福岡県こどもまんなかポータルサイト

身近な自然の中で遊び・学ぶ機会を提供

具体的な活動内容

取材した2025年10月4日、北九州市立もじ少年自然の家では、午前と午後に分かれて二つの活動が行われました。午前中は、福岡県青少年育成県民会議が主催する「こども体験活動プランナー養成講座」の実践研修、午後はASOKEN主催による、親子で山や海を体験する自然活動が実施されました。

「こども体験活動プランナー養成講座」実践研修
午前中は、こどもの体験活動の場の担い手を養成する「こども体験活動プランナー養成講座」の実習が行われました。講師は、あそびとまなび研究所(ASOKEN)の「けいさん(秋葉代表)」です。
活動前の準備や心構え、プランナー養成講座の座学研修での学びを踏まえながら、当日の活動の目的や流れを確認します。その後、実際の活動現場である森や海を歩き、磯場や里山の地形、風の流れ、活動エリア、機材やスタッフ配置などの最終確認を行いました。
活動時間は大きく潮の引く時間帯に合わせて設定しており、下見の際とは自然の表情が大きく変わることも想定されています。
けいさんは、次のように説明します。
「時間帯により、海岸や岩場の様子は変わります。天候や雷、風向きなども予報をしっかり押さえておく必要があります」
「海辺では、こどもたち自身が、周りの様子を観察しながら、自分で考え、行動できるように導いてください」
「必ずフィールドに出る前にはKYT(危険予知トレーニング)を行います。『危ないからダメ』と禁止するのではなく、危険を避けるための最低限の指示を出して、答えを教えません。『何が危ないのか』『どうすれば安全か』をこども自身が予測できるように、一緒に考えていくのです」と説明し、単なる安全管理にとどまらず、こどもを見守る際のポイントや、現場での具体的な声の掛け方が受講者たちに共有されました。

この養成講座は、ASOKENが長年重視してきた「支援者を育てることが、こどもを支える第一歩」という理念を実践する場にもなっています。

門司の海辺での自然体験
午後は、親子活動の時間です。KYT(危険予知トレーニング)のワークと服装点検をしっかり行い、安全への意識を高めてから活動がスタートしました。
舞台となった「もじの海」は、里山が里海に直接つながる、互いにとても豊かなフィールドです。山には草花や食べられる野草、昆虫も多く、海にもたくさんの生き物が生息しています。
「森に出逢いに行こう。森って何からできているかな?」 という声かけを合図にこどもたちは森に入り、木や草を観察し、落ち葉をめくってはバッタやカニを見つけて(森にもカニはいるんです)追いかけるなど、それぞれのペースで自然との触れ合いを楽しみました。
その後、海岸に移動して「磯場探検」が始まりました。ここで、けいさんは「海って何からできてるの? みんなで確かめに行こう!」 「今日は“見つけること”よりも、“感じること”を大事にしてください」とこどもたちに波の音や風の強さ、水の流れ、砂の感触など、五感すべてを使って自然を感じ取るよう促しました。こどもたちは岩の下をのぞき込んで、小さなカニやヤドカリを見つけては、次々と歓喜の声を上げていました。

活動後、けいさんは「同じ場所に何度も来ると、毎回違うことに気づきます。長い時間過ごすと、どんどん変化していくことにも気づきます。今日は短い時間だったけど、次はもっとゆっくり遊べるといいね。またいっしょにあそぼう!」とこどもたちに語りかけました。
ASOKENは、こどもたちが自然の中でのびのびと遊び、学ぶことを通して、「自ら考え、行動する力」を育む体験機会を補償し続けています。
※補償:「なければならないのに、ないものを、補い償う」の意味

活動の背景

あそびとまなび研究所(ASOKEN)の活動は、代表であるけいさんの「完全アウェイ」な環境での子育てや「地域にこども会がないなら、自分たちでつくろう!」という思いから始めました。
第一子の出産を機に北九州市へ移り住んだけいさんは、地域の自然の豊かさに驚く一方で、こどもたちがそこから離れて過ごしている現実に気づきました。 「すぐそばに海も川も山もあるのに、こどもたちが安全に過ごせる環境は少ないのが現状です。フィールドを知り尽くし、安全を確保しながらのびのび遊ぶことは、親子の単独行動では難しく、相当の経験とスキルが必要だと感じました」と語ります。
もう一つ、けいさんが抱いた強い危機感は「地域のつながりの希薄化」です。
「私がこどもの頃は、こども会があり、異年齢で一年中遊んでいました。しかし今は、親世代でさえ『こども会』を知らず、こどもたちが地域で交わる場は激減しています。『一緒に遊び、けんかもするけど、仲直りしては助け合う』。そんな人間関係の経験が失われているのです」
だからこそ、けいさんは自然体験を「特別なイベント」ではなく、「まちの文化」として根づかせようとしています。

ASOKENの活動は“地域の学びの再生”や“世代のつながり”の修復、そしてこどもたちの生きる力を取り戻す試みとして高く評価され、SDGs岩佐賞(環境部門)やこども家庭庁「こどもまんなかアワード」の受賞へとつながりました。

参加者の声

(参加した小学生)
「(磯場でカニを見つけて興奮しながら)こんな小さな岩の下にいるなんて、知らなかった。海が宝箱みたい」

(参加した親)
「普段、外遊びをする機会があまりないので、こうして自然の中で自由に過ごす時間があるのはうれしいです」

「こどもが自分で考えて動いている姿を見るのが新鮮でした」

「危ないこともあるけれど、ちゃんと見守れば大丈夫だと感じました。大人の関わり方も学びになりました」

(こども体験プランナー養成講座受講者)
「自然の中でこどもたちが自分で考え、工夫する姿に感動した」

「指導者レクチャーで学んだ言葉かけが、こどもたちの行動に変化をもたらしているのを感じました」

これからのこと

ASOKENは、『こどもたちを支えるには、こどもだけでなく、大人も変わらなければいけない。また、子育てはひとりでしてはいけない。(ひとりで抱え込まないことが大切)』という考えのもと、活動を続けています。さまざまな地域での拠点作りや、学生たちの活動支援、ボランティア養成や安全研修など、あらゆる機会を通じて、こどもたちの「出会い」と「遊び」の小さなきっかけを作り続けています。
フィールドは、もじの海や里山、若松の竹林、玄海の森や貯水池、紫川の水環境館など、北九州市内の豊かな自然地全体です。これらの場所を行き来しながら、こどもたちが自然のつながりを感じられるよう、通年での活動を行っています。
「一度行って終わりではなく、同じ場所に季節を変えて何度も行くことが大事です。そうすることでこども達は変化に気づき、支える大人も地域の中で育っていくのです」
市内のあちこちで行われている「みちくさ」という活動も、その一つです。

