2026.04.16
公益財団法人 九州交響楽団
#インクルーシブ社会 #こども・子育て応援 #体験型等こどもの育ち応援
- ■活動名
- 九響 0歳からのオーケストラ
- ■団体名
- 公益財団法人 九州交響楽団
- ■エリア
- 福岡県・熊本県
九州交響楽団が開催する「0歳からのオーケストラ」は、赤ちゃんや未就学児とその家族が気兼ねなく参加できるクラシック演奏会です。演奏中の泣き声や出入りにも制限がなく、授乳スペースやおむつ交換台などの設備も整備しています。胎児期からの音楽体験や、育児期の保護者がリラックスできる機会として親しまれています。
具体的な活動内容
「0歳からのオーケストラ」活動は、九州交響楽団が主催する「九響マタニティコンサート」として、福岡では年に1回、午前と午後に開催されています。0歳児から入場でき、未就学児の入場制限を設けていないのが大きな特徴です。
『妊婦さんや小さなお子さまを育てるママ・パパに、日々の忙しさから少し離れ、心も体も満たされるひとときを届けたい』そんな想いを込めて選曲されたプログラムは、クラシックの名曲を中心に構成されています。
オーケストラならではの豊かな響きと、生演奏ならではの臨場感に包まれる特別な体験として開催しています。
会場内では、乳幼児連れの来場者を前提とした鑑賞環境と運営体制を整えられています。例えば、ベビーカーのまま着席できる専用席や、客席前方には赤ちゃんが寝転んだり、ハイハイできるフリースペースを演奏者の目の前に設置しています。また、授乳スペース、おむつ交換台、ミルクコーナーなどを会場内に特設し、育児中の保護者が安心して滞在できる環境を整備しています。
福岡公演では、福岡県助産師会の協力により助産師相談コーナーを設置し、専門家へ直接相談できる機会も設けています。
演奏中の入退場は自由とし、赤ちゃんの泣き声や、音楽に反応したこどもの行動にも対応できる運営を行っています。そのため、実際公演では、こどもたちが音楽に合わせて手をたたいたり、旋律に反応して声を出したりするなど、それぞれの感覚で音楽を受け止めている姿が見られます。
フリースペースでは、演奏者の近くまで赤ちゃんがハイハイで移動する場面もあり、会場全体が、こどもや家族の存在を前提とした穏やかな雰囲気に包まれています。
その他、九州交響楽団では、3歳以上を対象とした「オーケストラ for キッズ」や、0歳から入場でき、多様な来場者に配慮した「夏休みリラックスコンサート」も開催しています。







活動の背景
九州交響楽団事務局で広報を担当するリシェツキさんは、「クラシックの演奏会は未就学のお子様が入場できない公演がほとんどなんです」と語ります。
九州交響楽団の主催公演でも、多くの演奏会では未就学児の入場を制限しています。そのため、出産や育児をきっかけに演奏会から離れてしまうケースが多くなる現状があるといいます。
一方で、胎児は妊娠5か月頃から音を感じ取ると言われ、小さな頃から生の音楽に触れる機会の重要性も感じ、「赤ちゃんや妊婦さんも一緒に参加できる演奏会を実現できないか、という思いがありました」と話しています。
この公演を始めたのはコロナ禍の時期でした。リシェツキさんは、当時は三密を避ける状況の中で、マタニティコンサートの開催は簡単な判断ではなかったと振り返ります。それでも、「安心して来場していただける環境を整えることができれば成立するのではないか」と考えたそうです。
会場内の感染予防対策を徹底することに加え、演奏中の出入りを自由とし、ベビーカー席やおむつ替えスペース、授乳スペースをロビーに特設するなど、運営面での工夫を重ねました。また、来場者に対して事前に公演の趣旨や鑑賞環境を丁寧に伝えることも重視したといいます。
さらに、コロナ禍で助産師による対面相談の機会が減少していたことから、福岡県助産師会の協力を得て相談コーナーを設置し、「音楽を楽しむ場であると同時に、妊娠中や育児中の不安を少しでも軽くできる場所になればという思いもありました」と話しています。
参加者の声
(参加した保護者)
「演奏が始まるなり、目頭が熱くなり自分で驚きました。子育てに追われる中で、ゆっくり演奏会に行くなんてできていなかったのだと、ハッとしました。今回は友人に誘ってもらい、3歳のこどもと来場しましたが、こどもが落ち着かなくても気兼ねしなくてよく、演奏会の曲の長さもこどもが飽きない長さで、結果として、大人が安心して演奏を聞くことができました」
(「こどもを連れて行けるコンサートがあると知りチケットを買い、今日をとても楽しみにしていました。こどもが泣き出したらどうしよう、ミルクの時間とかぶったらどうしようと不安がある中、会場につくと沢山のスタッフさんや、同じ子連れのファミリーがいてホッとしました。ミルクのお湯があったり、お尻拭きがあったり、フォトスペースがあったり、初めてのコンサートでも安心して楽しむことができました」
「今回、3度目の参加です。お腹の中でこちらのオーケストラを聴いた息子が、もう2歳半になりました。息子は入場してすぐヴァイオリンが気になったようで、お姉さんが近くで演奏してくださったことがよほど嬉しかったのか、帰宅後も楽しそうに演奏の真似をしていました。母である私も、ラストの花のワルツを聴いて幸せな気持ちで胸がいっぱいになり、涙が溢れました。生のオーケストラをこんなにも間近で感じることができ、感謝しています。こどもたちが成長してママやパパになるとき、おばあちゃんとして一緒に聴きに行けたらいいなという夢ができました。本当に楽しく幸せな時間をありがとうございました」
(妊娠中の参加者)
「目の前で聴く演奏は、胸に響き、感動しました。名曲の数々に心温まり、心からコンサートを楽しむことができました。これから生まれてくるこどもと親子で素敵な人生を歩んでいきます。ありがとうございました」
(楽団員)
「普段の演奏会とは違う雰囲気ですが、音楽をより身近に感じてもらえる機会になっています」
これからのこと
この取り組みは、赤ちゃんや妊産婦、育児中の家庭が安心して参加できる演奏会として定着しており、毎回満席となるなど高い関心が寄せられています。参加者からは、開催回数の拡充を望む声も寄せられています。
一方でオーケストラ公演は、チケット収入のみで経費を賄うことが難しい構造にあり、本公演も例外ではありません。まずは、年1回の開催を着実に継続し、持続可能な形で発展させていくことが重要だと考えています。
こうした取り組みを継続していくことは、こどもたちが文化や芸術に触れる機会を地域の中で確保していくことにもつながります。
今後は、地域との連携を一層深めながら、より多くの方にこの機会を届けられるよう、開催機会の拡充についても検討したいと話しています。
「こどもまんなか社会」に向けて
リシェツキさんは、「音楽は、『感じること』そのものを大切にできる世界です」と語ります。
歌うことやリズムに触れる体験は、こどもたちの感性や他者への共感、物事を豊かに受け止める力を育む土台となります。だからこそ、小さな頃から音楽に触れ、自由に感じることのできる環境を社会全体で守り、育てていくことが大切だと考えています。
こどもたちの感性や好奇心が大切にされ、文化や芸術に自然に触れながら育つことができる「こどもまんなか社会」にするために、胎児期から音楽に触れることができる機会や、成長段階に応じて生の音楽に出会える機会を地域の中に広げていくことに取り組んでいきます。
公益財団法人 九州交響楽団 公式ホームページ
(取材日:2026年2月16日)