具体的な活動内容
毎月第三土曜日の16時から開催される「キッチン小春ちゃん」では、偶数月のフードパントリーと奇数月の会食イベントを展開しています。夏休みなどの長期休暇中には、地域食堂も開催しています。さらに、学びを取り入れた特別企画も実施しており、香春町青少年育成町民会議と共催した「スーパー巻き寿司大会」では、こどもたちと地域の人々が一体となって長い巻き寿司を作り上げ、会場が大いに盛り上がったそうです。
取材当日は、「親子で楽しむマナー講座」と題し、創立メンバーの竹原裕美さんを講師に迎えて特別企画が開催されました。15時30分頃、会場の香春町地域福祉センター香泉荘には、調理スタッフ10名を含む約30名のボランティアが集結し、着々と準備を進めていきました。17時近くになると、親子連れや高齢者など約70名の参加者が来場しました。
「親子で楽しむマナー講座」では、カレーライス、豚の角煮、唐揚げ、デザートのケーキを味わいながら、食事の大切さと作法を学びました。竹原講師の「今日は特別な日。みんなで楽しく食事のマナーを学びましょう」という言葉に、こどもたちは目を輝かせて聞き入っていました。会場のあちこちでは、「皿を汚さないように食べるのは難しいね」「ケーキの包み紙、上手にはがせたよ」といった温かな親子の会話が弾みます。小さなこどもたちから大人まで、真剣な表情で挑戦する姿が微笑ましく、印象的でした。参加者は、帰り際、用意されたおみやげを笑顔で受け取り、「また来たい」という声を残して会場を後にしました。
こども食堂の運営は、こどもは無料、大人は任意の寄付制の参加費と、行政からの補助金、企業からの寄付で賄われ、地域に根差した温かな取り組みとして、着実に発展を続けています。
活動の背景
社会福祉協議会に寄せられる子育ての相談の深刻さに心を痛めた中山敏幸さんと元市役所職員の丸田宏幸さんは、「地域全体で子育てを支えたい」という強い思いから、7年前、教育関係者やスクールソーシャルワーカーなど、志を同じくする約10名と共に「キッチン小春ちゃん」を立ち上げました。
世界各国を飛び回った商社マン時代の経験から、地域のつながりの大切さを痛感していた中山代表は、「人口1万人を切る香春町だからこそ、地域の絆が何より大切です。生活環境が異なっても、ここに来るこどもたち全員が楽しく過ごせる場所にしたい」と熱い思いを語ります。
こども食堂として始まったこの取り組みは、今ではこどもから高齢者まで、誰もが気軽に立ち寄れる温かな地域の居場所として、着実に根付いています。
参加者の声
(参加したこども)
「楽しかった!お腹いっぱいになった」
「おみやげがうれしい!」
(保護者)
「友達に誘われて初めて参加しました。こんな豪華な食事でびっくりしました!マナーのお話がためになりました」
「保育園からチラシをもらって、来られる時は結構来ていますね。最初はパントリーでした。こどもも楽しみにしていますし、香泉荘で開催されているから参加しやすいです」
(調理ボランティア)
「月に1~2回参加していますが、楽しいですよ!」
(中山代表)
「地域の方から“なにか手伝いたい。ボランティアをしたいけど、チャンスがないからできない。だから、こういうチャンスがあれば手伝えるから嬉しい”という声をいただきます」
これからのこと
こども食堂としての活動に加え、高齢者も含めた「地域食堂」としての展開を始めています。中山代表は、「こどもだけじゃなくて、大人も集まる場所がなにかできないかな」という地域の声に応え、すでに地域食堂を3回開催。これからは、こどもも大人も気軽に集まれる第3の居場所づくりを目指し、防災をテーマにした企画なども検討しながら、世代を超えた交流の場として、さらなる発展を計画しています。
(取材日:2025年1月15日)
具体的な活動内容
「こどもの台所」の最大の特徴は、こどもたちが主体となり、料理体験を通じて自立性を育てることです。約10名の地域ボランティアと一緒に簡単な家庭料理を作りながら、食材の使い方や基本的な料理スキルを学びます。