こどもたちを真ん中に、みんなであそび、まなび、たべる。そうして「くらし」がつながるまちづくりへ。ASOKENはこれからも北九州の自然と地域を結び、こどもと大人がともに育ち合う“共育ち”を支えていきます。

「こどもまんなか社会」に向けて

けいさんは、「こどもたちは、自分で感じて、考えて、動くことができる力を持っています。だからこそ私たち大人は、目は離さないけれど、介入しすぎずに見守ることが大切です。危険を予知し、仲間と備え、こどもたちと活動を一つずつ積み上げていきたい」と語ります。
そして、「“こどもをまんなかに置く”ということは、決して特別なことではなく、日々の暮らしの中で少しずつ関わり合うこと」だと言います。
「こどもたちはみんな、天才! 見ていて全く飽きないし、彼らからこそ活動の次の展開が次々と生み出されてきます。『あれもやりたい、これもやってみよう』が溢れているんです。大人が無理に導いたり操作したりすると、面白くなくなります。フィールドを見極め、環境を整えさえすれば、大人はこどもたちを見守り、ただ、帯同すればよいのです」
その言葉どおり、けいさんの周りでは、こども・大人・地域が一緒に育ち合う風景が少しずつ広がっています。

特定非営利活動法人あそびとまなび研究所公式サイト

(取材日:2025年10月4日)

赤ちゃんと一緒に参加できる九響のクラシック演奏会

具体的な活動内容

「0歳からのオーケストラ」活動は、九州交響楽団が主催する「九響マタニティコンサート」として、福岡では年に1回、午前と午後に開催されています。0歳児から入場でき、未就学児の入場制限を設けていないのが大きな特徴です。

『妊婦さんや小さなお子さまを育てるママ・パパに、日々の忙しさから少し離れ、心も体も満たされるひとときを届けたい』そんな想いを込めて選曲されたプログラムは、クラシックの名曲を中心に構成されています。

オーケストラならではの豊かな響きと、生演奏ならではの臨場感に包まれる特別な体験として開催しています。

会場内では、乳幼児連れの来場者を前提とした鑑賞環境と運営体制を整えられています。例えば、ベビーカーのまま着席できる専用席や、客席前方には赤ちゃんが寝転んだり、ハイハイできるフリースペースを演奏者の目の前に設置しています。また、授乳スペース、おむつ交換台、ミルクコーナーなどを会場内に特設し、育児中の保護者が安心して滞在できる環境を整備しています。

福岡公演では、福岡県助産師会の協力により助産師相談コーナーを設置し、専門家へ直接相談できる機会も設けています。

演奏中の入退場は自由とし、赤ちゃんの泣き声や、音楽に反応したこどもの行動にも対応できる運営を行っています。そのため、実際公演では、こどもたちが音楽に合わせて手をたたいたり、旋律に反応して声を出したりするなど、それぞれの感覚で音楽を受け止めている姿が見られます。

フリースペースでは、演奏者の近くまで赤ちゃんがハイハイで移動する場面もあり、会場全体が、こどもや家族の存在を前提とした穏やかな雰囲気に包まれています。

その他、九州交響楽団では、3歳以上を対象とした「オーケストラ for キッズ」や、0歳から入場でき、多様な来場者に配慮した「夏休みリラックスコンサート」も開催しています。

活動の背景

九州交響楽団事務局で広報を担当するリシェツキさんは、「クラシックの演奏会は未就学のお子様が入場できない公演がほとんどなんです」と語ります。

九州交響楽団の主催公演でも、多くの演奏会では未就学児の入場を制限しています。そのため、出産や育児をきっかけに演奏会から離れてしまうケースが多くなる現状があるといいます。

一方で、胎児は妊娠5か月頃から音を感じ取ると言われ、小さな頃から生の音楽に触れる機会の重要性も感じ、「赤ちゃんや妊婦さんも一緒に参加できる演奏会を実現できないか、という思いがありました」と話しています。

この公演を始めたのはコロナ禍の時期でした。リシェツキさんは、当時は三密を避ける状況の中で、マタニティコンサートの開催は簡単な判断ではなかったと振り返ります。それでも、「安心して来場していただける環境を整えることができれば成立するのではないか」と考えたそうです。

会場内の感染予防対策を徹底することに加え、演奏中の出入りを自由とし、ベビーカー席やおむつ替えスペース、授乳スペースをロビーに特設するなど、運営面での工夫を重ねました。また、来場者に対して事前に公演の趣旨や鑑賞環境を丁寧に伝えることも重視したといいます。

さらに、コロナ禍で助産師による対面相談の機会が減少していたことから、福岡県助産師会の協力を得て相談コーナーを設置し、「音楽を楽しむ場であると同時に、妊娠中や育児中の不安を少しでも軽くできる場所になればという思いもありました」と話しています。

参加者の声

(参加した保護者)
「演奏が始まるなり、目頭が熱くなり自分で驚きました。子育てに追われる中で、ゆっくり演奏会に行くなんてできていなかったのだと、ハッとしました。今回は友人に誘ってもらい、3歳のこどもと来場しましたが、こどもが落ち着かなくても気兼ねしなくてよく、演奏会の曲の長さもこどもが飽きない長さで、結果として、大人が安心して演奏を聞くことができました」

(「こどもを連れて行けるコンサートがあると知りチケットを買い、今日をとても楽しみにしていました。こどもが泣き出したらどうしよう、ミルクの時間とかぶったらどうしようと不安がある中、会場につくと沢山のスタッフさんや、同じ子連れのファミリーがいてホッとしました。ミルクのお湯があったり、お尻拭きがあったり、フォトスペースがあったり、初めてのコンサートでも安心して楽しむことができました」

「今回、3度目の参加です。お腹の中でこちらのオーケストラを聴いた息子が、もう2歳半になりました。息子は入場してすぐヴァイオリンが気になったようで、お姉さんが近くで演奏してくださったことがよほど嬉しかったのか、帰宅後も楽しそうに演奏の真似をしていました。母である私も、ラストの花のワルツを聴いて幸せな気持ちで胸がいっぱいになり、涙が溢れました。生のオーケストラをこんなにも間近で感じることができ、感謝しています。こどもたちが成長してママやパパになるとき、おばあちゃんとして一緒に聴きに行けたらいいなという夢ができました。本当に楽しく幸せな時間をありがとうございました」

(妊娠中の参加者)
「目の前で聴く演奏は、胸に響き、感動しました。名曲の数々に心温まり、心からコンサートを楽しむことができました。これから生まれてくるこどもと親子で素敵な人生を歩んでいきます。ありがとうございました」

