具体的な活動内容
13年前に福岡市の城南区に美容室「teatro」を開業後、最初は一般美容室内にキッズスペースを設置していました。しかし、こどもの自然な動きや声に配慮が必要なことから、2年後に隣接スペースを活用し、子連れ専門の美容室「limite」をオープンしました。
工夫されているのは店舗設計です。通常の美容室では難しい、親子の直接的な視線の確保を行い、施術席に座る親が鏡の横から直接こどもの様子を確認でき、こどもも親の顔がしっかりと見える配置を実現しています。また、こどもが自由に動ける十分な広さを確保することで、保護者同士が自然に声を掛け合える、温かい雰囲気の空間になっています。
このほかにも、こども専門の美容室や、キッズスペース付き美容室など、地域ニーズに応じて特色を持たせた店舗を複数展開しています。また、初回来店時のこども1人分のカットを無料にするなど、気軽に試せる工夫も行っています。
鏡の横にある小窓からこどもの様子がわかる安心感にこだわった室内空間
活動の背景
美容室にこどもを連れて行ける環境の少なさと、親の目が届かない場所にこどもを預けることへの不安を感じる人が多いという現状から、親子で安心して過ごせる場所づくりを目指しています。「自分のことに付き合わせてしまい気が引ける、そんな感覚を持っている親御さんに来てほしい。自分の目でこどもをしっかり見守りながら、自分もきれいになりたい、そんな方に来てもらいたい」という思いで美容室をスタートしています。
最初は一般美容室内のキッズスペースからはじめましたが、「こどもって動き回るし、騒いだり泣いたりする、それを受け入れられるお客さまばかりではなくて、ゆっくりしたい人もいます。その中で、『やっぱりここは分けた方がいいな』と感じ、子連れ専門の美容室を開設しました」と代表の藤野さんは当時を振り返ります。また、女性スタッフの育休取得や復帰支援など、「女性が働き続けられる環境を整えることが大事」という考えのもと、子育てをしながら美容師として活躍できる環境も整えることで、スタッフ自身の子育ての経験を活かしながら、来店する親子に寄り添ったサービスを提供しています。
参加者の声
藤野さんは、初めて来店するお客様からは「こんな美容室があるなんて知らなかった!」「ありがたい!」という声が多く聞かれていると話します。また、子育てが終わった方からは「自分が子育て中のときにこういうお店があればよかった」という感想も寄せられています。
「こどもまんなか社会」に向けて
「親のストレスを少しでも減らせる環境をつくることが大事だと思います。親がこどもを連れて行ける場所が増えれば、もっと子育てしやすい世の中になるんじゃないかなと。最近はどこでも『こどもが騒ぐ』ことに対して厳しい目があるけれど、そこをもう少し寛容にできたらいいですね。こどもって泣くのが仕事だし、大人がそれを許容できる社会になればいいな」と藤野さんは語ってくれました。
teatro&limiteホームページ
https://teatro-f.com/
(取材日:2025年2月19日)
具体的な活動内容
ひまわり観光の両立支援の特長は、「休みたい時に気兼ねなく休める」という企業文化を基盤とした、きめ細かなサポート体制にあります。社員との日常的なコミュニケーションを大切にし、一人ひとりの状況に寄り添う姿勢が両立支援の根底にあります。
たとえば、育児休業を取得する際は、中村社長自らが制度を丁寧に説明し、休業中も同僚との情報交換を促進することで、スムーズな職場復帰をサポートしています。実際に、育休取得者が赤ちゃんを連れて職場に顔を出すなど、自然な形での職場復帰が実現しています。加えて、子育て期の社員には、短時間勤務やパート勤務への転換も可能とし、状況に応じた働き方を支援しています。
また、中学校入学前のこどもを育てる従業員には、看護休暇制度(※)を設けています。あわせて、学校行事やこどもの部活動といった子育てに関わる場面でも、安心して休暇を取得できるよう環境づくりにも力を入れています。
