具体的な活動内容
取材した2025年10月4日、北九州市立もじ少年自然の家では、午前と午後に分かれて二つの活動が行われました。午前中は、福岡県青少年育成県民会議が主催する「こども体験活動プランナー養成講座」の実践研修、午後はASOKEN主催による、親子で山や海を体験する自然活動が実施されました。
「こども体験活動プランナー養成講座」実践研修
午前中は、こどもの体験活動の場の担い手を養成する「こども体験活動プランナー養成講座」の実習が行われました。講師は、あそびとまなび研究所(ASOKEN)の「けいさん(秋葉代表)」です。
活動前の準備や心構え、プランナー養成講座の座学研修での学びを踏まえながら、当日の活動の目的や流れを確認します。その後、実際の活動現場である森や海を歩き、磯場や里山の地形、風の流れ、活動エリア、機材やスタッフ配置などの最終確認を行いました。
活動時間は大きく潮の引く時間帯に合わせて設定しており、下見の際とは自然の表情が大きく変わることも想定されています。
けいさんは、次のように説明します。
「時間帯により、海岸や岩場の様子は変わります。天候や雷、風向きなども予報をしっかり押さえておく必要があります」
「海辺では、こどもたち自身が、周りの様子を観察しながら、自分で考え、行動できるように導いてください」
「必ずフィールドに出る前にはKYT(危険予知トレーニング)を行います。『危ないからダメ』と禁止するのではなく、危険を避けるための最低限の指示を出して、答えを教えません。『何が危ないのか』『どうすれば安全か』をこども自身が予測できるように、一緒に考えていくのです」と説明し、単なる安全管理にとどまらず、こどもを見守る際のポイントや、現場での具体的な声の掛け方が受講者たちに共有されました。
この養成講座は、ASOKENが長年重視してきた「支援者を育てることが、こどもを支える第一歩」という理念を実践する場にもなっています。








門司の海辺での自然体験
午後は、親子活動の時間です。KYT(危険予知トレーニング)のワークと服装点検をしっかり行い、安全への意識を高めてから活動がスタートしました。
舞台となった「もじの海」は、里山が里海に直接つながる、互いにとても豊かなフィールドです。山には草花や食べられる野草、昆虫も多く、海にもたくさんの生き物が生息しています。
「森に出逢いに行こう。森って何からできているかな?」 という声かけを合図にこどもたちは森に入り、木や草を観察し、落ち葉をめくってはバッタやカニを見つけて(森にもカニはいるんです)追いかけるなど、それぞれのペースで自然との触れ合いを楽しみました。
その後、海岸に移動して「磯場探検」が始まりました。ここで、けいさんは「海って何からできてるの? みんなで確かめに行こう!」 「今日は“見つけること”よりも、“感じること”を大事にしてください」とこどもたちに波の音や風の強さ、水の流れ、砂の感触など、五感すべてを使って自然を感じ取るよう促しました。こどもたちは岩の下をのぞき込んで、小さなカニやヤドカリを見つけては、次々と歓喜の声を上げていました。
活動後、けいさんは「同じ場所に何度も来ると、毎回違うことに気づきます。長い時間過ごすと、どんどん変化していくことにも気づきます。今日は短い時間だったけど、次はもっとゆっくり遊べるといいね。またいっしょにあそぼう!」とこどもたちに語りかけました。
ASOKENは、こどもたちが自然の中でのびのびと遊び、学ぶことを通して、「自ら考え、行動する力」を育む体験機会を補償し続けています。
※補償:「なければならないのに、ないものを、補い償う」の意味










活動の背景
あそびとまなび研究所(ASOKEN)の活動は、代表であるけいさんの「完全アウェイ」な環境での子育てや「地域にこども会がないなら、自分たちでつくろう!」という思いから始めました。
第一子の出産を機に北九州市へ移り住んだけいさんは、地域の自然の豊かさに驚く一方で、こどもたちがそこから離れて過ごしている現実に気づきました。 「すぐそばに海も川も山もあるのに、こどもたちが安全に過ごせる環境は少ないのが現状です。フィールドを知り尽くし、安全を確保しながらのびのび遊ぶことは、親子の単独行動では難しく、相当の経験とスキルが必要だと感じました」と語ります。