(楽団員)
「普段の演奏会とは違う雰囲気ですが、音楽をより身近に感じてもらえる機会になっています」

これからのこと

この取り組みは、赤ちゃんや妊産婦、育児中の家庭が安心して参加できる演奏会として定着しており、毎回満席となるなど高い関心が寄せられています。参加者からは、開催回数の拡充を望む声も寄せられています。

一方でオーケストラ公演は、チケット収入のみで経費を賄うことが難しい構造にあり、本公演も例外ではありません。まずは、年1回の開催を着実に継続し、持続可能な形で発展させていくことが重要だと考えています。

こうした取り組みを継続していくことは、こどもたちが文化や芸術に触れる機会を地域の中で確保していくことにもつながります。

今後は、地域との連携を一層深めながら、より多くの方にこの機会を届けられるよう、開催機会の拡充についても検討したいと話しています。

「こどもまんなか社会」に向けて

リシェツキさんは、「音楽は、『感じること』そのものを大切にできる世界です」と語ります。

歌うことやリズムに触れる体験は、こどもたちの感性や他者への共感、物事を豊かに受け止める力を育む土台となります。だからこそ、小さな頃から音楽に触れ、自由に感じることのできる環境を社会全体で守り、育てていくことが大切だと考えています。

こどもたちの感性や好奇心が大切にされ、文化や芸術に自然に触れながら育つことができる「こどもまんなか社会」にするために、胎児期から音楽に触れることができる機会や、成長段階に応じて生の音楽に出会える機会を地域の中に広げていくことに取り組んでいきます。

公益財団法人 九州交響楽団 公式ホームページ

(取材日:2026年2月16日)

「ホンモノ体験」+「言葉の活動」がこどもたちの『未来を切り開くチカラ』を育てる

具体的な活動内容

こどもたちが自ら「知る」「触れる」「学ぶ」ことを楽しめる場を届けることを目指し、各分野のプロから直接学び本物の体験ができるプログラム「きらめきスタジオ」と、言葉を通して書くこと・話すことが好きになる「言葉のチカラプロジェクト」に取り組んでいます。

「きらめきスタジオ」
4歳から中学生までを対象に、普段体験する機会が少ない多彩な体験プログラムを提供しています。音楽、アート、スポーツ、伝統文化などそれぞれの分野のプロフェッショナルが講師となり、こどもたちの「好き」や「やってみたい」という好奇心を刺激します。現在まで、12,000人以上のこどもたちが体験しています。

「言葉のチカラプロジェクト」
10歳から中学生までを対象とした、書くチカラ・話すチカラを磨くプロジェクト、
 ①言葉のチカラ教室(基礎)
 ②キッズリポーター養成講座(応用)
 ③フリーペーパー「キッズプレス」の取材・撮影・執筆(実践) 
 の3ステップを実施しています。
プロのライターやアナウンサーから記事の作成やインタビューの方法を学び、こども自身が記者として地元の企業経営者や伝統工芸を取材・撮影を行った内容を記事にします。こどもの文章に可能な限り大人が介入しないことで、自分の言葉で表現する喜びと自信を育んでいます。また、地域との関わりを深めることで郷土愛を育てています。

活動の背景

活動の原点は、代表理事・大木聡美さん自身の「子育て」の経験にあります。
第一子出産後、ママ友がいなかった大木さんは、地域の公民館へ足を運びました。そこで出会ったのは、「車がないから出かけられない」「話し相手がいない」と、悩みを抱える多くのお母さんたちでした。「この状況をなんとかしたい」 そう強く感じた大木さんは、映像やイベント業界で働くママ友たちに声をかけ、2009年にママサークルを立ち上げました。
近くのカフェなどで絵本の読み聞かせからスタートし、5年間活動した後、「こどもたちの体験の場を作りたい。こどもたちに好きなこと・やりたいことを見つけてほしい」という想いが芽生え、2014年に特定非営利活動法人Wing-Wingを設立し、現在に至ります。

参加者の声

「きらめきスタジオ」
(参加者/5年生)
「僕はもともと花が大好きでした。きらめきスタジオで華道を体験して、とても楽しかったので、2回も参加しました!参加した時に、お母さんと一緒に華道の先生からいろいろな話を聞き、面白かったので、体験後、華道を習い始めました」

(5年生保護者)
「こどもは花にふれることがもともと好きで、体験の中で花にふれる機会があるので、こどもがやりたいことにすごくマッチしています。自分だけで体験の準備をするのは、すごく大変ですが、体験の機会を与えてもらってとても助かっています。私が花を買って帰って『ちょっとアレンジして』というと、娘が『いいよ~』と言って、気軽にアレンジしてくれます」

「言葉のチカラプロジェクト」
(参加者/6年生)
「キッズリポーターとして、展覧会に行ったり、サッカー選手の取材に行ったりいろんな体験ができてとっても楽しいです!もともと記事を書くことが苦手でしたが、だんだん書けるようになり、キッズプレスがとても楽しいです」

(6年生保護者)
「5年生、6年生となると自由な時間が限られてくるし、思春期にも入ってくるので、私(親)以外の大人の人に話を聞く機会があると嬉しいなと思って参加しました。何かを書くということ自体には、最初そんなに乗り気ではなかったのですが、速く書けるようになって、学校でも『ノートの取り方が上手い、まとめるのが上手くなったね!』と学校の先生に褒められるそうです」

(新本菜月さん/書くチカラ講師)
「国語的な指導の前に、まずは“文章を好きになってもらうこと”“自信をつけてあげること”に主軸をおいてこどもたちと関わっています。文章を書くのが苦手な子には、まずはその子が話したことを講師が書きとめ、『どの順番で書こうか?』と一緒に考えながら進めていきます。こどもだからといって手取り足取り教えすぎず、一人ひとりに向き合うことを心がけています。

どれだけAIが発達しても、将来、進学や就職などの場面では“自分の言葉“が必要になります。今すぐ完璧に書けなくても、長い目で見て、ここでの体験を糧に将来自分の想いを表現できるようになってくれればうれしいです」

これからのこと

こどもたちが地域に見守られて育っていることを実感できるよう、こどもたちと地域をつなぐ活動、例えば、こどもたちが住む街や校区の企業、地域のこどもが知っている秘密基地のような場所へ取材に行くことを計画しています。また、福岡市以外のエリアにも活動を広げ、より多くのこどもたちの自立を育てていくことを目指しています。