ひまわり観光では、「人は宝」という思いを土台に、家族との時間を大切にできる職場環境の実現を着実に進めています。
※ひまわり観光では、こどもの病気やけがの際に取得できる看護休暇制度を中学校入学前のこどもを育てる従業員を対象に設けています。
活動の背景
「すごく優秀な社員から突然『辞めたい』と言われたんです。理由を聞くと、子育てと仕事の両立が難しいと。なんとか働き続けてもらいたいと思い、制度を整えることにしました」と中村社長は振り返ります。
中村社長自身、以前勤めていた職場で、ハードワークな環境を経験しており、そのような経験を通じて感じたことについて、「その子の成長は、その瞬間にしかないものがあります。その大切な瞬間に関われるよう、極力努力したい」と語ります。
中村社長は二代目社長として、新しい時代に即した働き方を模索する中で、「会社は家族の幸せの土台であるべき」という考えに至りました。そして、育休取得のサポートはもちろん、復帰後も無理なく働ける環境整備など、地域に根差した企業として、この考えを形にしていきたいと考えています。
社員の声
(女性社員)
「育休制度について社長から直接説明を受け、安心して取得を決めることができました。休業中も同僚が連絡をくれて、職場とのつながりを感じられました。復帰後も赤ちゃんを連れて職場に顔を出せる雰囲気が、とても心強かったです」
(育休取得者)
「職場の仲間が連絡をくれたおかげで、会社とつながっている実感が持てました」
(男性社員)
「こどもの部活動の試合で看護休暇を取得しました。以前は言い出しにくい雰囲気でしたが、今は上司や同僚の理解もあり、子育てに関する休暇を取得しやすくなりました」
これからのこと
今後の展望について中村社長は、「休みたい時に気兼ねなく休める職場文化を築きたい」と語ります。特に看護休暇の活用を促進し、性別を問わず子育てと仕事を両立できる環境づくりを進め、地域に根差した企業として、従業員一人ひとりの家庭生活の充実を支援していくとのことです。
ひまわり観光ホームページ
https://himawari-bus.com/
(取材日:2025年1月8日)
具体的な活動内容
「私たちがやっているのは、ただのベビーシッターではないんです」とドゥーラシッターふくおかを立ち上げた阿部さんは話します。産前産後はもちろん、働くお母さんの支援・小学生のサポートまで、子育て支援と家事支援を組み合わせた総合的な支援を提供しており、例えば料理を作りながら母親の悩みに耳を傾けるなど、様々な支援を同時に行います。
「結局、子育てと家事って切り離せないものなんです。ベビーシッターだけで『はい、赤ちゃん見ました、じゃあさようなら』では、お母さんの負担は減らないですよね」。そうした思いから、家事支援も含めた包括的なアプローチを取り入れています。
近年では、遠方に住むご両親からのプレゼントとして支援を依頼されるケースも増えているといいます。
特に今力を入れているのがドゥーラシッターの養成です。全国から受講生を集めて養成講座を開催し、現場での実践を教える「同行サポート」も取り入れ、支援者の育成に取り組んでいます。
活動の背景
「孤独なママに手を差し伸べたい」という思いで活動を始めた阿部さんの原点には、自身の経験がありました。28歳で夫を亡くし、3人のこどもを抱えながらの仕事と子育ての中、「余裕がなくて、気づいたらこどもに厳しく当たってしまっていた」という経験から、子育て支援の道を選びました。
「今の若いお母さんたちは、悩みを相談する場所が限られているんです。近所付き合いも少なくなっているし、実家に帰っても世代間のギャップに悩んでいる人が多い」と阿部さんは指摘します。
そうした中で阿部さんは、まずファミリーサポートに登録することから活動を始め、2020年、一般社団法人産後ドゥーラが発行する産後ドゥーラの資格を取得するため東京で学び、福岡で活動したのち独立し、個人で事業を立ち上げました。しかし、「一人では何もできない、より多くの支援者が必要だ」と感じ、養成講座を立ち上げるとともに、ドゥーラシッターの実践力を養うための「同行サポート」も始めました。