取材の日は、クラウドファンディングの寄付によって提供されたはかた地鶏と県産米を使い、地域の特産品についても知識を深めました。こどもたちは年齢に応じて、おかず班、ごはん班、味噌汁班に分かれ、チキンのパン粉焼き、ナポリタン、味噌汁といったメニューを調理していきます。味噌汁はひとりずつ自分が好きな具材を入れ個性豊かな一品に仕上げ、お米もひとりずつ洗米し炊飯ジャーで炊きました。異なる学校から集まったこどもたちは、料理をする力を身につけるだけでなく、コミュニケーションをとりながら一緒に作り上げる体験をすることで、お互いを尊重する対人スキルも育まれていきます。
「こどもたちが家で安全に料理を作れるようになることこそ、私たちの支援の最終目標です。そのため、実際の家庭を想定し、5人前程度の料理を作る練習をしています」と代表の石田さん。「こどもの台所」ならではのこだわりが、活動の中に息づいています。
活動の背景
この活動の起点は、10年前の設立時に遡ります。「地域社会に住む大人たちとの交流が少ないこどもたちのために、食育を通じた育成の場を作りたい」という代表の石田恭子さんの熱い思いから、設立から2年後に「こどもの台所」をスタートさせます。石田さんは「大人が育てるだけではなく、こどもが大人を救う社会を作りたい、こどもたちが主体的に関わり、知識を共有する場を増やしたい」と話します。こどもたちの言動や行動をひとりの人間として認め、相互に救われるスタイルを大切にしたいと考えています。
石田さんの情熱は地域の農家や企業の心を動かし、寄付を受ける仕組みを作り上げています。そして、経済的な貧困に関わらず、「見えない貧困」に目を向ける活動の必要性を訴えています。
参加者の声
(調理したこども)
「自分の手で料理を作れたことは嬉しい体験でした」
「他のこどもと一緒に作業をするのが楽しかった」
(調理ボランティア)
「毎回、私たちも楽しみにしています」
「こどもたちは、料理が出来上がったときや配膳のときもよく動いてくれるんですよ」
(地域の人)
「めちゃめちゃ美味しいです」
「家でも料理や食事の支度を進んでやってくれるようになって助かっています」
これからのこと
「こどもの台所」とは別に、月1回、振る舞いに重点を置いた「おせっかい食堂」も運営している石田さん。「私たちのこども食堂だと1食分しか提供できないので、地域全体をこども食堂化する構想を描いています」と話します。地域の食堂が運営に参加するという大規模ネットワークの実現を目指し、現在、12店舗が参加予定です。要である資金を募り、地域食堂に分配される仕組みが制度化されるように動いていくそうです。
「こどもまんなか社会」に向けて
石田さんは、こどもまんなか社会では、こどもたちの行動や言動を認めることが大切だと考えています。「大人がこどもたちを一方的に支援するのではなく、こどもたち自身が大人を助ける機会を作ることで、自己肯定感も育まれ、結果として地域全体が支え合う強いコミュニティができるのでは」と話してくれました。
子育て応援隊にじいろ
インスタグラム
https://www.instagram.com/nijiiro.childcare/
ホームページ
https://www.2jiiro-7irolabo.com/
(取材日:2024年12月15日/更新:2025年3月5日)
具体的な活動内容
いろりこども食堂では、毎週水曜日の昼間と金曜日の夜に手作りの温かい食事を提供しています。「食べるだけでなく、ここで新しい経験をしてほしい」という代表の辻さんの思いから、月1回の竹細工やポン菓子づくりといった体験型イベントが行われています。
また、取材日は、以前この地域でこども食堂を営んでいた方が、手作りのおでんを差し入れてくれました。小学生や高校生も参加し、炊き立てのご飯を80個近い海苔巻きおにぎりにして提供。「みんなで一緒に作ったから、一層おいしいね!」という声も聞かれ、和やかな雰囲気に包まれました。こうした活動を通じて、多くの地域住民との対話が生まれる場となっています。