「こどもまんなか社会」に向けて

これからの時代をつくっていくこどもたちを中心に、安心して育てられる環境をつくりたいーー。そんな思いを、大木さんは語ります。「日々の生活や仕事に追われがちな中でも、地域、企業、行政が手を取り合っていくことが大切だと思います。こどもたちを見守りながら、成長につながる活動をこれからも続けていきたいです。」と話してくれました。

特定非営利活動法人Wing-Wingホームページ

(取材日2025年7月12日・8月20日)

こどもと学生がともにつくる居場所~北九州市立大学「まるっと食堂」

具体的な活動内容

「こどものまち」は、こどもたちが考えたまちで、こどもたちが働き、給料を受け取り、買い物や納税を体験するイベントです。仕事や店の運営など、まちのさまざまな役割をこどもたち自身が担い、運営主体である大学生が実現に向けてサポートしています。

「まるっと食堂」は、小倉北区のコワーキングスペースで月1回、第1水曜日の17時から開かれています。地域の小学生を中心に、毎回20人前後が参加しています。こどもは100円、大人は300円の参加費で、学生たちが準備した料理を楽しんだ後、体験活動の時間を過ごします。

「まるっと食堂」は、北九州市立大学の1、2年生約15人で運営しています。週1回のミーティングでは、次回の食事メニューや体験イベントの内容などを話し合うほか、買い出し、調理、当日の進行などの役割分担も決めます。

開催の1週間ほど前には、メニューを保護者に知らせたり、アレルギー情報を確認したりと、事前準備も進めます。開催が近づくと食材の買い出しを行い、当日は調理や配膳、片付けまでを担当します。食事の時間にはこどもたちと同じテーブルを囲み、会話をしたり、体験活動や工作を一緒に行ったりします。

食事のメニューは季節に合わせて工夫しています。例えば1月には手巻き寿司をビュッフェ形式にし、こどもたちが自分で具材を選んで巻けるようにしています。七夕の時期にはちらし寿司、秋には炊き込みご飯など、その季節ならではの食事が並びます。

食事後の体験活動では、警察と協力して交通安全について学ぶ企画や、大学のジェンダーや多様性に関するプロジェクトと連携した活動など、こどもたちが社会のさまざまなテーマに触れる機会を提供しています。

また、季節に合わせた工作も取り入れ、ペットボトルキャップとスポンジを使った紫陽花のスタンプづくりや、毛糸を使ったクリスマスリースづくりなど、学生たちがアイデアを出し合って企画しています。

活動の背景

北九州市立大学の地域共生教育センター「421Lab.」では、学生が地域課題に取り組むプロジェクトが複数展開されており、その中の一つに地域のこども食堂を支援する「子ども食堂応援プロジェクト」があります。

文学部人間関係学科2年生の麻生絵稟さんと舩津晴香さんは、大学1年生のときに、421Lab.の「子ども食堂応援プロジェクト」に参加し、地域のこども食堂でボランティアとして活動していました。その後、「応援するだけでなく、自分たちでこども食堂をやってみよう」と、当時の2年生から学生主体のこども食堂の立ち上げの声掛けがあり、2024年9月から「まるっと食堂」のメンバーとして参加することになりました。

麻生さんは、「大学生だからこそできる活動だと思いました。ほかではなかなかできない体験だと感じたんです」 と活動を始めた理由を話します。

参加者の声

(こどもの声)
「大学生のお兄さんやお姉さんがいて楽しい。雰囲気がいい」
「100円でお腹いっぱいになる」
「沢山遊ぶことができて嬉しい」
「ごはんがめっちゃうまい」
「おかわりできてうれしい!」

(麻生さん)
「自分が考えたイベント(クリスマスの毛糸ツリー作りなど)にこどもたちが熱中し、裏面までデコレーションするなど、自分たちで遊びを発展させてくれたことが嬉しいです。
私達はこどもたちに学びや遊びの機会を提供している側ですが、こどもたちが受け身になるのではなく積極的に取り組んでくれるからこそ良い時間が生まれるのだと気づくことができました」

(舩津さん)
「開催の日は人が集まるので大丈夫ですが、事前の準備が一番大変です。段取りを決めたり、人と調整したり、メニューを考えたり、やらないといけないことが多いです。30~40人分の料理を作るときは献立を考えながら進めており、味つけが合っているか戸惑うこともありましたが、回数を重ねるにつれ上手に作ることができるようになりました。こどもたちに美味しいと言っていただき、励みになります」

これからのこと

大学の活動は世代交代が早いため、立ち上げた先輩の思いを受け継ぎながら、活動を続けていくことが大切だと考えています。経験や運営のノウハウを次の学生へ引き継ぎ、同じことを繰り返すだけでなく、現在は小学生を中心としている参加対象を中学生まで広げるなど、活動の発展も考えています。

二人は、ミーティングや当日の準備、運営を後輩と一緒に進めることで、少しずつ役割や経験を共有していくことを意識しているといいます。

地域のこども食堂を支援する活動と、学生が主体となって運営する「まるっと食堂」の両方を続けながら、こどもと若者が関わり続ける場を地域に広げていきたいと考えています。

「こどもまんなか社会」に向けて

こどもと若者が同じ場所で時間を過ごし、互いの目線で関わることが大切だと二人は考えており、そうした積み重ねがこどもまんなか社会につながるのではないかと話しています。

まるっと食堂 Instagram

(取材日:2026年2月4日)

こどもがつくる「まち」で社会を学ぶ~大学生が支える「こどものまち in 福岡大学」

具体的な活動内容

「こどものまち」は、こどもたちが考えたまちで、こどもたちが働き、給料を受け取り、買い物や納税を体験するイベントです。仕事や店の運営など、まちのさまざまな役割をこどもたち自身が担い、運営主体である大学生が実現に向けてサポートしています。

こども会議(準備)

イベントの準備は、開催の約4か月前から始まります。こどもスタッフとして集まったこどもたち約20人が、毎週1回の「こども会議」に参加し、まちの仕組みを話し合いながら決めていきます。

会議では、まちの名前や通貨、店の内容、商品の値段などをこどもたち自身が考えます。材料費を計算しながら価格を決める場面もあり、「この値段では赤字になる」といった意見も出ていました。こどもたちは学校も学年も異なりますが、会議や準備を重ねる中で少しずつ打ち解け、意見を出し合ったり役割分担をするなど、協力してまちづくりを進めていました。

会議はこどもたちにやりたいことを決めてもらい、そのアイデアが実現できるよう、大学生が準備や調整をする形で進めていきます。

イベント(当日)