こうした取り組みの根底には、「お母さんが笑顔じゃないと、こどもも笑顔になれない」という信念があります。阿部さんは、母親に寄り添い、共に成長できる支援者を増やしていくことを目指しています。
参加者の声
(利用者)
「ただベビーシッターをするだけでなく、家事も一緒にやってくれて、さらに悩みまで聞いてもらえる。気持ちが本当に楽になりました」
(スタッフ)
「お母さんが笑顔になることで、こどもも自然と笑顔になっていく。その変化を見られることが何よりも嬉しいです」
これからのこと
「『一人では何もできない』という気づきから始まった支援の輪を、さらに広げていきたい」と阿部さんは話します。ドゥーラシッターの養成講座と実践的な同行サポートを通じて、母親に寄り添える支援者を育てていくことで、より多くの家庭に笑顔を届けていきたいと考えています。
「こどもまんなか社会」に向けて
「こどものためにできることをすることと同じように、お母さんを支えることが大事なんです。母親が安心して子育てできる環境をつくることが、結果としてこどもたちの幸せにつながっていく。そんな思いで、これからも活動を続けていきたい」と話してくれました。
ドゥーラシッターふくおかホームページ
https://doulasitter.com/
https://www.instagram.com/doulasitter.fukuoka/
(取材日:2025年2月14日)
具体的な活動内容
毎月第三土曜日の16時から開催される「キッチン小春ちゃん」では、偶数月のフードパントリーと奇数月の会食イベントを展開しています。夏休みなどの長期休暇中には、地域食堂も開催しています。さらに、学びを取り入れた特別企画も実施しており、香春町青少年育成町民会議と共催した「スーパー巻き寿司大会」では、こどもたちと地域の人々が一体となって長い巻き寿司を作り上げ、会場が大いに盛り上がったそうです。
取材当日は、「親子で楽しむマナー講座」と題し、創立メンバーの竹原裕美さんを講師に迎えて特別企画が開催されました。15時30分頃、会場の香春町地域福祉センター香泉荘には、調理スタッフ10名を含む約30名のボランティアが集結し、着々と準備を進めていきました。17時近くになると、親子連れや高齢者など約70名の参加者が来場しました。
「親子で楽しむマナー講座」では、カレーライス、豚の角煮、唐揚げ、デザートのケーキを味わいながら、食事の大切さと作法を学びました。竹原講師の「今日は特別な日。みんなで楽しく食事のマナーを学びましょう」という言葉に、こどもたちは目を輝かせて聞き入っていました。会場のあちこちでは、「皿を汚さないように食べるのは難しいね」「ケーキの包み紙、上手にはがせたよ」といった温かな親子の会話が弾みます。小さなこどもたちから大人まで、真剣な表情で挑戦する姿が微笑ましく、印象的でした。参加者は、帰り際、用意されたおみやげを笑顔で受け取り、「また来たい」という声を残して会場を後にしました。
こども食堂の運営は、こどもは無料、大人は任意の寄付制の参加費と、行政からの補助金、企業からの寄付で賄われ、地域に根差した温かな取り組みとして、着実に発展を続けています。
活動の背景
社会福祉協議会に寄せられる子育ての相談の深刻さに心を痛めた中山敏幸さんと元市役所職員の丸田宏幸さんは、「地域全体で子育てを支えたい」という強い思いから、7年前、教育関係者やスクールソーシャルワーカーなど、志を同じくする約10名と共に「キッチン小春ちゃん」を立ち上げました。
世界各国を飛び回った商社マン時代の経験から、地域のつながりの大切さを痛感していた中山代表は、「人口1万人を切る香春町だからこそ、地域の絆が何より大切です。生活環境が異なっても、ここに来るこどもたち全員が楽しく過ごせる場所にしたい」と熱い思いを語ります。
