支える共生の場を目指すようになります。
そんな思いを知った、当時、西松建設九州支社副支社長だった松川さんが心を動かされて、会社に掛け合います。そして活動拠点となる寮や冷凍庫、食材保管庫の提供、そして電気代の支援を行い、今のこども食堂が実現しました。
参加者の声
(高校生ボランティア)
「小さな子と遊ぶのが楽しい」
(参加したこども)
「お兄ちゃんと対戦ゲームができて嬉しい」
(保護者)
「こどもも居心地が良いようで、食事した後もずっと遊んでいます。助かっています」
(「こども食堂みずほまち」代表 大谷さん)
「こども食堂には、こどもたちにとって当たり前に保障されるべき豊かなこども時代の姿があります。そして、こども食堂がその豊かなこどもの『居場所』として機能していることを感じています。地域や企業の皆さまのご協力のおかげで、8年間という長い間、活動を続けることができました。本当に感謝しています」
(西松建設の松川さん)
「CSR 活動を大切に、地域のこどもたちの未来を直接支えられることに参加するボランティアも喜んでいます。こどもたちの笑顔が私たちの活動の原動力です」
これからのこと
大谷さんは、「こども食堂は、単に食事を提供する場ではなく、こどもたちが安心して過ごせる『居場所』でありたいと考えています。これからもこどもたちの声をしっかりと取り入れ、彼らが主体的に関われる場づくりを目指していきます。また、西松建設様をはじめ、応援してくださる企業や団体・個人の皆さま、そして地域全体と支え合いながら、持続可能な居場所づくりに取り組んでいきたいと思います」と話してくれました。
「こどもまんなか社会」に向けて
大谷さんは、「こどもたちが自由に意見を述べられる場をつくり、地域全体でその成長をあたたかく見守り、支え合えるような居場所を守っていきたい」と語っています。
認定NPO法人チャイルドケアセンター
ホームページ
http://npo-ccc.net/
インスタグラム
https://www.instagram.com/child.care.center1
(取材日:2024年11月16日)
具体的な活動内容
「のびのび元気塾」は、野原、川、森など自然の中で展開される体験活動です。季節に応じたテーマを設定し、こどもたちが自由に遊び、探検や創作活動に取り組みます。
この日は、山歩きの日。小学生の頃から参加している5人の高校生と若者が大学生のボランティアと一緒に展望台を目指しました。肢体の不自由な参加者もいましたが、ボランティア大学生の支援もあり、全員約10キロを歩き通すことができました。
活動の特徴
こどもたちの想像力と挑戦を後押しする元気塾
現代社会では、こどもたちの自然体験の機会が減少しています。「のびのび元気塾」は、こうした課題に応えるため、障がいのあるこどもも、平等に参加できる場を目指しています。雨の日や寒い日こそ、自然環境に適応する力を育むチャンスと捉え、こどもたち自身から湧き出る「やりたい」という意欲を引き出しながら、それぞれのペースで挑戦できる環境を整えています。
参加者の様子や声
「のびのび元気塾」の活動に参加したこどもたちは、多くの成長と変化を見せています。例えば、中学生になるまで、2キロも歩けなかったこどもが、活動を続ける中で最終的に18キロも歩けるようになったり、初めは恥ずかしがっていたこどもが、仲間との交流を通じて少しずつ自信をつけ、自ら進んで活動に参加するようになったりしています。
ある保護者の方は、「うちの子がこんなに変わるなんて信じられませんでした。のびのび元気塾のおかげで、自分の力を信じ、前向きに挑戦する姿を見ることができて、本当に感謝しています」と話しています。
また、この日参加した高校生のひとりは、「10キロ歩くのはきつくないです。紅葉や福岡の街の景色も楽しめました。社会人になっても参加したいです」と語ってくれました。
大学生ボランティアのふたりは、毎週土日に開催しているこどもたちの体験活動にも参加しています。
(理学部のキーちゃん、ボランティア3年目)
「体験活動は本当に大事。兄と姉がいますが小さい子と関わりたくて小学生の活動にも参加しています。次へのバトンを繋いでいきたいです」
(教育学部のさきちゃん、ボランティア4年目)
「小学生と関わりたくて参加しています。初めて障がいのある若者と海へ行った時、どうして歩いてくれないかわからなかった。そこに、じゃんぼ(谷さん)が来て、『靴に石が入ってるんじゃないか』と言われたらその通り。見えていないことがたくさんあるんだと気づかされました」
これからのこと
自然の力で、こどもたちの未来を育てる