さらに、直方市で特定非営利活動法人mixjamが主催する、商店街での仕事体験プロジェクトでは、こどもたちが商品を準備し、販売を通じて経済活動を体験することができます。取材した当日、小学4年生の男の子が、次の日曜日に予定されているせんべいの販売に向けて、「どんな味付けが一番おいしいかな?」と、何度もせんべいの味付けの試作を重ねる姿が印象的でした。辻さんは「自分のお店を持つというのは、こどもたちにとって大きな挑戦です」と話します。
活動の背景
辻さんは、「いろりこども食堂は、古民家の再生から始まりました。最初は『居場所を作る』という小さな目標でしたが、今では地域の課題解決に向けた大きな活動になっています」と語ります。
活動を始めたきっかけは、保育士としての経験から得た「こどもたちが学びながら安心して過ごせる場所が必要だ」という思いでした。「学校や家庭以外にも、ホッとできる『第三の居場所』があれば、こどもたちの未来がもっと豊かになる」と話します。そして、いろりこども食堂を通じて、その思いを実現したいと考えています。
参加者の声
(保護者)
「ここに来ると、こどもが本当に楽しそうにしています。安心して預けられる場所があるというのは、親としてありがたいです。特に、食事が美味しくて、親子ともに癒されます」
(小学4年生 男の子)
「今度の日曜日に、商店街でせんべいを販売する予定です。今日はその練習で、どんな味付けがいいか考えながら作りました。おいしいって言ってもらえるように、頑張りたいです!」
(高校1年生ボランティア)
「地域のこどもたちと関わる中で、自分自身も学ぶことがたくさんありました。いろりこども食堂は、私にとっても大切な場所です。ここでの経験を通じて、将来はこどもたちの役に立つ仕事がしたいと思うようになりました」
これからのこと
辻さんは、これまで続けてきた「こどもの居場所」の取り組みを起点に、すべてのこどもたちが自分らしく安心して育つ環境を作るための仕組みをさらに充実させていきます。
例えば、フリースクール・おやこひろば・訪問支援・アウトリーチとしてのプレーパーク、そして、コーディネーターの養成など、多岐にわたる活動で、こどもたちが学び成長できる機会を提供したいと考えています。
「こどもまんなか社会」に向けて
辻さんは、「すべてのこどもたちが、安心して生きていける社会になったらいいなというのは、私がずっと思い続けていることです。経済的な困難や病気・障がいの有無がこどもたちの人生の妨げにならないような、こどもたちを真ん中に据えた社会を実現するために、大人全体が一丸となって支え合う必要があると感じています。『子育てはみんなでシェアする』という意識が広がり、得意な人がその力を発揮してこどもを支える仕組みができれば、より良い社会になると信じています」と話してくれました。
こどもの居場所いろり
ホームページ
https://mixjam-inclusive.com/
インスタグラム
https://www.instagram.com/mixjam.irori/
(取材日:2024年12月13日)
具体的な活動内容
土曜クラブのこども食堂は、こども(高校生まで)無料・おとな300円で、メインメニュー(カレー、ハヤシライス、スパゲッティ等が週替わり)と9種類の副菜を提供しています。 様々な企業や団体、個人の方から提供されるお野菜は金曜日にいただきに回り、土曜日の朝にスタッフが届いた食材をみながら、その場で9種類の副菜メニューを決めていきます。食材の提供などはもちろんのこと、70代後半から80代がメインという地域ボランティアのみなさんの熱意があって、成り立っている食堂です。
こども食堂のボランティアスタッフは、毎回10名程度。高齢者の女性が多いのですが、時には男性や若者、障がいのある若者、また、以前この食堂に来ていたこどもがお手伝いにきてくれています。 多い時で120食ほどを準備しており、こどもたちやファミリー、高齢者の方も参加し、栄養バランスが良い食事を楽しむとともに、世代を超えた賑やかな地域交流の場になっています。
活動の背景