こども食堂として始まったこの取り組みは、今ではこどもから高齢者まで、誰もが気軽に立ち寄れる温かな地域の居場所として、着実に根付いています。
参加者の声
(参加したこども)
「楽しかった!お腹いっぱいになった」
「おみやげがうれしい!」
(保護者)
「友達に誘われて初めて参加しました。こんな豪華な食事でびっくりしました!マナーのお話がためになりました」
「保育園からチラシをもらって、来られる時は結構来ていますね。最初はパントリーでした。こどもも楽しみにしていますし、香泉荘で開催されているから参加しやすいです」
(調理ボランティア)
「月に1~2回参加していますが、楽しいですよ!」
(中山代表)
「地域の方から“なにか手伝いたい。ボランティアをしたいけど、チャンスがないからできない。だから、こういうチャンスがあれば手伝えるから嬉しい”という声をいただきます」
これからのこと
こども食堂としての活動に加え、高齢者も含めた「地域食堂」としての展開を始めています。中山代表は、「こどもだけじゃなくて、大人も集まる場所がなにかできないかな」という地域の声に応え、すでに地域食堂を3回開催。これからは、こどもも大人も気軽に集まれる第3の居場所づくりを目指し、防災をテーマにした企画なども検討しながら、世代を超えた交流の場として、さらなる発展を計画しています。
(取材日:2025年1月15日)
具体的な活動内容
少子化が進む日本で、特に地方部では出産時の移動手段確保が課題となっています。飯塚市はこの問題に向き合い、「陣痛タクシー事業」を立ち上げました。
「陣痛タクシー事業」は住民に事前に緊急連絡先やかかりつけ医の情報を登録してもらうことから始まります。陣痛タクシーには飯塚市から無償で提供された防水シートや給水マット、消臭スプレーを完備し、万一の事態にも対応できる体制を整えています。ドライバーは妊婦体験を含む専門研修を受講し、妊婦さんの気持ちに寄り添ったきめ細かなサポートを提供できるように実践知識も得ています。
また、新生堂薬局からは陣痛時の妊婦に対する物品の収納バッグも飯塚市へ寄贈されています。協力体制の構築や登録後の連絡体制に苦心しながらも、行政とタクシー会社は連携を強化し、夜間対応も徐々に拡充するなど、着実に前進を続けています。
体験者の声
(ドライバー)
「妊婦の大切な瞬間に寄り添えることにやりがいを感じます」
(利用者)
「事前登録のおかげで安心して利用できました」
(行政担当者)
「共働き世帯や核家族が増えるなか、妊婦さんからの問い合わせも多く安心して出産・子育てができるまちを目指して子育て支援の充実を図っていきます」
これからのこと
「陣痛タクシー事業」は、地域社会における妊婦支援のモデルケースとして注目されています。飯塚市は協力事業者の拡大を目指し、より利用しやすい環境づくりを計画しています。グリーンベルトタクシーの野上社長は、「安心して出産できる社会を目指し、地域の活性化にもつなげたい」と語り、地域全体で妊婦をサポートする体制の構築に意欲を見せています。
飯塚市ホームページ 陣痛タクシー事業
https://www.city.iizuka.lg.jp/boshihoken/jintsutaxi.html
(取材日:2024年10月11日)
具体的な活動
図書カード贈呈事業
飯塚信用金庫は、創立70周年から始まった図書カード贈呈事業を32年にわたり継続し、地域の読書環境の充実に貢献しています。この取り組みでは、飯塚市、嘉麻市、宮若市、桂川町のすべての公立学校と公立図書館に、累計1億円を超える図書カードを寄贈しています。生徒数に応じた額を各学校に配分し、図書館で活用できる仕組みを整えています。一部の図書館では「飯塚信用金庫蔵書紹介コーナー」が設置されるなど、こどもたちの読書環境の向上に寄与しています。この活動は『事業が続く限り継続したい』という信念のもと行われています。
飯塚信用金庫蔵書紹介コーナー
子育てに優しいローカウンター