もう一つ、けいさんが抱いた強い危機感は「地域のつながりの希薄化」です。
「私がこどもの頃は、こども会があり、異年齢で一年中遊んでいました。しかし今は、親世代でさえ『こども会』を知らず、こどもたちが地域で交わる場は激減しています。『一緒に遊び、けんかもするけど、仲直りしては助け合う』。そんな人間関係の経験が失われているのです」
だからこそ、けいさんは自然体験を「特別なイベント」ではなく、「まちの文化」として根づかせようとしています。
ASOKENの活動は“地域の学びの再生”や“世代のつながり”の修復、そしてこどもたちの生きる力を取り戻す試みとして高く評価され、SDGs岩佐賞(環境部門)やこども家庭庁「こどもまんなかアワード」の受賞へとつながりました。
参加者の声
(参加した小学生)
「(磯場でカニを見つけて興奮しながら)こんな小さな岩の下にいるなんて、知らなかった。海が宝箱みたい」
(参加した親)
「普段、外遊びをする機会があまりないので、こうして自然の中で自由に過ごす時間があるのはうれしいです」
「こどもが自分で考えて動いている姿を見るのが新鮮でした」
「危ないこともあるけれど、ちゃんと見守れば大丈夫だと感じました。大人の関わり方も学びになりました」
(こども体験プランナー養成講座受講者)
「自然の中でこどもたちが自分で考え、工夫する姿に感動した」
「指導者レクチャーで学んだ言葉かけが、こどもたちの行動に変化をもたらしているのを感じました」
これからのこと
ASOKENは、『こどもたちを支えるには、こどもだけでなく、大人も変わらなければいけない。また、子育てはひとりでしてはいけない。(ひとりで抱え込まないことが大切)』という考えのもと、活動を続けています。さまざまな地域での拠点作りや、学生たちの活動支援、ボランティア養成や安全研修など、あらゆる機会を通じて、こどもたちの「出会い」と「遊び」の小さなきっかけを作り続けています。
フィールドは、もじの海や里山、若松の竹林、玄海の森や貯水池、紫川の水環境館など、北九州市内の豊かな自然地全体です。これらの場所を行き来しながら、こどもたちが自然のつながりを感じられるよう、通年での活動を行っています。
「一度行って終わりではなく、同じ場所に季節を変えて何度も行くことが大事です。そうすることでこども達は変化に気づき、支える大人も地域の中で育っていくのです」
市内のあちこちで行われている「みちくさ」という活動も、その一つです。
こどもたちを真ん中に、みんなであそび、まなび、たべる。そうして「くらし」がつながるまちづくりへ。ASOKENはこれからも北九州の自然と地域を結び、こどもと大人がともに育ち合う“共育ち”を支えていきます。
「こどもまんなか社会」に向けて
けいさんは、「こどもたちは、自分で感じて、考えて、動くことができる力を持っています。だからこそ私たち大人は、目は離さないけれど、介入しすぎずに見守ることが大切です。危険を予知し、仲間と備え、こどもたちと活動を一つずつ積み上げていきたい」と語ります。
そして、「“こどもをまんなかに置く”ということは、決して特別なことではなく、日々の暮らしの中で少しずつ関わり合うこと」だと言います。
「こどもたちはみんな、天才! 見ていて全く飽きないし、彼らからこそ活動の次の展開が次々と生み出されてきます。『あれもやりたい、これもやってみよう』が溢れているんです。大人が無理に導いたり操作したりすると、面白くなくなります。フィールドを見極め、環境を整えさえすれば、大人はこどもたちを見守り、ただ、帯同すればよいのです」
その言葉どおり、けいさんの周りでは、こども・大人・地域が一緒に育ち合う風景が少しずつ広がっています。
特定非営利活動法人あそびとまなび研究所公式サイト
(取材日:2025年10月4日)







































































