「こどもの貧困問題に関心を持っていたので、経済的に厳しい家庭のこどもや孤食になっているこどもに食の支援を、また学校外の学習にお金をかけられない家庭のこどもにも学習支援をやっていきたい」と考えて土曜クラブを立ち上げた下川さん。
また、2020年度から、土曜クラブの他に小学生・中学生向けの学習支援「Hoshizoraクラブ」もスタート。基本的には一人ひとりが自主的に学習するスタイルで、小学生は宿題を中心に、中学生はそれぞれの計画に沿って学習する場を提供しています。市民や退職した教員、高校生、高校の時に学習支援に来てくれていた若者が就職して教えにきてくれており、学習だけではなく、多様な人間関係が生まれるこどもたちの居場所にもなっています。
また、第三土曜日は、読み聞かせボランティアの方も参加してくれています。こどもたちの体験を広げるために、創作活動などの体験の場も提供しています。
参加者の声
(代表の下川さん)
「毎週、メインメニューと9種類の副菜の食事を継続していくことは大変ですが、ボランティアスタッフの熱意と提供いただける食材のおかげで成り立っており、『毎週土曜日は栄養のバランスがとれる!』と嬉しい声も多くいただき、自慢のメニューです」
(参加したこども)
「ここに来ると知らない人も優しい声をかけてくれてうれしい!」
「毎週、メニューが楽しみ!」
「優しい味付けで、野菜が食べられるようになった!」
これからのこと
下川さんは「ボランティアスタッフの高齢化で後継者の育成という課題はありますが、子育ては、学校・家庭だけではできない。やっぱり地域が支援していかないといけない。この少子化の時代に一人ひとりのこどもたちを大事に育てていかないと次の社会は担えない。特に八女のような農村部では、持続可能な社会づくりのために人づくりがとても大切なので、できることをやりながら、こどもを支援する文化(共育)を広めていきたい。私たちおとなも、こどもたちと同じように、学校や職場、家庭以外の地域の居場所が大切なんです」と熱く語ってくれました。
土曜クラブ(こども食堂&学習支援)Facebookページ
https://www.facebook.com/doyoclub
(取材日:2024年12月7日)
具体的な活動内容
「はやめカッパ食堂」は、毎月第四土曜日の11時30分から13時まで、駛馬地区公民館で開催されています。メインメニューは、カレーです。こどもは無料、大人は200円で提供されています。
料理教室の先生でもある汐待さんを中心にボランティアの皆さんが隠し味にこだわって作った特製カレーをお目当てに、駛馬地区に住むファミリー、こどもたち、公民館のスマホ教室に参加されたシニアの方々が続々と集まってきます。11月23日は、総勢145名が参加していました。
毎回、幅広い年代の方々が集まるので、世代間交流が生まれる大切な場所になっています。
活動の背景
地域の熱い思いから、平成31年にスタートした「はやめカッパ食堂」でしたが、新型コロナ感染拡大やその後の大牟田市の大水害で会場の施設が水に浸かってしまい、休止を余儀なくされました。
しかし、地域の方々の情熱の火は消えることはなく、その後新型コロナの感染拡大が収束に向かい、会場となる施設も目途が立ち、休止から約1年半後の令和4年5月に再スタートすることができました。
食堂の運営は、約20名のボランティアを中心に行われ、食材提供先、資金確保、NPO法人との連携が確立し、現在まで活動が続けられています。
参加者の声
「はやめカッパ食堂」の事務局長である北川さんは、こどもたちがやってくるたびに一人一人の顔をちゃんと見て、声をかけ、名前を呼び、グータッチで交流します。それをずっと続けているからこそ、こどもたちとの信頼関係が生まれており、「人が好き!」という駛馬地区の温かさを感じられる居場所になっています。
北川さんは、「駛馬地区は、高齢者が多い地域。その中でこの食堂は小さなこどもたちから、学生、そして高齢者のつながりを育む大切な世代間交流の場となっています」と語ります。
(参加したこどもの声)