飯塚信用金庫の各支店では、妊婦や子育て中の親子が安心して利用できる環境を整備するため、窓口にローカウンターを設置しています。立ったままでなく、座って手続きを進められる配慮がなされており、子育て層に寄り添ったサービスとなっています。
小・中学生のキャリア教育支援
飯塚信用金庫は、飯塚市と地域の学校、そして地元の企業と連携した職場体験型キャリア教育にも参加。小学5年生を対象とする「スチューデント・シティ」と、中学1年生を対象とする「ファイナンス・パーク」の授業で、仮想の街で金融業務を体験し、経済の仕組みを学べるプログラムを提供しています。飯塚信用金庫の職員がキャリア教育に関わっているのは9月から1月にかけて計15回に及びます。
この取り組みは、こどもたちが楽しみながら社会について学ぶ貴重な機会となっています。
ローカウンター
スチューデント・シティ/飯塚信用金庫
活動の背景
活動の原点は「未来を支えるこどもたちのために地域が何をできるか」という問いから始まりました。飯塚信用金庫では、創立以来、地域社会と共に成長し、こどもたちへの教育支援や生活環境の向上に力を注いできました。特に、図書カード贈呈事業は「読書を通じてこどもたちの知識と可能性を広げてほしい」という思いが込められています。また、地域の学校と連携したキャリア教育やローカウンターの設置は、地域全体で子育てを支えたいという理念に基づくもの。これらの活動は特別なものではなく、飯塚信用金庫として日常的に続けてきた取り組みを発展させた形として継続されています。
参加者の声
キャリア教育に参加した学校からは、「生徒たちが金融業務を実際に体験することで、社会や経済について楽しく学べる機会となっている」との声が寄せられています。また、図書カード贈呈事業については、「こどもたちの学びを支える仕組みとしてありがたい」と学校や地域住民からの感謝の声が上がっています。
これからのこと
「これからも、地域のこどもたちが健やかに成長し、夢を描ける環境を整えるために、継続的に図書カード贈呈や職場体験などの活動を進めていきます。また、地域に寄り添ったサービスを充実させ、子育て世帯を支える取り組みをさらに発展させたい」と総務部の田中副部長は話します。
「こどもまんなか社会」に向けて
田中副部長は、「私たちは、こどもたちを地域の未来と考えています。これからも、地域全体でこどもたちの成長を支え、『こどもまんなか社会』の実現に向けて努力を続けます」と話してくれました。
飯塚信用金庫ホームページ
https://iishin.jp/freai/
(取材日:2024年10月7日)
具体的な取り組み内容
2024年5月、飯塚JCは、「こどもはこのまちの未来だ!宣言」キックオフイベントを開催しました。このイベントには、こども家庭庁をはじめとする多くの関係者が参加し、こども中心の社会づくりを目指した方向性が共有されました。宣言企業・団体等は約50社(2025.3現在)で、それぞれの企業・団体で宣言した内容の実現に向けて取り組みを進めています。
たとえば「ゆめタウン飯塚」では、全国のゆめタウン店舗で初となる子育て世代を支援する「ゆとりレーン」を設置しています。また、タクシー会社と飯塚市との連携による妊婦向け「陣痛タクシー」の取り組みも進行中で利用者も増えています。この他、地元のラーメン屋がこども用の箸を導入するなど、活動は地域全体に広がり、連携体制が強化されています。
活動背景
活動の背景には、「こどもたちの意見が地域の改善につながるという思いがある」と専務理事の小林さんは語ります。自身も小学生2人の母として、子育ての当事者でもあり、子育て世代への配慮や理解が不足しているなど、少子化や地域活性化への課題を感じていました。そんな中、飯塚JCでは、この宣言活動のほか、こどもたちの意見を地域に反映させるための「ビジョナリーシティこども会議」を実施することになります。