イベント当日は、ハローワーク、銀行、税務署、役所などの「こどものまち」がつくられ、約200人のこどもが参加しました。参加するこどもたちは最初にハローワークで掲示してある求人票から仕事を探します。仕事を選んだら、30分単位で働き、独自通貨「ハピ」で給料を受け取ると、そこから10%の税金を納める仕組みを体験します。集まった税金は役所で働くこどもたちの給料として使われます。

会場には、こどもたちが企画したカフェやかき氷店、ゲーム、スライムづくりなどの店も並び、店員も客もすべてこどもたちが担いました。

このようなこどもたちの主体的な活動の裏では、大学生による手厚いサポートがありました。全体の進行計画の作成から、会場の確保、各店舗で使う膨大な材料や備品の調達まで、イベントを成功させるためのあらゆる準備を学生たちが担いました。

また、参加者を募集する際には、SNSでの発信に加え、地域の小児科などを訪ねてチラシを置くなど、大学生自らが足を運びながら参加者を集めました。

活動の背景

この取り組みを始めたのは、KODOMO LABOを設立した井家上(いけがみ)知花さんです。井家上さんは、長崎県で行われている「ながさkids☆town」に約10年間関わってきた経験から、こどもたちが社会の仕組みを体験する楽しさや学びを、福岡でも広げたいと考えました。

「こどもたちの声を取り入れながら、時間をかけてまちづくりをしたい」という思いから、この活動を立ち上げました。

その後、福岡大学の「社会連携プロジェクト」に応募し、学生が主体で行うプロジェクトとして初めて採択されたことをきっかけに活動がスタートしました。活動当初は2人でしたが、現在は約20人の大学生が運営に関わっています。

参加者の声

(こどもスタッフ)
「自分たちの考えたことが形になるのが楽しい」

(参加したこどもたち)
「自分たちでまちのことを考えるのが楽しかったです。また参加したい」

「税金を納めないといけないことがわかり勉強になりました」

(大学生)
「こどもたちは主体的に意見を出してくれて、自分たちが持っていなかった視点に気づかされることも多いです。一緒に準備をしていく中で、こちらも学ぶことが多いと感じています」

これからのこと

現在の活動を支える「社会連携プロジェクト」の支援は、2026年までとなっているため今後も継続できるよう、大学内でのサークル化や企業協賛などを模索しています。

最近、代表が創設者の井家上さんから村上潤さんにバトンタッチされました。村上さんは、「来年度もイベントの開催を予定しています。今後も活動を続けながら、より多くのこどもたちが参加できる場にしていきたい」と意気込みを語っています。

「こどもまんなか社会」に向けて

井家上さんは、「こどもたちがもっと自由に過ごせる社会になってほしいです。今は遊べる場所も少なく、こどもたちがのびのび過ごせる環境が減っていると感じます。こどもたちが楽しみながら社会を知り、いろいろなことに挑戦できる場が増えることで、社会全体も豊かになるのではないかと思います」と話しています。

こどものまちin福岡大学

(取材日:2026年2月21日)

親元を離れて学ぶ4泊5日~岡垣町の通学合宿

具体的な活動内容

「夢の体験塾」は、岡垣町内の小学4〜6年生を対象とした通学合宿で、年に3回程度開催しています。参加者は1回あたり14〜15人ほどで、今年度は波津にある宿泊施設「若潮荘」で日曜日から木曜日までの4泊5日を過ごしました。こどもたちは異なる学校や学年の仲間と一緒に生活します。親元を離れ、共同生活を送りながら学校へ通うことが、この活動の特徴の一つです。

朝は早く起きて布団を片付け、掃除をし、ラジオ体操を行います。その後、朝食をとり、学校の準備をしてそれぞれの小学校へ登校します。放課後になると町のバスが各学校を回り、こどもたちを迎えに行き、若潮荘に戻るのは午後4時ごろになります。そこから、こどもたちが主体となって夕食づくりが始まります。調理班や掃除班などの役割に分かれ、班ごとに協力して食事の準備を進めます。料理に慣れていないこどもも多く、玉ねぎを切っては「目が痛い!」と洗面所に駆け込む子もいるそうです。しかし、自分たちで作った食事は格別で、みんなで食卓を囲む時間は合宿の醍醐味となっています。

生活の基本ルールは「自分のことは自分でする」です。洗濯は自分で洗濯機を回し、干して、たたみます。掃除や部屋の片づけ、学校の準備もすべて自分たちで行います。携帯電話やゲーム、漫画、お菓子などの持ち込みは一切禁止で、必要最低限の生活用品だけで過ごします。

また、自然に触れる体験も大切にしています。朝には宿舎の目の前に広がる波津海岸へ散歩に行き、海から昇る朝日を見ることもあります。最初は起きられなかったこどもたちも、最終日になると「朝日を見に行こう」と自分から起きてくるようになるそうです。

こうした体験を通して、こどもたちは仲間と協力することや、自分で生活することの大切さを少しずつ学んでいきます。

活動の背景

「夢の体験塾」は、平成9年(1997年)に、「地域のこどもは地域で育てる」という思いのもと始まりました。当時は宿泊施設がなく、テントでのキャンプからスタートしましたが、その後、宿泊施設が整備され、現在の形の通学合宿へと発展してきました。

現在、通学合宿(「夢の体験塾」)の活動は、実行委員会25名で運営されています。その事務局長であり塾長の石田初江さんは、家庭環境や社会の変化により、こどもたちが生活体験をする機会が減っていると感じているといいます。「最近は、生活がとても便利になり、家で料理や洗濯などの家事をしたことがない子も少なくありません。だからこそ、この合宿では洗濯や食事づくりなど、日常のことを自分たちでやる経験を大切にしています」と話しています。

「夢の体験塾」は、すぐにこどもが変わることを期待するのではなく、共同生活の中で仲間と協力しながら生活することで、自ら気づき、自分でできることを増やしていくことを目的として、約30年にわたり続けられています。

参加者の声

こどもたちの様子(関係者)
「最初は友達ができるか、親と離れて大丈夫かと不安そうな子が多いですが、最終日には『楽しかった』『また来たい』と笑顔で帰っていきます。」

「別れを惜しんで泣く子もいます。」

「夕食づくりが人気で、慣れない調理に苦戦しながらも、みんなで作ったご飯をおいしそうに食べています。」

運営スタッフ
「参加してすぐに劇的に変わるわけではありませんが、こどもたちの心の中に『やってみよう』という小さな芽が残ればいいと思っています」

これからのこと

「夢の体験塾」は、活動を支えるボランティアの高齢化や施設の老朽化などの課題もありますが、地域でこどもを育てる場としてこの活動を続けていくことが大切だと考えています。