「カレーがおいしかった!」
(ボランティアさんの声)
「来るのが楽しみです。おいしいカレーを作り続けたいです」
これからのこと
「はやめカッパ食堂」の皆さんは、「食堂だけではなく、何かをプラスすることで付加価値を高めたい」と考えており、おなかいっぱいになった後は、アンビシャス広場やスポーツチャンバラなど、こどもたちが安心して遊べる居場所を提供しています。
駛馬地区のボランティアの皆さんは、こどもたちや高齢者を見守る仕組みづくりを確立しようと、熱い思いを持って、これからも地域の方々との「つながり・絆」を築いていきます。
(取材日:2024年11月23日)
具体的な活動内容
「地域コミュニティセンターこころん」は、「おひさま食堂」「おひさまカフェ」をはじめ、サークル活動やよろず相談など、地域の人々に寄り添う取り組みを行っています。
2017年10月から始まった「おひさま食堂」は、月2回、第二・第四金曜日の夕暮れ時に開かれ、地域福祉協力員として活躍するベテランママたちが、地域の農家や企業、フードバンク福岡から提供された食材を活用し、毎回約150食の温かな食事を用意しています。
取材当日、カラフルな風船を目印に、こどもたちが友だちと、あるいは一人で、また、家族連れや高齢の方が続々と坂道を上ってきました。会場は笑顔と和やかな空気に包まれていきます。
『ちょっとした楽しみを持ち帰ってほしい』―そう願いながら、ボランティア全員で折った新聞紙のおみやげバッグに詰めたのは、食品や小さな贈り物。帰り際には、調理リーダーの松尾さんとじゃんけんを楽しみ、一人一人に声をかけながらそのバッグを手渡しました。
ここには「支援する側・される側」という関係はありません。年間2,000名を超える人々が集っていることこそ、地域との確かなつながりの証といえるでしょう。「困ったことがあったら、おひさま食堂の時に聞いたらいいやん!」とこども同士で話す姿からも、この場が、さりげなく、でも確実に、地域のセーフティネットとしての役割を果たしているのがわかります。
活動の背景
代表の原貴代子さんは、地域の様々な課題に直面する中で、「行政だけで対応するには限界がある」と気づき、制度だけに頼らない助け合い(愛)の必要性を強く感じていました。そこで、「この街に長く暮らし、街のことをよく知っている、人生の大先輩たちと一緒に地域づくりを進めることこそが、高齢者、障がい者、孤立するこどもたちの問題解決につながる」と確信したのです。核家族化が進む今、子育て世代を支える場所として、おじいちゃん、おばあちゃんの知恵や経験を活かした温かい居場所を!この思いが活動の原点となりました。
参加者の声
(小学生参加者)
「ここに来ると、おばあちゃんたちが優しく話しかけてくれて楽しい!」
「いつも優しくしてくれるから安心します」
(地域の保護者)
「おみやげバッグをこどもがとても楽しみにしていて、本当に助かっています」
「コロナで食事が大変なとき、フードパントリーで助けられました」
(調理リーダー松尾さん)
「元気だからボランティアをしてるんじゃないとよ。ボランティアをするから自分たちが元気になっとるとよ」
(ボランティア参加者)
「ここに来るのを楽しみにしています」
これからのこと
今後、「地域コミュニティセンターこころん」は、こどもたちが安心して過ごす「第三の居場所」づくりにさらに力を入れていきます。B&G財団の助成金を活用し、篠栗町のくすのき公園に新しい施設を建設予定です。地域のボランティアとともに、家庭や学校だけでは得づらい多世代交流の中で、こどもたちが安心して成長できる「頼れる場所」になることを目指しています。
「こどもまんなか社会」に向けて
代表の原さんは、「こどもたちが、現実逃避してゲーム依存になり孤立してしまう問題からの脱却には、おじいちゃんおばあちゃんたちの知恵や昔遊び、物に頼らない生活が大切」と強く語り、人とのつながりの重要性を訴えています。