例えば、こども会議で寄せられた「バス停が古く、お年寄りが困っている」という声や、「公園でボール遊びができないので、もっと自由に遊べる場所が欲しい」など、こどもたちから寄せられた意見は大人が気付かないことばかりです。その声や提案を企業や自治体に届け、力を合わせ具体的な行動に反映しています。
参加者の声
(小林奈々専務理事)
「こどもたちの声は本当に貴重です。特に、公共施設や交通機関に対する改善要望は、地域全体で取り組むべき課題。例えば、バス会社や行政とも連携して、こうした意見を具体的に反映させる仕組みを作ろうとしています。地域全体が一体となって、こどもたちのための社会を作るという理念や、小さな行動が大きな変化を生むと実感しています」
(栗原一喜常務理事)
「青年会議所の使命は、地域活性化とリーダー育成です。このプロジェクトを通じ、多くのリーダーが育ち、地域に貢献している姿を見るのは嬉しいことです」
宣言企業からは、「少子化の時代、このような取り組みが大事。継続を目指していきたい」という声が上がっています。
(※役職は2024年時点の役職です)
これからのこと
飯塚JCではこの取り組みがモデルケースとして他地域でも展開されていくことを期待しています。今後も飯塚JCが掲げた「TRT・4・VISION(5カ年ビジョン)」の実現に向け、多様なパートナーシップを強化し、様々な活動を通じて地域社会の発展に寄与していきたいと考えています。
「こどもまんなか社会」に向けて
飯塚JCは、「こどもまんなか社会」の実現に向けて、「こどもを育てる仕組み」「地域間の連携」「こどもたちの意見を尊重する文化」を柱に、地域で連携し、こどもを安心して育てられる環境づくりを進めていく方向です。
(一社)飯塚青年会議所ホームページ
http://www.iizuka-jc.com/
(取材日:2024年9月13日/更新日:2025年3月19日)
具体的な活動内容
「こどもの台所」の最大の特徴は、こどもたちが主体となり、料理体験を通じて自立性を育てることです。約10名の地域ボランティアと一緒に簡単な家庭料理を作りながら、食材の使い方や基本的な料理スキルを学びます。
取材の日は、クラウドファンディングの寄付によって提供されたはかた地鶏と県産米を使い、地域の特産品についても知識を深めました。こどもたちは年齢に応じて、おかず班、ごはん班、味噌汁班に分かれ、チキンのパン粉焼き、ナポリタン、味噌汁といったメニューを調理していきます。味噌汁はひとりずつ自分が好きな具材を入れ個性豊かな一品に仕上げ、お米もひとりずつ洗米し炊飯ジャーで炊きました。異なる学校から集まったこどもたちは、料理をする力を身につけるだけでなく、コミュニケーションをとりながら一緒に作り上げる体験をすることで、お互いを尊重する対人スキルも育まれていきます。
「こどもたちが家で安全に料理を作れるようになることこそ、私たちの支援の最終目標です。そのため、実際の家庭を想定し、5人前程度の料理を作る練習をしています」と代表の石田さん。「こどもの台所」ならではのこだわりが、活動の中に息づいています。
活動の背景
この活動の起点は、10年前の設立時に遡ります。「地域社会に住む大人たちとの交流が少ないこどもたちのために、食育を通じた育成の場を作りたい」という代表の石田恭子さんの熱い思いから、設立から2年後に「こどもの台所」をスタートさせます。石田さんは「大人が育てるだけではなく、こどもが大人を救う社会を作りたい、こどもたちが主体的に関わり、知識を共有する場を増やしたい」と話します。こどもたちの言動や行動をひとりの人間として認め、相互に救われるスタイルを大切にしたいと考えています。
石田さんの情熱は地域の農家や企業の心を動かし、寄付を受ける仕組みを作り上げています。そして、経済的な貧困に関わらず、「見えない貧困」に目を向ける活動の必要性を訴えています。
参加者の声
(調理したこども)
「自分の手で料理を作れたことは嬉しい体験でした」
「他のこどもと一緒に作業をするのが楽しかった」
(調理ボランティア)