「この活動を通じて、こどもたちが自分の力に気づき、明るく前向きに生きていく力を身に付けてほしい」と体験活動協会FEA理事長 谷正之さんは語ります。自分のペースで成長し、未来への自信を持てるよう、自然の中でのびのびと成長する機会を提供し続けることを目指します。
「こどもまんなか社会」に向けて
谷さんは、「自然が最高の先生です。こどもたちは自然の中で、忍耐力、判断力、想像力、協調性といった『人間力』を育みます。障がいのあるこどもたちにも『できない』と決めつけず、それぞれのペースで挑戦できる環境を整え、見守ることが『こどもまんなか社会』では大切。小さな成功の積み重ねが、未来を切り開く自信を育むはずです」と語ってくれました。
体験活動協会 FEAホームページ
https://fea.fukuoka.jp/
(取材日:2024年10月3日)
具体的な活動内容
3回目となる今年のテーマは「こども」。生徒たちは実行委員会を中心に、近畿大学の学生と一緒にワークショップを重ね、トイレ設置にもチャレンジしましたが、自分たちの力ではどうしようもできない現実を目の当たりにして実現を断念。『それだったら、こども達が楽しいことをやろう!』と方向転換し、スタンプラリーや工作の企画、そしてステージが見えやすいように会場に板を置くアイディアを実践。当日は、飯塚市の本町・東町商店街を舞台に大々的に開催され、通路が人の頭で見えなくなるほど、数千人の来場者があり、こどもから大人まで賑やかな声がやまない一日になりました。
活動の背景
商店街はかつて宿場町として栄えた歴史的な背景もあり、地域との深いつながりを昔から大切にしてきた文化がありました。この学園祭はその歴史や文化を感じられ、しかも学校内の文化祭に留まらず、地域全体が関わることで、町全体を盛り上げたいという思いから実現した取り組みです。
参加者の声
(学園祭実行委員長の小田銀太さん/右)
「慣れない仕事や、プロジェクトを進める上で特に大学生や教授の先生と話すことも多く、それが大変でした。こどもたちが来てくれたことが一番うれしいです」
(学園祭実行副委員長の川端善太郎さん/左)
「しゃべること、企画することが苦手なので、みんなと協力して実現できたことが本当に良かったです」
(商店街の人の声)
「数十年ぶりに商店街が賑わい、人々が集まる様子を見て新しい可能性を感じた」
「準備段階では多くの困難もあったが、生徒や教員、地域住民が一体となったことで、大きな成果を得られた」
(親子で参加した人の声)
「こどもと大学生のお兄さんやお姉さんが一緒に遊んでくれて、とても喜んでいました」
これからのこと
飯塚高等学校の「街なか学園祭」は、地域と学校が一体となってこどもたちの未来を築くための重要な取り組みとして、今後も継続されていく予定です。嶋田先生は、「商工会議所や商店街、町内会など、地域の支援を受けながら、生徒たちが主体的に学び成長できる環境を整えることで、持続可能な地域社会の形成に寄与したいと考えています。それだけでなく、郷土愛を持った若い人材が育っているのが一番の宝かもしれません」と語ります。
また、「学園祭を通じて生徒たちが地域に貢献する姿勢を身に着けることができたのは大きな成果です。今後も地域の皆さんと協力しながら、さらに発展的な取り組みを進めていきたい」と意気込みを語ってくれました。
学校法人嶋田学園 飯塚高等学校ホームページ
https://iizuka.ed.jp/
(取材日:2024年10月2日)
具体的な活動内容
残暑が残る秋晴れの空の下、黄金色に輝く田んぼで、こどもたちの元気な声が響きます。この日は、九電送配とオイスカが共催する「米づくりプロジェクト」の第2回目。親子連れとオイスカの海外研修生が一緒になり、稲刈りに挑戦しました。
参加者たちは期待に胸を膨らませ、まず、オイスカの担当者から稲刈りの基本を学び、稲が乾燥・精米される過程の説明に耳を傾けます。バスで圃場に移動後、カマの使い方を習い、いよいよ稲刈り開始。大人もこどもも最初は戸惑いながらも、次第にコツを掴み楽しんでいました。「これほど手間をかけてお米が食卓に届くことを実感した」と感想を語る参加者もいました。
作業後はセンターに戻り、新米で炊いたごはんと味噌汁を味わいました。自分たちで握ったおにぎりを頬張り、お米本来の甘さと旨味に笑顔があふれます。さらに、昼食後にはオイスカ研修生による音楽の出し物や、自国で目指す仕事を語るプレゼンテーションも実施し、参加者はその熱意と異文化交流の意義深さに感銘を受け、農業の大切さに気づき、感謝の気持ちが芽生えた一日を過ごしました。
参加者の声
去年も参加したという親子は、「今年も稲刈りが楽しみで友達と一緒に来ました」「こどもたちが一生懸命稲を刈っている姿を見ると、普段の生活では得られない貴重な経験ができていると実感します」と笑顔で語ってくれました。