理事の谷本さんは、「人の子も自分の子もみんなかわいい。自分のこどもが大きくなった時には周りにいるこどもたちと一緒に社会をつくることになるから、自分の子だけ良くていいなんてない。この未来を担うこどもたち全員が幸せでないと意味がない」と強調しています。
そして原さんは、「活動の根底にあるのは、セーフティネット。『いのちの大切さ』です。命を軽んじるような言葉をこどもたちが自ら発言することが本当にないように、少しでも発信していきたい」と話してくれました。
NPO法人地域コミュニティセンターこころんホームページ
https://cocoron-sasaguri.org/
(取材日:2024年11月22日)
具体的な活動内容
「こども食堂みずほまち」は、2016年8月に設立され、福岡県下でも初期から活動している先駆的なこども食堂の一つです。このこども食堂は、西松建設の独身寮の、リビングと厨房を活動の拠点とし、毎月第二土曜日、月に1回、地域のこどもたちや家族に、毎回工夫を凝らした温かい食事と安心して過ごせる居場所を提供しています。
活動は、認定 NPO 法人チャイルドケアセンターと西松建設の社員を含む約20 名のボランティアにより、安定した運営ができています。
ふくおか筑紫フードバンクや地域の農家から届く野菜や米などの新鮮な食材を、ボランティアスタッフが賞味期限ごとに仕分け、西松建設から寄贈された冷蔵・冷凍設備や食材保管設備で適切に管理することで、食品ロス削減にも貢献しています。
取材当日は、料理が得意な地域の方々が朝9 時前から準備を始め、こどもたちのために心を込めた「三色丼」と「お吸い物」「コロッケ」を振る舞いました。
食事のあとは、こどもたちが高校生ボランティアと、ゲーム対戦や工作、塗り絵、絵本の読み聞かせなどを楽しみます。こどもたちのリクエストに応えて思いっきり遊び、世代を超えた交流の中で、こどももおとなも笑顔あふれる時間を過ごしていました。
活動の背景
「こども食堂みずほまち」の代表である大谷さん(認定NPO 法人チャイルドケアセンター代表理事)がこども食堂を始めたきっかけは、教育現場で目の当たりにしたこどもの貧困と孤独でした。「こどもの格差は深刻な社会問題」という強い思いに駆られ決断します。それが20 年前。まだ「こども食堂」という概念がなかった頃、大谷さんは地域の公民館を借りて、週1 回の無料食堂を立ち上げました。当初は小さな規模からのスタートでしたが、地元農家や有志の協力を得て、栄養バランスの取れた温かな食事を提供することができました。
活動を続ける中で、「困難な家庭のこどもだけの場所では意味がない。誰もが気軽に集えるこども食堂を作りたい」と地域全体がこどもたちを見守り、支える共生の場を目指すようになります。
そんな思いを知った、当時、西松建設九州支社副支社長だった松川さんが心を動かされて、会社に掛け合います。そして活動拠点となる寮や冷凍庫、食材保管庫の提供、そして電気代の支援を行い、今のこども食堂が実現しました。
参加者の声
(高校生ボランティア)
「小さな子と遊ぶのが楽しい」
(参加したこども)
「お兄ちゃんと対戦ゲームができて嬉しい」
(保護者)
「こどもも居心地が良いようで、食事した後もずっと遊んでいます。助かっています」
(「こども食堂みずほまち」代表 大谷さん)
「こども食堂には、こどもたちにとって当たり前に保障されるべき豊かなこども時代の姿があります。そして、こども食堂がその豊かなこどもの『居場所』として機能していることを感じています。地域や企業の皆さまのご協力のおかげで、8年間という長い間、活動を続けることができました。本当に感謝しています」
(西松建設の松川さん)
「CSR 活動を大切に、地域のこどもたちの未来を直接支えられることに参加するボランティアも喜んでいます。こどもたちの笑顔が私たちの活動の原動力です」
これからのこと
大谷さんは、「こども食堂は、単に食事を提供する場ではなく、こどもたちが安心して過ごせる『居場所』でありたいと考えています。これからもこどもたちの声をしっかりと取り入れ、彼らが主体的に関われる場づくりを目指していきます。また、西松建設様をはじめ、応援してくださる企業や団体・個人の皆さま、そして地域全体と支え合いながら、持続可能な居場所づくりに取り組んでいきたいと思います」と話してくれました。