「毎回、私たちも楽しみにしています」
「こどもたちは、料理が出来上がったときや配膳のときもよく動いてくれるんですよ」
(地域の人)
「めちゃめちゃ美味しいです」
「家でも料理や食事の支度を進んでやってくれるようになって助かっています」
これからのこと
「こどもの台所」とは別に、月1回、振る舞いに重点を置いた「おせっかい食堂」も運営している石田さん。「私たちのこども食堂だと1食分しか提供できないので、地域全体をこども食堂化する構想を描いています」と話します。地域の食堂が運営に参加するという大規模ネットワークの実現を目指し、現在、12店舗が参加予定です。要である資金を募り、地域食堂に分配される仕組みが制度化されるように動いていくそうです。
「こどもまんなか社会」に向けて
石田さんは、こどもまんなか社会では、こどもたちの行動や言動を認めることが大切だと考えています。「大人がこどもたちを一方的に支援するのではなく、こどもたち自身が大人を助ける機会を作ることで、自己肯定感も育まれ、結果として地域全体が支え合う強いコミュニティができるのでは」と話してくれました。
子育て応援隊にじいろ
インスタグラム
https://www.instagram.com/nijiiro.childcare/
ホームページ
https://www.2jiiro-7irolabo.com/
(取材日:2024年12月15日/更新:2025年3月5日)
具体的な活動内容
毎年、10月のスポーツの日に開催される「小学生参観」は、今年15回目を迎えました。社員のこどもを対象に職場体験を行う活動です。こどもたちはお揃いのユニフォームを着用し、朝礼から1日をスタートします。親の働く職場を見学するだけでなく、6年生には卒業式を行うなど、心温まる体験や、企業活動に関連した創作活動を体験できるようにしています。
今回は、グループ会社の農園看板制作などを行ったり、みんなでお弁当を食べたりしながら、こども同士の交流も図ります。活動後は参加したこどもたちの感想や写真を掲載した「小学生新聞」を作成し、参加した家族や社内で共有し、こどもと親が一緒に過ごす良き思い出の一日を記録として残すことができています。
また、従業員の平均年齢39歳という大坪GSIは、子育て真っ最中の社員が多くいることから、経済的な子育て支援制度にも取り組んでいます。それは、15歳まで(中学生)のこども1人につき月額3,000円の支援金と決算期に12万円の特別支援金を支給するというものです。
さらに、子連れ出勤の支援として、保育園に入れない時や、急な用事で預け先がない時、会社の空きスペースをこどもが遊べるスペースとして活用するなど、『企業ができることは企業がやる』という考えのもと、子育て世代が働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでおり、グループ4社全体に広がっています。
活動の背景
大坪社長は、「実は最初は、ビジネスライクな発想からでした」と振り返ります。15年前に人材不足対策として会社主導で始めた小学生参観ですが、こどもたちの反応を通じて、その意味は大きく変わりました。今では社員で構成するプロジェクトチームができ、自主的に企画を練るまでに成長しています。
さらに大坪社長は、「休日にのんびりしている親の姿しか知らないこどもたちに、汗を流して働く姿を見せたい。こどもたちに親の仕事の真の姿を知ってほしい」と考えています。建設業は若い世代から敬遠されがちな業界。この取り組みの根底には、「都会に憧れる若者に、将来『親の会社、大坪GSIを思い出してほしい』」という思いがあります。
「子育てにやさしい会社づくりは、制度を待つのではなく、企業が率先して取り組むべき」と強調します。「ここならこどもを産み育てられる」と思える環境づくりが経営哲学と考えています。
参加者の声
(2歳から参加している女児の母親(社員))