また、初めて参加した親子は、「手作業で稲を刈るのは思っていたよりも大変でしたが、こどもたちが真剣に取り組んでいる姿を見て、とても良い経験になったと思います。今日は家族でこの体験を思い出しながら、夕食を楽しむつもりです」と満足そうに話していました。
オイスカ西日本研修センターの廣瀬所長は、「今年は11カ国から研修生が参加し、国際的な交流も深まっています。農業を通して異文化との触れ合いも楽しんでほしい」と話し、参加者に国際的なつながりを意識してもらう機会にもなりました。
これからのこと
このプロジェクトは10年近く協働事業として取り組まれています。食と農業の大切さを直接感じることができる貴重なイベントとして、多くの参加者に感動を与えてきました。今後もこのような取り組みを継続し、次世代に食の大切さや自然との共生を伝える場として広げていく計画です。
九州電力送配電株式会社ホームページ
https://www.kyuden.co.jp/td_index.html
公益財団法人 オイスカ 西日本研修センターホームページ
https://oisca.org/nishinippon-tc/
(取材日:2024年9月28日)
活動の背景
UR香椎若葉団地では、少子高齢化が進行していく中で、ひとり暮らしの高齢者の増加など、地域のつながりが弱くなってきており、世代間のつながりを再構築していくことが課題となっていました。
こうした状況を受け、2014年に福岡女子大学、UR九州支社が包括協定を締結し、地域住民や自治会と連携できるようになり、大学生が団地に居住して地域での新しい活動を生み出すなど、様々な取り組みを3者で行ってきた延長上に、新しい取り組みとして『わかぼん』が実現しました。
具体的な活動内容
『わかぼん』の空間は、「本とアートでつながる」をテーマに、URと福岡女子大学の国際文理学部環境科学科の若竹雅宏先生とが協力して設計し、集会所の改修を行い、居心地の良い空間を実現しています。住民が快適に過ごせる「わかぼん」が誕生しました。
『わかぼん』には、住民やUR職員から寄贈された1,200冊以上の本が並び、継続的な本の受け入れ体制を作っています。また、イベントでは「団地の祭り」や「七夕飾りつくり」の他、多世代が交流できる機会をつくっており、ふらっと寄りたくなる場づくりを目指しています。
2024年9月28日に開催された「団地秋祭り『わかぼん』2周年記念行事」では、告知ポスター作りや、当日の設営、イベント発表、縁日までのすべてを、住民と大学生の手作りで実現しました。大勢のこどもや大人が『わかぼん』に訪れ、地域全体が活気に包まれました。
このようなイベントや活動を通じて、UR香椎若葉団地は、「住民同士が顔を合わせ、助け合う関係づくりやつながりを強くする」という目標に着実に近づいています。
参加者の声
(高木暢智自治会長)
「最初は集まる場が必要だと感じたのがきっかけでした。今では月に4回ほど開館し、こどもたちが集まり、宿題を持ってきて勉強する姿も見られます。『わかぼん』カフェの運営など、住民の生活を支える活動も積極的に行いたい。これからも、誰でも気軽に訪れ、自由に過ごせる場として発展させていきたいです」
(若竹雅宏先生/公立大学法人福岡女子大学 国際文理学部環境科学科)
「学生たちはフィールドワークを通じて社会とのつながりを学びました。こうした実体験が、彼らの成長にとって非常に有益な学びとなっています。また、地域の方々との対話や協力を通じて、持続可能なコミュニティづくりの難しさや重要性を深く理解することができたようです」
(URの中村直寿さん)
「このプロジェクトでは、住民、自治会、大学との密な連携が鍵でした。単なるインフラ提供ではなく、地域全体で持続可能な運営を目指す取り組みを今後も続けていきます」
(参加した学生)
「住民と協力して空間を設計することで、『わかぼん』がただの場所ではなく、人々がつながる空間になることを実感しました」
(春に就職した元学生主要メンバー)
「このプロジェクトに参加して一番良かったことは、住民や管理者の声を直接聞くことで、現実と理想の違いを理解できたことです。今後も多くの意見を反映しながら、コミュニティづくりに貢献したいと思います」
これからのこと
「今後、UR香椎若葉団地の『わかぼん』は、住民が自然に関わりたくなるような、こどもたちも積極的に参加し成長できる場づくりを目指し、住民主体の運営を進め、地域全体の文化・交流の拠点として、多世代がつながるよう育てていきたい」と自治会長は考えています。
(取材日:2024年9月26日)