今後は新しい場所や協力者を探しながら、次の世代へとつないでいきます。

「こどもまんなか社会」に向けて

こどもが主役となり、自分で考え行動する経験を大切にする活動が「夢の体験塾」ですが、地域の大人が見守りながら、こどもたちが挑戦できる環境をつくることが、こどもまんなか社会の実現につながると考えています。

(取材日:2026年2月3日)

「こどもの声なき声を聴く」こどもが心から安心して笑顔ですごせる居場所「たまりんば」

具体的な活動内容

食事を通じた居場所づくり
「たまりんば」は、2019年秋より、1週間に1度平日の夕方、地域の公民館で活動しており、こどもたちが一緒に食卓を囲む時間を大切にしています。活動当初は、こどもたちが自分で作るおにぎりと味噌汁でしたが、現在は、こどもたちのリクエストにも応えつつ、旬の食材や季節の行事を大切にしながら、数名のスタッフでメニューを考え、調理しています。代表の加藤典子さんは、「食事を提供すること自体が目的ではなく、一緒に過ごす時間を大切にしています」と話しています。

学習支援や体験活動
食事の提供にとどまらず、大学院生などによる学習支援や、多様な体験活動を行っていることも大きな特徴です。テスト前に勉強をしに来るこどももおり、分からないところを大学院生に確認しながら学んでいます。さらに、「うどん作り」や「そば打ち体験」、高校生バンドの卒業演奏会や影絵上映会などの体験活動を通して、こどもとおとなが自然に対等に交流しています。

「たまりんば」では、中学生以上のこどもの参加が多いのも特徴です。加藤さんは、「この年齢のこどもたちは、おとなや社会に対する不信感や拒否感をもっていることも少なくありません。しかし、『ナナメの関係』にある大学生・大学院生や利害関係のない第三者など、多様な人と接することで、人と関わる楽しさや喜びを感じ、生きる意欲や将来への希望を見出していくこどももいます」と話しています。

活動の背景

この取り組みの原点は、代表の加藤さんが図書館司書として働いていた頃の経験にあります。放課後や日中に図書館を訪れるこどもたちの中には、「どうせ何やってもできんっちゃん」「生きててもなんもいいことないし」「もう、透明人間になりたい」「ぼく、生きてていいのかな」と話すこどもたちが何人もいたそうです。一人ひとりの話をきいていると、それぞれにそう思わざるを得ない状況や環境があることに気づきました。こうした経験から、行動だけで判断するのではなく、その奥にある思いや状況に目を向ける関わりが必要だと感じ、児童福祉を学び直しました。そして、家庭でも学校でもない場所として、こどもたちが安心して立ち寄れる居場所づくりに取り組むようになりました。

「たまりんば」には、こどもたちを笑顔で迎え入れ、共に楽しく過ごせる時間を大切にしようとする心あたたかなスタッフがいます。

参加者の声

(参加しているこども)
「ここに来ると落ち着いて、のびのびしていられる」
「みんな顔見知りだから安心する。ここに来るとホッとする」
「大学生のお兄さん・お姉さんが勉強を教えてくれる。わからないって言ってもいいのがうれしい」
「ごはんが、おいしい」
「家ではあんまりしゃべらないけど、ここではしゃべれる」
「そば打ち体験やものづくりを一緒にやってみたら楽しかった」

(保護者)
「家と学校以外に、安心して過ごせる場所があるのはありがたいです」
「いろんな人と関わることができて、こどもにとっていい経験になっていると思います」
「無理に話させたりしないところが、こどもに合っていると感じます」

これからのこと

持続可能で安定した活動を続ける上での運営面の課題もあります。加藤さんは、「お米や野菜、食品の提供などさまざまな方々や企業、団体からご支援ご協力をいただいていますが、助成金頼みの自主事業のため、近年の物価の高騰や参加者の増加により、食材費や消耗品、配送の課題、人件費等運営費の確保は、喫緊の課題です。安定した財源の確保に向けて行政や関係者とも協議を重ねていきたいと思っています」と話しています。

また、今後は「たまりんば」に来ることができないこどもたちや家庭を対象としたアウトリーチでの食品支援、生活支援、また「たまりんば」での学習支援にも力を入れていき、今後もできることを一つずつ積み重ねながら、続けていきたいと考えています。

「こどもまんなか社会」に向けて

加藤さんは、「こどもまんなか社会の実現には、一人ひとりすべてのこどもたちの言動だけでなく、声なき声を聴く大人の感性が重要だと思います。こどもを相対評価しない、こどもにうそをつかない、ごまかさない、というわたしたち大人の在り方が、問われていると感じています」と語っています。そして、子育て支援団体のみならず、こどもに関わる多種多様な人々が、性別や年齢、立場を超えて、対等な立場でその出会いを共に楽しみ、笑って、幸せな時間を過ごすことが不可欠だと感じています。

特定非営利活動法人 こどもパートナーズHUGっこ

(取材日:2025年12月11日)

こどもが未来へ歩き出す力を支えるステップアップ塾 ライフアゲインの挑戦

具体的な活動内容

ステップアップ塾ライフアゲインでは、小学生から中学生までのこどもが毎週土曜日に集まり、高校生や大学生が講師としてマンツーマンで学習に取り組んでいます。こどもたちの力になりたいと参加を希望してくれたボランティアの学生講師たちが、どこでつまずいているのか、どう教えれば伝わるか、こどもたち一人ひとりのペースに寄り添い、宿題や教科書学習をサポートしています。独自の「ステップアップシート」を活用し、1週間・1か月・半年単位で自分の学びを見通す力も育てています。

また、学習後には毎回温かい食事を提供し、食と学びを一体的に支えることで、誰一人とりこぼさないよう、こどもの日常を継続的に見守る仕組みをつくっています。授業後には講師同士でミーティングを行い、こどもたちのその日の様子を共有しています。

この活動は「すべてのこどもたちが大切とされ、いつでも一歩をふみだせる社会へ」というビジョンのもと、食を起点にこどもたちの安心できる暮らしと学びを支えています。

活動の背景

ステップアップ塾の根底には、原田理事長の強い問題意識があります。理事長はかつて牧師として駅前での夜回り活動を続け、虐待や薬物問題など過酷な環境に置かれたこどもたちが、社会から孤立していく現場を目の当たりにしてきました。

そうした社会の課題に直面する中、食品ロスの現場で「捨てられる食品」と「社会から排除される人」の姿が重なって見えたことをきっかけに、食の支援を起点とした包括的支援が必要だと感じ、乳幼児期から青年期まで切れ目のない支援の一つとして、この学習支援の場が生まれました。

理事長自身も生きづらさを抱えていた時期に、決して見捨てずに寄り添ってくれた人たちの存在が、「こどもたちを見捨てない」という現在の活動の大きな原動力になっています。