「『今度の小学生参観、絶対行く!』と毎回心待ちにしています。社員の皆さんとも顔なじみになり、まるで大家族のよう。こどもにとって、かけがえのない経験になっています」
(参加したこども)
「コースターを作ったのが楽しかったです。看板の色塗りも楽しかったです」
「みんなで遊んだり、えびやさつまいもを見に行ったりして楽しかったです。いろいろな人と友だちになれて、うれしかったです」
これからのこと
大坪GSIでは、夏休みに地域のこどもたちを対象とした「子ども土サミット」を開催し、陶芸体験や工場見学を通じて、土と触れ合う喜びを伝えています。これまで、福岡で2回開催し、来年からは九州全域での展開を計画中です。各地の同業者と連携し、より多くのこどもたちに体験の機会を提供できるよう進めていく予定とのことです。
「こどもまんなか社会」に向けて
大坪社長は「企業の自助努力が不可欠です。こどもに希望を与え、働く親が安心して子育てできる環境づくりが重要。企業が率先して子育て支援に取り組むことで、こどもまんなか社会の実現につながるのでは」と話してくれました。
大坪GSI株式会社ホームページ
https://www.ogsic.jp/
(取材日:2025年1月23日)
具体的な活動内容
心をつなぐランドセルの架け橋
イベントでは、こどもたちが展示された中から自分だけの「運命のランドセル」を選ぶ特別な時間や、通学路体験、工作・ゲーム体験などの企画で、こどもたちの思い出づくりを支援します。さらに、学生と地元企業が心を込めて作ったオリジナル化粧箱に、こどもたち自身の手で大切にランドセルを収めて持ち帰ります。会場では同時に新たなランドセルの寄付も受け付けており、昨年は約650個もの温かい善意が集まるなど、循環型の支援の輪が広がっています。
活動の背景
「こどもの未来に希望を持たせることができないだろうか…」7年前、一人の母親から寄せられた、こどもの未来への切実な想いに、NPO法人次世代のチカラFUKUOKAの新村優理事長が深く心を動かされました。こどもたちの未来への可能性を広げ、すべてのこどもたちに平等な学びの機会を提供したいという思いから、活動は始まりました。
その後、九州産業大学造形短期大学部の森下慎也先生との出会いにより、学生のアイディアを盛り込むことで、活動は大きく広がりました。
この取り組みは単なる物の再利用ではなく、こどもたちの可能性を育む、温かな社会のつながりを創造する取り組みに発展しています。
参加者の声
(こどもたちとその家族)
「こんなに綺麗なランドセルをいただけて、本当に感謝しています。こどもが喜ぶ姿を見て、私まで嬉しくなりました」
(寄付者の声)
「大切に使ったランドセルが、新しい持ち主と出会えることが何より嬉しいです」
(プロジェクトリーダー:九州産業大学造形短期大学部 研究生 石田賀琳さん)
「参加者の方々からの『ありがとう』の言葉が、何よりの励みになりました。去年叶えられなかった北九州での活動も実現でき、感慨深いです」
(協力企業)
「地域のこどもたちの笑顔のために、私たちができることを実行する。それが企業としての誇りです」
これからのこと
現在、活動は、福岡市から飛び出し、久留米市、北九州市へと着実に広がっています。このプロジェクトは、地域の企業や団体との連携を深めながら、単なるランドセルの受け渡しを超えて、地域全体でこどもたちの未来を支える大きな取り組みへと成長しています。
「こどもまんなか社会」に向けて
「こどもたちの声に真摯に耳を傾け、一人の人間として尊重し合える社会。それが私たちの目指す『こどもまんなか社会』です。このイベントを通じて、こどもたちが安心して夢を育める環境づくりを、地域全体で進めていきたい」と森下先生は、語ってくれました。
九州産業大学造形短期大学部ホームページ
https://www.zokei.kyusan-u.ac.jp/
NPO法人次世代のチカラFUKUOKAホームページ
http://jisedainochikara.jp/
(取材日:2025年1月18日)