「こどもまんなか社会」に向けて
大谷さんは、「こどもたちが自由に意見を述べられる場をつくり、地域全体でその成長をあたたかく見守り、支え合えるような居場所を守っていきたい」と語っています。
認定NPO法人チャイルドケアセンター
ホームページ
http://npo-ccc.net/
インスタグラム
https://www.instagram.com/child.care.center1
(取材日:2024年11月16日)
活動の背景
UR香椎若葉団地では、少子高齢化が進行していく中で、ひとり暮らしの高齢者の増加など、地域のつながりが弱くなってきており、世代間のつながりを再構築していくことが課題となっていました。
こうした状況を受け、2014年に福岡女子大学、UR九州支社が包括協定を締結し、地域住民や自治会と連携できるようになり、大学生が団地に居住して地域での新しい活動を生み出すなど、様々な取り組みを3者で行ってきた延長上に、新しい取り組みとして『わかぼん』が実現しました。
具体的な活動内容
『わかぼん』の空間は、「本とアートでつながる」をテーマに、URと福岡女子大学の国際文理学部環境科学科の若竹雅宏先生とが協力して設計し、集会所の改修を行い、居心地の良い空間を実現しています。住民が快適に過ごせる「わかぼん」が誕生しました。
『わかぼん』には、住民やUR職員から寄贈された1,200冊以上の本が並び、継続的な本の受け入れ体制を作っています。また、イベントでは「団地の祭り」や「七夕飾りつくり」の他、多世代が交流できる機会をつくっており、ふらっと寄りたくなる場づくりを目指しています。
2024年9月28日に開催された「団地秋祭り『わかぼん』2周年記念行事」では、告知ポスター作りや、当日の設営、イベント発表、縁日までのすべてを、住民と大学生の手作りで実現しました。大勢のこどもや大人が『わかぼん』に訪れ、地域全体が活気に包まれました。
このようなイベントや活動を通じて、UR香椎若葉団地は、「住民同士が顔を合わせ、助け合う関係づくりやつながりを強くする」という目標に着実に近づいています。
参加者の声
(高木暢智自治会長)
「最初は集まる場が必要だと感じたのがきっかけでした。今では月に4回ほど開館し、こどもたちが集まり、宿題を持ってきて勉強する姿も見られます。『わかぼん』カフェの運営など、住民の生活を支える活動も積極的に行いたい。これからも、誰でも気軽に訪れ、自由に過ごせる場として発展させていきたいです」
(若竹雅宏先生/公立大学法人福岡女子大学 国際文理学部環境科学科)
「学生たちはフィールドワークを通じて社会とのつながりを学びました。こうした実体験が、彼らの成長にとって非常に有益な学びとなっています。また、地域の方々との対話や協力を通じて、持続可能なコミュニティづくりの難しさや重要性を深く理解することができたようです」
(URの中村直寿さん)
「このプロジェクトでは、住民、自治会、大学との密な連携が鍵でした。単なるインフラ提供ではなく、地域全体で持続可能な運営を目指す取り組みを今後も続けていきます」
(参加した学生)
「住民と協力して空間を設計することで、『わかぼん』がただの場所ではなく、人々がつながる空間になることを実感しました」
(春に就職した元学生主要メンバー)
「このプロジェクトに参加して一番良かったことは、住民や管理者の声を直接聞くことで、現実と理想の違いを理解できたことです。今後も多くの意見を反映しながら、コミュニティづくりに貢献したいと思います」
これからのこと
「今後、UR香椎若葉団地の『わかぼん』は、住民が自然に関わりたくなるような、こどもたちも積極的に参加し成長できる場づくりを目指し、住民主体の運営を進め、地域全体の文化・交流の拠点として、多世代がつながるよう育てていきたい」と自治会長は考えています。
(取材日:2024年9月26日)