参加者の声

(講師/高校生)
「自分もここに通っていた先輩に声をかけてもらって参加しました。生徒の“わかった”が見えた瞬間が一番うれしいです」
「生徒が問題を解けた瞬間に表情が変わるのを見ると、こちらもうれしくなります」

(教室長)
「ここは進学塾ではありません。成績が大幅に上がる保証はなくても、一問でも“できた”が増えるように寄り添っています。安心して過ごせる居場所にしたいと思っています」

(生徒)
「学校より落ち着いて勉強できます。ここに来ると頑張れる気がします」

(調理ボランティア)
「食事を楽しみに来てくれる子もいます。“おいしかった”の一言が励みになります」

これからのこと

原田理事長は、「乳幼児期から青年期まで支える取り組みをさらに強化し、地域全体でこどもを支える体制づくりを目指しています。『こどもの負の連鎖を断ち切る支援モデル』を北九州からつくり、他地域でも活用できる形にしたい」と語ります。

今後は周囲の地域や他団体との連携を深め、持続可能な支援体制の構築に取り組んでいきます。

「こどもまんなか社会」に向けて

原田理事長は「こどもは未来をつなげていく大きな希望」と話します。こどもを中心に据え、大人たちがその成長を力強く支える社会を目指しています。「どんな境遇にあってもこどもを取りこぼさない」——その理念のもとで行われる学びと食の支援が、地域全体の絆を取り戻し、地域全体でこどもを支える体制づくりの原動力になっています。

特定非営利活動法人 フードバンク北九州 ライフアゲインホームページ

(取材日:2025年10月18日)

未来を拓く九州の「ものづくり」魂~こどもたちと共に宇宙を目指すe-SETの挑戦~

具体的な活動内容

学校での講演会(年2回程度)
地元の小学校などからの依頼を受け、代表の當房(とうぼう)睦仁さんが講師となり、講演を実施しています。この取り組みは「企業による無償の宇宙教育」として、教育現場でも注目を集めており、こどもたちは、人工衛星が地元企業によって作られていることに驚きと関心を寄せています。

宇宙のものづくり体験(久留米市青少年科学館)
久留米市青少年科学館で開催された体験イベントでは、人工衛星にも使われる技術を題材に、工具を使ってネジを加工する工程を体験する「ネジ切り体験」が特に人気を集めていました。こどもたちにとっては、「難しそうだけど、やってみたらできた!」という成功体験になり、ものづくりの面白さと達成感を味わえる貴重な機会となっています。

九州大学との連携プロジェクトとキャリア教育
九州大学の学生サークル「プラネット」と連携し、人工衛星やロケット部品の開発プロジェクトとして、衛星の設計方法などを学生と共に考えています。

また、大学生や専門学校生を対象にした「職場訪問・職場見学」や「キャリア教育等の講師派遣」を参加費無料で実施し、若者にとって“宇宙産業に関わる入り口”となるような環境を整え、現場で活躍する技術者から話を聞ける貴重な機会にもなっています。

こども体験フェスティバル(2025年8月20日)
福岡県青少年育成県民会議主催の「こども体験フェスティバル」では、e-SETが人工衛星に使われるネジや素材をテーマにしたこどもたちが楽しめる体験ブースを出展しました。ネジの役割を学ぶクイズや、ネジ切りを体験したり、人工衛星に使われる実際の素材を手に取りながら、「どの素材が一番重い?」「磁石にくっつくのはどれ?」といったクイズに挑戦していました。こどもたちは普段経験できない宇宙のものづくりに触れ、とても楽しそうでした。


當房さんは、「ロケットや人工衛星に使われる部品は、久留米の中小企業によって作られています。つまり、“宇宙”と“久留米”はつながっているんです。ネジを削るという一見地味な体験が、こどもたちにとって『宇宙の入り口』になってほしい」と話しています。

e-SETは、このような“身近な宇宙”との出会いを仕掛けています。こどもたちは、体験を通じて宇宙を「遠いもの」ではなく、「自分も関われる世界」だと実感するきっかけになっています。

活動の背景

団体発足のきっかけは、代表である當房さんが、2007年に九州大学で受けた地域産業講演会でした。講演では、「大企業や研究機関でなくとも、地方の企業が宇宙を支える存在になれる」という内容が語られました。その可能性に心を動かされた當房さんは、地元のモノづくり企業に声をかけ、同年、任意団体としてe-SETを結成しました。

その後、九州大学の先生方との出会いを通じて、「知識を持つ大学」と「ものづくりが得意な中小企業」という互いの強みがうまく噛み合い、産学連携による実践的なプロジェクトが本格化していきます。

當房さんは、長年、ものづくりの現場で人材不足を痛感してきました。だからこそ、「九州に魅力的な産業をつくり、若者が地元に残る選択肢を提供したい」という強い思いを抱くようになります。この想いは、こども向けのイベントや学校での講演活動といった教育・啓発活動に込められています。「こどもたちが幼い頃から宇宙技術に触れることで、宇宙は特別ではなく、誰もが関われる分野であると感じてもらいたい」という當房さんの原体験と地元への想いが、現在のe-SETの活動を根底から支えています。

参加者の声

(こども体験フェスティバル参加者)
「面白かったけど難しかった」 
「アルミの削りかすが硬かった」
「難しかったけど、ネジのことが少しわかった」

(e-SETに参加している企業のひと)
「こどもたちに少しでも宇宙を身近に感じてほしい」

これからのこと

e-SETはこれからも、こどもたちに宇宙を「遠い夢」ではなく、「自分の未来に関わるリアルな世界」として感じてもらえる体験の場を広げていきます。
當房さんは、「『こうやって宇宙に関われるんだ』『地元からでも宇宙に近づけるんだ』と思ってもらえるよう、科学館や学校での体験イベントや講演会を継続したい」と語ります。とくに、ネジ切り体験や素材展示などを通じて、久留米と宇宙がつながっている実感を持ってもらいたいと考えています。

さらに、今後は、大学生や専門学校生と連携し、中高生が年齢の近い先輩と接点を持てるような機会づくりにも取り組む予定です。産学連携のプロジェクトにふれることで、こどもたちが自身の進路をよりリアルに描けるよう後押ししていきます。

「こどもまんなか社会」に向けて

e-SETが描く「こどもまんなか社会」とは、大人とこどもが共に関わり合い、学び合える社会です。當房さんは、「こどもの体験の場には、たいてい親がいます。だからこそ、大人も一緒に“やってみよう”と思える仕組みが大切です」と語ります。

多くの体験は、保護者の「こんな体験をさせたい」という思いから始まります。e-SETは、その働きかけがこどもの興味を引き出し、学びの芽を育てると考えています。

こどもたちが宇宙を「特別な世界」ではなく、自分の未来に関わるものとしてとらえ、自らの意志で進路を選んでいけること。當房さんは、そんな社会の実現こそが「こどもまんなか」だと信じています。

NPO法人 円陣スペースエンジニアリングチームインスタグラム

(取材日:2025年6月10日・8月20日)

「こどもの遊びを取り戻せ!PLAY FUKUOKAが取り組む未来を育む中間支援の取組」

具体的な活動内容

一般社団法人PLAY FUKUOKAは、こどもたちの「遊び」が大切にされる社会を目指し、中間支援団体として「遊びを伝える」「人を育てる」「場をつくる」という3つの柱で活動しています。

遊びを伝える」活動では、保護者や保育者に向けた外遊び講座や研修を実施し、こどもの主体性を尊重するプレイワークの考え方を伝えています。ミニブック制作・配布も行い、「遊びは学びの根っこ」であることを広く発信しています。

人を育てる」活動では、学生プレイワーカーの育成講座や、保育士・教員・放課後児童支援員向けの研修を実施し、実践と対話を通じて、こどもにとって安心できる大人とは何かを探りながら、人材を育てています。

場をつくる」活動では、福岡市内の多くの小学校で実施されている、こどもたちがランドセルを置いたまま校庭で自由に遊べる遊び場「わいわい広場」の方針策定や運営体制の構築(仕組みづくり)に貢献しています。さらに、障がいの有無に関わらず誰もが一緒に遊べるインクルーシブな遊び場や、病院や自然公園、学校施設などでの遊び場づくりに取り組んでいます。

取材に訪れた日は、一般社団法人PLAY FUKUOKAが主催する「プレーワーカー養成講座」で、代表の古賀彩子さんが講師を務めました。会場には、地域でこどもの遊び場を広げたいと願う保育士や保護者、学生らが集まり、座学と実践を通して「プレーパーク」について学びました。

午前の講義では、「遊びってなんだろう?」をテーマに、これまでの実践を交えたお話が展開されました。その中で古賀さんは、「大人がつい先回りしてやってあげるのではなく、こどもが主体的に“やってみたい”ことに挑戦できるきっかけを、大人が工夫することが大切です」と語り、参加者たちはうなずきながら熱心にメモを取っていました。

午後は森に移動し、かまどでの火起こしやそうめん流しなどの体験を通して、「安全な見守り方」や「大人が誘導しない関わり方」について実践的に学びました。古賀さんは「大人が“教える”のでも、“管理するように見張る”のでもなく、“一緒にいながら見守る”ことの大切さを体感してもらえたと思います」と振り返りました。

活動の背景

一般社団法人PLAY FUKUOKAの活動の背景には、「こどもが自由に外で遊ぶことが難しくなっている」という現代社会の課題があります。代表の古賀彩子さんは、地域から“こどもを見守る存在や場所”が消えつつあり、日常的な「人との出会い」や「偶然の体験」が失われていることに強い危機感を抱いてきました。

活動の原点は、20代の頃に働いていた京都の「プレイスクール協会」での無人島キャンプです。
トイレを掘るところから始まる自然体験のなかで、こどもたちが自分で考え、動き、自然と学び合う姿に感動し、「指示がなくても、自分たちで動く力を持っている。大人が手を出しすぎず見守ることの大切さを学びました」と古賀さんは語ります。

福岡に戻り、自らも母親となって子育てをする中で、「こどもが安心して外遊びできる場所が少ない」「こどもに関わる大人がいない」と痛感しました。そこで、「それなら自分たちで遊びの場をつくろう」と決意し、2004年に「福岡プレーパークの会」を立ち上げ、福岡県内7カ所でプレーパーク普及事業を始めました。2008年に学生プレイワーカー育成事業を開始し、そして2011年に福岡市で「乳幼児と大人のための外遊び講座」をスタートさせます。また、福岡市の小学校の校庭等を利用して遊び場をつくる「放課後等の遊び場づくり事業」(わいわい広場)」の取組に、委員として2009年から2023年まで関わってきました。

活動を続けるなかで、「遊びはこどもだけでなく、大人にとっても社会にとっても大切な営みである」という確信が強まり、2012年に団体名を「PLAY FUKUOKA」に改称し、2016年に法人化しました。【PLAY FOR GOOD.ないまと未来の社会​を。】を理念に、2022年からインクルーシブな遊び場づくりを始め、現在は、支援者の育成、制度づくり、行政・医療・教育機関・企業との連携など、地域を巻き込みながら多様なフィールドで活動の幅を広げています。

参加者の声

(参加者)
「今の保育現場では自分の価値観が通じずに悩んでいたけれど、今日の話を聞いて、自分のやりたい方向へ進んでいいのだと感じられました」

(学生プレイワーカー)
 「こどもに何かを教えるのではなく、ただ“いる”ことで十分だと気づきました」

(地域ボランティア)
「正解を与えるのではなく、こどもが自分で考える時間を待つ。そんな関わり方が新鮮でした」

(古賀さん)
「飯塚市で乳幼児の親子向けの講座を実施していた際に参加していた赤ちゃんが、20歳になって市の職員として再会しました。関わったこどもが成長して地域を支える側(市の職員)になっているのが嬉しいです」

これからのこと

今後は、異分野の専門家と連携しながら、支援者の支援や育成をさらに進め、誰もが安心して関われる遊びの場を地域に根づかせていくことを目指しています。こどもたちが自然に「やってみたい」と動き出せる環境づくりを、これからも丁寧に広げていきます。

「こどもまんなか社会」に向けて

古賀さんは、「特別なイベントよりも、何気ない日常に“遊び”があることが大切です」と語ります。
こどもが「やってみたい」と思ったときに自由に挑戦できる環境と、それをそっと見守る大人の存在が、こどもの育ちを支える土壌だと考えています。

また、「こどもを支える大人自身が孤立しないように、支援者同士がつながり、悩みを共有できる場が必要です。こどもを真ん中に置くと、大人同士がつながり直す。それが“こどもまんなか社会”だと思います」と古賀さんは語り、支援者を支援する仕組みづくりにも取り組んでいます。

“危ないから禁止する”のではなく、“どうすれば安全にできるか”を大人が共に考える姿勢が、こどもの自由と安心を両立させる——その信念を胸に、PLAY FUKUOKAはこれからも地域に“育ちの場”を広げ続けていきます。

PLAY FUKUOKA公式ホームページ

(取材日:2025年6月29日)

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